聴く人にとってちょうどよい「柿山」のような存在になりたい 【OVER THE SUN 公式互助会本より vol.3】 聴く人にとってちょうどよい「柿山」のような存在になりたい 【OVER THE SUN 公式互助会本より vol.3】
18万人以上が聴いているという、大人気ポッドキャスト番組「OVER THE SUN(オーバー・ザ・サン)」。性別、年齢を問わず、幅広いリスナーから支持されているこの番組から生まれたのが、公式のファンブック『OVER THE SUN 公式互助会本』(左右社)。その一部とおまけトークを2回にわたってご紹介してきました。3回目となる最終回は、ジェーン・スーさんと堀井美香さんの特別インタビューをお送りします。
■ポッドキャストのリスナーに楽しんでもらうための本
━ちょうど1年前にリンネル本誌でお話を伺いましたが、その後リンネルのイベントのほか、トークショーなどのリアルイベントが開催されたり、互助会員(※1)のコミュニティも広がっているようですね。
美香 みなさん、私たちの手から離れて巣立っていきました。チームとしては自由にしていて、LINEのチャット(※2)だったり、集まったり、それぞれ好きなことをやっているのがいいなと思います。お母さん、お父さんがああだこうだ言わなくても、勝手に楽しくやっている感じで。Tシャツもみんな着てくださっているのもうれしいです。
スー 「OVER THE SUN」のTシャツを着て、世界のあちこちに行ったり、山に登ったり。ありがたいよね。
━今回、公式の互助会本を作られた際にこだわったところは?
美香 最初に打ち合わせをしたとき、印象的だった話と言われても全然出てこなくて(笑)。思い出すのに時間がかかりました。
スー これはポッドキャストを聴いてくれている人のための本。私たちが世間に伝えたいことがあるとか、言いたいことがあるというものではないので、互助会員の人たちが聴きたい、読みたいと思って、楽しんでくれるものを優先的にピックアップしていって、動線を作りました。「あの話をするならこっちも入れないと通じなくない?」というのも入れながら。占いの話と沖に出る話(※3)が繋がっているのは、フックになると思いましたね。実はあのときから占いの結果が出ていて、2人で恐れおののいていたことが、本を読むとわかっていただけると思います。
━だからファンブックなのですね。パンチラインの言葉だけ見ても笑えるし、お二人の100問100答、プロデューサーの方たちの裏話も、ずっと聴いてきたからこそ楽しめる内容でした。
美香 お互いの回答で違うところもあったよね。みんないい記憶にすり替えているんだと思います。
スー それで全然いいんです。1冊出したらそれでいいんじゃないかと思うくらい、充実した内容になっています。
※1 リスナーの総称
※2 「オーバー・ザ・サン」の初の公式イベントを機に作られた、非公式のオープンチャット。番組のことから日常の話、悩みごとなど、やりとりが活発に行われている
※3 スーさんがオラクルカードで美香さんを占った(Ep.48)ところ、新しい始まりを示すカードが出て、その後美香さんが「沖に出る(退社する)」ことが発表された(Ep.71)
■悪ふざけが、世の中を動かせるかもしれない
━今回の本に掲載されているエピソード74(2022年2月25日放送)までが第1シーズンということですが、今後お二人がやりたいことは?
スー もっとイベントをやりたいですよね。私がいま一番心苦しいのは、番組でリスナーの皆さんにプレゼント企画があっても、全員が当たるのは無理だということ。『りぼん』世代なので、全プレ(※4)にしたいけど無理で。たくさん聴いてたくさん応募してくれる人ほど、ハズレの経験が多くなってしまう。それって地味に削られてしまうんですよね。
美香 全プレいいんじゃない?
スー 全プレしたいよね。あと運動会もやりたいんですよ。
美香 考えたら、もしかしたらできるかもしれない。配信なら、玉入れくらいできるんじゃないですかね。
スー ゲーセンじゃないんだから。本当は一緒にごはんを食べたりしたいくらいですけどね。
━互助会員のパワーがすごいということを、回を重ねるごとに感じます。
スー イベントに無理に参加する必要はないんだけど。女の人は片付けたり作ったりする割には、エグゼキューション(遂行)の面においては添えものというか、世の中を動かしていくより縁の下の力持ち的な存在で。ステージの上に乗せられても、仕切っているのが自分たちではないんですよね。でもこうした自分たちのちょっとした悪ふざけで、もしかしたら世の中が動くのかなって思えるのが、すごく新鮮なことなんだろうと思っています。同世代の女の人がたくさんいる現場で推し活をしている人は、もともとわかっていたと思いますが。ここから何か生まれるかもしれないし、生まれないかもしれないです。
━最後に、リンネルの読者にひとことお願いします。
美香 もし番組を聴いたことがない人は、ぜひ1回聴いてみてほしいですね。
スー だまされたと思って。大縄跳びみたいに、好きなところからでいいと思います。入ったところが出会いの場だから。年齢を重ねることに多少なりとも緊張や憂鬱な気持ちがあったりする人がいたら、聴いてもらえると考えが変わるかも。例えば、大人として十分に知恵や経験がないんじゃないかとか、歳を取ることによって自分の価値が下がってくるんじゃないかとか、子どものことばかりでなかなか自分の時間が取れなくて、このままでいいのかなとか、逆に子どもも産まないでこんなことをしていていいのかなとか。30代、40代って「いいのかな?」が出てくる時代だと思うんです。でも聴いてもらえると「まぁいっか」となると思うので、よかったら来てください。
(机の上に並べられた、『赤坂柿山(※5)』のおかきを食べながら)
スー 柿山は何がすごいって、後を引くんですよね。ちょうどいい塩加減! だから、「オーバー・ザ・サン」は“あなたの柿山になりたい”ってことですよ。もうちょっとって、ついつい食べちゃう。日持ちもするし、このご時世に小分けにされていて、おばさんたちが使う理由があるのよ。ちょうどいいよねっていうところは、狙っていけないからね。
※4 少女漫画誌『りぼん』(集英社)で行われていた、応募者全員に当たるプレゼントのこと
※5 番組内でよく話題に上ることをきっかけに、コラボした「互助会おかき」も販売されている
photograph:Keiko Ichihara edit & text:Mayumi Akagi
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