月城かなとさんが部屋に飾りたい、素描の魅力とは? 【スウェーデン国立美術館 素描コレクション展開催中!】 月城かなとさんが部屋に飾りたい、素描の魅力とは? 【スウェーデン国立美術館 素描コレクション展開催中!】
世界規模でみても質、量ともに充実した素描のコレクションを所蔵する、スウェーデン国立美術館。そんな素描コレクションより、ルネサンスからバロックまでの名品を選りすぐって紹介する展覧会が、上野にある国立西洋美術館にて開催中です。
普段からよく美術館に訪れるという、音声ガイドナビゲーターを務める月城かなとさんに、素描の魅力や美術館での楽しみ方など、お話をたっぷり伺いました。
素描とは?
素描(そびょう)とは、木炭やチョーク、ペンなどを用いて対象の輪郭や質感、明暗などを表現した、線描中心の平面作品のこと。デッサン、ドローイングともいいます。
素描の制作目的は、絵画や彫刻などの構想を練ったり、下絵を作ったり、完成作品の記録をしたりとさまざま。あらゆる造形の基本となるものであり、素描自体が一つの完成した芸術作品として仕上げられることもあります。
「下の方にメモ書きがされていたり、ちょっと描き直した跡もあったり。私たちが普段美術館で見ている完成された絵画に至るまで、画家の方がどれだけ試行錯誤を重ねたんだろうと、その過程が見えたりするのも素描のおもしろいところだと思います」と語るのは、本展の音声ガイドナビゲーターを務めた女優の月城かなとさん。
作者の手の跡がより直接的に感じられ、まるで作家の創造の場に立ち会っているような臨場感を味わえるのが魅力です。
世界有数の規模を誇る素描コレクション展
そんな魅力を持つ素描の、世界最高峰ともいえるコレクションを持つのが、ヨーロッパで最も古い美術館のひとつ、スウェーデンの首都ストックホルムにあるスウェーデン国立美術館。
本展では、その素描コレクションからルネッサンスからバロックまでの名品を選りすぐり、約80点を紹介。素描は環境の変化や光、振動の影響を受けやすいため、通常は海外で所蔵されている素描作品を日本で公開することは難しく、これだけまとまって来日するのは初めての機会。
デューラーやルーベンス、レンブラントなど、美術史に名を連ねる巨匠の作品をはじめ、芸術家の技量と構想力のすべてが注ぎ込まれた素描の魅力を存分に堪能できます。
本展ではイタリア、フランス、ドイツ、ネーデルランド(現在のベルギー、オランダにあたる地域)という制作地域ごとに、4章構成で作品が紹介されています。
「実は、素描というものをこれまであまり知らなかったんです。素描は黒い線だけで下絵として描かれているものだと思っていたので、こんなにカラフルなんだと驚きました。さまざまな色を使い、“これが下絵?”と思うほど、完成度もとても高い。皆さんが想像する素描のイメージよりも、カラフルで温かみがあるものだと思います」と月城さん。
月城さんのお気に入りの作品は?
およそ80点の作品が展示されているなか、お気に入りの作品が見つかったという月城さん。
「4章のネーデルランドで、動物の絵が3枚並ぶコーナーがあってかわいくてとても好きなのですが、特に真ん中にある《眠る犬》 は素描と思えないほどのやわらかさと、犬の寝息が聞こえてきそうなリアルさで、絵なのですが写真のような雰囲気もあってとても素敵なんです。
それから1章の「イタリア」にある《空飛ぶ雀》も、ムクムクしていてかわいいんですよね。今見ても古さを感じないし、逆に今っぽい色使いも楽しめます」
ほかに気になったのはニコロ・デッラバーテに属される《蛙男》 など、フランスのコスチュームデザインとして描かれた作品だそう。
「こんなコスチュームがこの時代に考えられ、クオリティの高いデザイン画として描かれていたのも驚きです。《蛙男》の隣にある白鳥のコスチュームも足がちゃんと鳥肌になっていておもしろい。
こういう素描が何のために描かれたか、時代背景みたいなところを音声ガイドでも説明をしているので、聞いていただくと一層作品への理解が深まると思いますし、くすっと笑えたりもすると思います」
美術館に足を運ぶ、心の余裕を残したい
今回の音声ガイドナビゲーターは、初めての経験だったという月城さん。
「いつか美術館のナビゲーターの仕事ができたら素敵だなと思っていたので、こんなに貴重な経験をさせていただいて、とても嬉しかったです。一緒に展覧会を巡っているような気持ちになってもらえたらいいですね。スペシャルトラックでは私のおすすめや、こんなふうに回ってみると楽しいといった、私自身が感じていることもお話ししました。
美術館って一人でいろいろと考えを巡らせられるのがいいところだと思うので、こういうふうに思ってほしいとか押し付けずに、“これってコスチュームらしいよ”とか、絵に関する何かを共有している感じにできたらいいなと思いました。あくまで皆さんが絵を見て感じるものは邪魔せず、聴くことによって想像が膨らむといいなと思いながら収録しています」
普段から、美術館に行くのが好きだったそう。
