CULTURE

「女性を美化せず、しっかり描く映画を作りたかった」/映画『九月と七月の姉妹』のアリアン・ラベド監督インタビュー 「女性を美化せず、しっかり描く映画を作りたかった」/映画『九月と七月の姉妹』のアリアン・ラベド監督インタビュー

成長過程でもがく、10代の少女たち

セプテンバー
母と寄り添う、セプテンバーとジュライ。© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

なぜセプテンバーとジュライの関係は、こんなに歪んだものになったのか。アリアンさんはこう語ります。

「すべての家族の関係は、複雑だと思うんです。愛情があったとしても矛盾があったりする。お母さんのシーラにしても、自分の娘たちを愛しているのですが、自分の作品のために利用しているところもありますよね。愛しているけど、ちょっとしたことで傷つけたりもしています。どんな家族にも優しさや愛はあり、それと同時にお互いに傷つけることもあると思います。

二人は10代。特にセプテンバーはなにか対立や争いを探しているところもあるんです。これは私の経験でもあるのですが、10代の頃って、権威に反発したりしますよね。母親と子どもの関係だけではなく、もっと複雑なものが影響していると思いますし、彼女たちがああいう関係になったのは、誰のせいでもないと思います。人間関係というのは複雑ですよね」

セプテンバー
映画『シャイニング』の双子のようなワンピースを着て、母親に写真を撮られる姉妹。© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

演出でこだわったのは、ちょっと変わった二人のコミュニケーション方法。

「リハーサルをたくさんして、この家族のなかの言語を作ろうと考えました。それは、すごく身体的なものだと思ったんです。どんな家族にもボディランゲージがあると思うので、彼女たちもおもしろいコミュニケーションの仕方があるという風に考えました。二人の間で作られている世界へのアクセス方法として、動物のような声をあげるというようにしました。

原作にも、二人の姉妹はあまり似ていなくて、セプテンバーはお父さん似、ジュライはお母さんに似ていると書かれています。映画のなかでも二人は似ていないけれど、姉妹であるということを、その動きからしっかり見せたいと考えました」

二人が身にまとう洋服や、どこか懐かしい雰囲気のインテリアなどもこだわりが詰まっているように感じます。

「最初のシーンのイメージ(上の写真)は、もちろん映画『シャイニング』の双子なのですが、それによってキャラクターたちの情報を少し与えようとしています。二人の若い女の子が『シャイニング』を観ているっていうと、少し奇妙な感じがすると思いますが、オマージュであると同時に映画の重みを伝えようとしたわけです。

美術的には、特に後半、家族が持つ家〈セトルハウス〉に行ったとき、彼女たちが箱を開けると60年代、70年代、80年代、90年代、2000年代を象徴するいろいろなものが出てきます。私たちは、前の世代のいろいろなものを背負っていることを表現したいと思いました。それはトラウマだけではなく、洋服もそうであるということを含めて、あの箱を作ったんです」

セプテンバー
〈セトルハウス〉にあった服に身を包む、セプテンバーとジュライ。© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

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