CULTURE

「女性を美化せず、しっかり描く映画を作りたかった」/映画『九月と七月の姉妹』のアリアン・ラベド監督インタビュー 「女性を美化せず、しっかり描く映画を作りたかった」/映画『九月と七月の姉妹』のアリアン・ラベド監督インタビュー

今まであまり描かれてこなかった、女性のまなざし

セプテンバー
姉のセプテンバー。© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

初めての長編映画を監督するにあたり、『九月と七月の姉妹』を選んだ理由は、映画化をイメージしやすかったから、と語るアリアンさん。

「本を読んだときに、この姉妹にすごく共感しました。10代の描き方としてすごくおもしろく、今まであまり見たことがない描き方をしていると思ったんです。

姉妹関係や家族の絆のほか、遺伝、思春期、欲望、権力、といわゆる成長物語よりももっと深く踏みこんで、10代の人たちが持つ欲望や条件付きの愛を扱っているのがすごくおもしろいと思ったし、内面に訴えるものがあると感じました。

原作はゴシック小説ということでホラーのコードが使われていますが、かなり自然主義的なものが作れる気がして、撮影もおもしろくなるのではと思いました。いろいろなことを総合して、自分の最初の映画にするのにぴったりだと感じたんです」

そのなかで重要視したのは、女性中心の話であることだったのだとか。

「二人の若い女の子とそのお母さんの、三人の物語。いわゆる“フィメール・ゲイズ(女性のまなざし)”を探究し、実践することができると思いました。映画では、原作に出てくる男性をできるだけ隅に追いやって、女性の経験というものに集中しました。実はその女性の経験というものは、私が観客として映画を観るなかで足りないと感じていたこと。それはおそらく、私が観てきた映画の多くは、男性が作ってきたからだと思います。映画というものは女性性を隠してきたんだと思います」

セプテンバー
妹のジュライ。© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

普通は映画で隠されがちなもの、例えば生理用ナプキンやトイレ掃除、バーでの支払いなども、あえて見せたいと思ったそう。

「私は若い女性を性的なものとして描いていないんです。例えばフランス映画は、若い女性を性的に描いてきたと思いますが、私はこの映画のなかで、違うやり方で女性を描きたいと思いました。

それからこの映画のなかには、そういう状況から彼女たちを救ってくれる、救い主としての男性が出てこないんですよね。なので、そういうディテールをとても政治的なものとして描いています」

小説を映像化するうえで、一番難しかったことは?

「小説というのは、時空間を自由に行き来できるんですよね。子どもの頃だったり、お父さんが生きているときだったり、また現在に戻ったり。文学ではそういうことがすごく自由にできると思うのですが、映画ではある時期に集中しなければいけない。時間との関係が、小説と映画では違うので、どこの時期に集中して描くかを決めるのが、とても難しかったです」

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