アンティーク着物を愛する吉田羊さんが、四季折々に着物のおしゃれを楽しむ様子を撮り尽くしたフォトエッセイ『ヒツジヒツジ』(宝島社)を発売。その至極の着こなしの数々から、「着物で遊ぶ」をテーマに切り取ったアソビゴコロあふれる着物語りを12か月に渡って綴っていきます。第1回で遊ぶのは「色合わせ」。
こんにちは、吉田羊です。
みなさんにとって着物って難しい? 着物って大変?
いえいえ、ちょっと待って。
実は着物ほど自由でアソビゴコロにあふれたスタイルってないんです。
色や柄を合わせたり、アクセサリーや小物を合わせたり、季節感を取り入れたり。
コーディネートの幅も無限大。
そんな楽しみを、ぜひみなさんにも。
着物スタイルだからこその「アソビ」を味わっていただけたらうれしいです。
アンティーク着物こそ色遊びが楽しいのです
「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」と呼ばれる色の配色を知っていますか?
江戸時代に庶民の間で生まれた、茶系、グレー(鼠色)系のカラーバリエーションのことです。
この時代、庶民には贅沢禁止法が敷かれ、身に着ける素材は「麻」か「綿」、色も「茶色」「鼠色」「藍色」に限られました。そんな制限の中でも、人とは違う色を着たいと思うのがおしゃれ心というもの。茶色でも赤っぽいもの、黄色っぽいもの、青っぽいものなど、微妙な色調の違いを職人が作り出したことで、何種類もの「茶」と「鼠」色ができたというわけ。写真はその一部ですが、一口に「茶」「鼠」といっても、実にさまざま!


四季が豊かな風土を持つ日本人は、世界の中でも色彩感覚に優れているといわれます。緑色一つとっても、白緑、草色、裏葉色、萌黄、青竹、松葉色……。微妙な色調を見分け、表現する能力がすぐれているってこと。私にもその血が流れていると思ったら、色で遊ばないなんてもったいない! 特に私が好きなアンティーク着物は、色や柄が豊富なので、ここぞとばかりに色合わせを楽しみます。さまざまな色や柄を見ているうちに、「この色はちょっと青みがかかっているな」などと色の深部がわかってきて、それがまた楽しいのです。
ベージュ系の小物と合わせたピンクのお着物コーデ


ピンクとひと口にいっても、青み、赤み、黄みなどさまざま。この着物をじーっと見ていたら、私はその奥に青みを感じたんですね。この、奥の色が見えてくる感覚が実に快感!(笑) 帯や小物に水色を選んだのはそういうわけなのです。
さらには着物の柄の色がベージュだったので、ベージュ系の手袋と帽子を合わせています。こんなふうにひとつひとつの色をよく見ていくと、カラーコーディネートの幅が広がるんです。ぱっと見は違って見える色だけど、なぜかまとまって見える。そんなコーディネートを作れるのが着物の面白さです。
カラフルな着物だから、そこから小物の色をセレクト


こちらは、全体的にクリームがかった青や緑、朱を感じる着物。その色から手袋やタイツ、アクセサリーを水色に、インナーに黄緑色を選びました。野山の風景が描かれた着物なので、そこを飛ぶ蝶をイメージして、帯は蝶の柄を。あえてビビッドな色使いのものを選んで、全体を引き締めて。
「あこがれの人に会いにいく女子」をイメージして


こちらはアンティークの着物。
「この日は文化人も歩いただろう、下町の路地を歩くこともあって、「あこがれの作家先生に会いに行く文化系女子」をイメージしました。淡くラブリーな色合わせで「目に留まるかしら」なんてことを想像しながら坂をてくてく。」
全体をアンティークが持つ色にそろえたかったので、帯も半衿も手袋もくすみがかった色調のものを選びました。足袋は少し黄みを帯びたサーモンピンクに。現代ものであっても色で時代を合わせるとしっくり。それもアンティーク着物の楽しみです。
こんなふうに色合わせを楽しんでいると、観察力もついてくる気がします。鮮やかかくすんでいるか、青みか赤みか黄みか……。よーくよーく観察して発見したら、そこから色を組み合わせていく。鏡の中で、あれこれ合わせながら、ピタッと調和した瞬間は本当に気持ちがいいですよ!
吉田羊さんのフォトエッセイ『ヒツジヒツジ』好評発売中です!
スタイリングは、すべて吉田羊本人。
春夏秋冬それぞれの季節に合わせた着こなしはもちろん、洋服とのリンクコーデやあの人物へのなりきりコーデ、そして彼女が伝えたい想いなど、盛りだくさんな内容。
吉田羊を解剖する上で欠かせない、着物のおしゃれのすべてが詰まった一冊!
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キモノ語り:Yoh Yoshida edit & text:Masaki Takeda(mineO-sha)
photograph:Emiko Tennichi、Yuki Kosuge & Koji Fujii
※人物カットはフォトエッセイ『ヒツジヒツジ』(宝島社)から
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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