CULTURE

中村倫也さんがたくらむ、憧れの人への恩返しとは?「転ばぬ先の杖を、そっと置いていってくれる人」 中村倫也さんがたくらむ、憧れの人への恩返しとは?「転ばぬ先の杖を、そっと置いていってくれる人」

映像だけでなく舞台でも着実にキャリアを重ねる俳優・中村倫也さん。
9月5日から上演される自身初の二人芝居『ライフ・イン・ザ・シアター』では、
公私ともに縁の深い堤真一さんとのタッグが叶いました。
20代の頃から陰に日向に支えてもらった先輩と、さて、どう向き合うか? 稽古開始直前に聞きました。

世代の異なる舞台袖の二人の俳優。
相手役を務めるのは「すごく光栄なこと」

「オファーを受けたのは、別の舞台の稽古場にいるときか公演中だったと思います。タイトルを聞いて、翻訳された台本をペラペラとめくって……『やります』と」

 俳優同士の一対一のやりとりからドラマを生み出す二人芝居。中村倫也さんが、このハードルの高いオファーに即答したのは、相手が堤真一さんだったことも大きな理由でした。

舞台袖で出番を待つ中年と若手の二人の俳優。中年俳優の披露する演技論を傾聴する従順な若手、といった雰囲気だった二人の関係が、場面を重ねるごとに微妙に変化し始める『ライフ・イン・ザ・シアター』がアメリカの劇作家デヴィッド・マメットによっては発表されたのは1977年のこと。日本では1997年に初演され、その際に若手俳優ジョンを演じた堤真一さんが、今回は中年のロバートを演じ、パートナーのジョン役として中村さんに白羽の矢が立ったのです。

「舞台で堤さんを見て感じるのは、役者としてのスケールの大きさ。舞台の面(つら。前方のこと)、客席正面に立って少し上を向いてセリフを言うだけで、舞台上に空が広がるのが見えるような……。そんな堤さんが年齢を重ねてまたやりたいと思った作品で相手役としてお声がかかったのは、すごく光栄なことだし、僕にも共演やプライベートで堤さんと重ねてきた歴史や物語がある。何も考えず、二つ返事でお受けしました」

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お前は、大丈夫。
”親父″のくれた言葉を頼りに

舞台で初共演したのは、中村さんが22歳の時(2009年上演『バンデラスと憂鬱な珈琲』)。当時、俳優としての先行きに迷いや不安を感じていた中村さんにとって、舞台の後の食事の場で堤さんからかけられた「お前は、焦らなくて大丈夫だから」という言葉が大きな支えになったといいます。

「その後も、仕事をご一緒したり、舞台を見に行ったり見に来てくれたり。直接的ではないけれど、何となく気にかけてくれているんだなというのが常に伝わっていた。堤さんは僕にとって、やや放任ぎみの”親父”のような存在なんです」

そんな二人の関係を表す、あるエピソードがあります。
「僕がずっと舞台上で怒鳴り散らしている作品に出演していた時、見に来てくれた堤さんと公演の後に焼鳥屋で食事をしたんです。ひととおり食べて、そろそろ帰ろうかというタイミングになったんですが、なぜか堤さんが僕用に焼おにぎりを追加注文している。もう十分食べましたよと言ったら、『お前は今、食うことが仕事だ!』って。体力つけとけよ、ってことだったんでしょうね。そんなふうにそっと転ばぬ先の杖を置いていってくれる人だと……僕が勝手にそう受け取っているだけかもしれませんが」

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肩の力を抜いて、
たゆたうように二人でいたい

大丈夫。その言葉に支えられながら、着実に歩みを進めた中村さん。初共演から、気がつけば16年の歳月が流れていました。

「自分の想像通りではなく、堤さんと二人でやるからこそ生まれる何かが出せたらいいですよね。はじめての時とは違って、今ならもう少し肩の力を抜いて一緒にグルーヴを作り出すようなこともできるだろうし。芝居は片方に力が入っていると相乗効果は生まれづらいので、今回は二人でゆったりと……そう、たゆたう感じみたいなものを楽しみたいなと思っています」

 そしてもうひとつ、やってみたいことがあると、中村さんは打ち明けます。

「堤さんにはさんざんおごっていただいたので、今回は僕がどこかでおいしいものをおごりたいなと。『先輩、ここは僕が!』って言ったら、『おっ』と笑ってくれそうな気がするんです」

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公演情報

中村倫也さん出演舞台
『ライフ・イン・ザ・シアター』公演情報
時に大言壮語を吐き、時に愚痴をこぼし、それに相槌を打ちながらもよそ見をする。人生の王道からはいくぶん脇に逸れた男二人が繰り広げる悲喜こもごもの人生模様を、最強のタッグで。「熱いタイトルですが、たぶん、そんな大層な話じゃない(笑)。そう思って、気楽に見ていただければ」と中村さん。

作:デヴィッド・マメット
翻訳:小田島恒志
演出:水田伸生
出演:堤 真一 中村倫也
東京公演/2025年9月5日(金)〜23日(火・祝) IMM THEATER
京都公演/2025年9月27日(土)・28日(日) 京都芸術劇場 春秋座
愛知公演/2025年10月4日(土)〜6日(月) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
大阪公演/2025年10月9日(木)〜14日(火) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
愛媛公演/2025年10月17日(金)・18日(土) 愛媛県県民文化会館 サブホール
宮城公演/2025年10月25日(土)・26日(日) 多賀城市文化センター 大ホール
公式サイト

PROFILE

なかむら・ともや/1986年生まれ。2005年に俳優デビューし、映像、舞台と幅広く出演。2014年の舞台初主演作『ヒストリーボーイズ』で讀賣演劇大賞優秀男優賞を受賞。最近の出演作に、舞台「劇団⭐新感線44周年興行・夏秋公演 いのうえ歌舞伎『バサラオ』」、映画『あの人が消えた』、テレビドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』などがある。声の出演をする映画「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」が12月5日に公開予定。

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photograph:Chihaya Kaminokawa styling:Yusuke Matsumoto(anahoc)  hair & make-up:Ryo Matsuda(Y’s C) text:Michiko Otani

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