「子どもの頃から家族と行ったりもしていましたが、今は自由に美術館に行ける余裕が出てきたので、好きな作家の展覧会に限らず、体験型やインスタレーションなど、いろいろ観にいきます。インプットをしなければと意気込んで行くというより、割と軽い気持ちで気分転換に行くことが多いですね。
美術館では空間を楽しみたくて。美術館の空気や匂いを感じながら、一枚お気に入りを見つけたり、何でこの作品が好きなんだろうと考えてみたり。これが家にあったらかわいいなとか想像するのが楽しいです。
今の世の中は情報が溢れていて、なかなか静かな気持ちになれることがないですよね。そのなかで美術館に行くと、そういう情報から離れて、ただ目の前にあるものに集中できる。そんな時間が自分にとっては貴重で、楽しい、静かな気持ちになれるのがいいなと思います」
本展の作品はすべて撮影可能。月城さんもカメラを持参して、撮影したそう。
「実際に見て、その線の細かさを感じてほしいですね。スマホで写真を撮るような感覚で、画家の方が切り取りたいと思ったものを描いたんだろうなと感じました。レンズをのぞくように絵の構図を決めたんだろうなと。作品が小さいのですが、そのなかに絵の具もたくさん使わずに影と光を表現し、立体感があることに驚くと思います。空間もとても素敵なので、撮った写真を家で見返して楽しめると思います」
美術館に行ける余裕が持てるかどうかが、自分の暮らしのバロメーターの一つになっているといいます。
「疲れていると“よし行こう!”となれなかったりしますが、気軽に行く心の余白を作っておきたいなと思っています。美術館に行くことをハードルが高いと感じる方もいるかもしれませんが、夜まで開いている美術館も多いですし、美術館のカフェ目当てでもいいと思います。お気に入りが見つかったらいいな、くらいの気軽さで、皆さんもぜひ出かけてみてほしいですね」
部屋に取り入れたくなる、おしゃれなオリジナルグッズ
リアルな描写ながらも温かみのある素描は、部屋に飾りたくなるという月城さん。
「色使いやタッチがおしゃれで、きっとリンネル読者の方もお好きなんじゃないでしょうか。きっとリンネルが好きな方は、私はこういうものが好きと確立している方が多いと思うのですが、素描はそんななかにすっと入ってこれるような作品だと思います。
線だけで描かれているから、版画っぽいというかアニメーションっぽいところもあって。線だけで影や立体感を表現していて生活とそこまで離れていないので、アートよりももう少し身近に、かわいいと純粋に楽しんでもらえると思います。日常に取り入れたくなる色合いで、インテリアのなかにあると素敵ですよね」
展覧会特設ショップでは、スウェーデンの歯ブラシブランドとのコラボや、ノルウェーのコーヒーブランド『Fuglen Coffee Roasters』とのコラボドリップバッグなどもあり、北欧好きな方にもおすすめ。また、本展の公式キャラクター「すねこ(愛称:すにゃこ)」と月城さんとのスペシャルコラボグッズも制作中だそう。
「“素描”を“素猫(すねこ)”と読み間違えてしまう方が結構多かったようで、そこから生まれた展覧会のキャラクター。作者のそにしけんじさんが、私のアイデアを元にとてもかわいいすねこを描いてくださって、コラボグッズを制作中です。ぜひ完成を楽しみに待っていただけたらうれしいです」
キービジュアルになっているルネ・ショヴォー《テッシン邸大広間の天井のためのデザイン》 に合わせて、クラシカルな衣装の月城さん。改めて、本展の魅力を伺いました。
「素描というのは光や湿気にとても弱くて、海外からこれだけ多くの作品が集まることがとても珍しい機会だと聞きました。今回はスウェーデン国立美術館からたくさんの作品が来ていますし、素描というのは実際に足を運んで、近くで絵の筆のタッチや紙の質感を見ていただくと、素敵だなと感じられると思います。ぜひこの機会に訪れてみてください」
■展覧会概要
素描コレクション展
―ルネサンスからバロックまで
国立西洋美術館
9:30~17:30
※金・土曜は20:00まで
入館は閉館30分前まで
月曜、7月22日(火)、9月16日(火)休み
※ただし、7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)、8月12日(火)、9月15日(月・祝)、9月22日(月)は開館
一般 ¥2,000ほか
※展覧会グッズは完売の場合があります。最新情報は展覧会公式サイト、SNSなどをご確認ください。
月城かなとさん profile
俳優。1990年12月31日生まれ。元宝塚歌劇団月組トップスター。2024年7月に退団後は、コンサートやドラマ、声優など多岐にわたり活動。主な出演作品はディズニー映画「白雪姫」プレミアム吹替版やTBS系日曜劇場「キャスター」など。
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photograph:Mari Yoshioka styling :Hitoko Goto hair & make-up : AYA(TRIVAL) text & edit:Mayumi Akagi
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