CULTURE
:「もしかしたらこのまま死ぬかも」人気マンガ家・雁 須磨子さんが「女子マンガ」を通して伝えたいこととは?
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:キラキラとした恋愛話だけではない「女子マンガ」は人生を救ってくれる。そんな「女子マンガ」を通して、現在を描く注目のマンガ家・雁 須磨子さんにインタビューしました。
お話を伺ったのは……雁 須磨子先生
福岡県出身。1994年に『SWAYN’IN THE AIR』(「蘭丸」/太田出版)にてデビュー。BLから青年誌、女性誌まで幅広く活躍。2006年に『ファミリーレストラン』が映像化。『幾百星霜』(太田出版)、『どいつもこいつも』(白泉社)など著書多数。
40代、心身ともに変化はあるけれど
いいこともたくさんあると伝えたい
―40代で誰もがぶつかる壁を描いた『あした死ぬには、』は、リアルな更年期症状の描写から始まります。これは雁さん自身の体験から生まれた作品なのだとか
「寝ていたときに冒頭に描いたような不整脈が出て、〝もしかしたらこのまま死ぬかも〞と思ったのがきっかけです。
それぞれ違う人生を送る3人の同級生が登場しますが、母親の介護をする鳴神さんは、早いうちから考えていました。
主人公が働く映画宣伝会社については、途中で独立できる仕事がいいと考えて、何人かに取材して、細やかに教えてもらえたことが大きかったです」
―多くの女性が経験したことのある、モヤモヤするエピソードもふんだんに盛り込まれています。
「一番新しいものを追いながら、古い体制のなかにいる話が描けたらいいなと思いました。
40代の女性を描こうとすると、どうしてもフェミニズムについての考えの変化は入れざるをえないと 思います。
タイトルは『死ぬ』という言葉を入れたくて、句読点の先を想像したときに、ポジティブな言葉になるようにしました」

雁さんも体験したという更年期症状による不整脈。読んでいると、40代で迎えるさまざまな不調の予備知識にも。
人間のダメなところを読んでホッとしてもらいたい
―雁さんがマンガを描く上で大切にしていることは、詳細をきちんと描くことだといいます。
「マンガを読むときに雰囲気で流してしまわないよう、通帳が出てきたらちゃんと額面を描いたり、自分が読みたいと思うところをちゃんと描くように意識しています。もちろんすべてを網羅するのは難しいですが、聞いて描けるところはできるだけ聞いて、詳しい人が読んだときに表現が変ではないか気をつけています。
でも物語なので、嘘や誇張もあっていいと思うんです。マンガとして自分がおもしろいと思えるかどうかが大切。私はマンガのなかに自分のダメなところが出ることが多いので、ダメなところ、いやらしいところをを見て、〝このくらい思ってもいいんじゃないの?〞とホッとしてもらえたらいいですね」
―そんな雁さんが思う、女子マンガの魅力とは?
「方向性もさまざまですが、瞬間に深くフォーカスして、感情をピン留めするのが秀逸。瞬間の切り取り方に多種多様な『私も』がいくつもあって、共感できるのが女性の豊かさだと感じます。
私のマンガは年齢を問わず、まずは女性の方に読んでもらいたい。男性の方にも知ってもらいたいですし、若い女性にも読んでもらって、40代、いろいろなことがあるけど、いいことも楽しいこともあるんだよと伝えたいです」

地元の同級生の塔子と久しぶりに会うシーン。「わかる」が詰まっています。
実体験を基に描かれる40代女性のリアル
『あした死ぬには、』¥1,320(太田出版)

健康、仕事、友情、恋愛、老親問題。40代で直面する心身の変化や、日々の悩みを細やかに描く。
2020年に第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門賞受賞。全4巻。
©雁須磨子/太田出版
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text:Mayumi Akagi
リンネル2025年6月号より
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