じぶんにとって心地よく、社会のためにもなるソーシャルグッドな取り組み。暮らしの一部をソーシャルグッドに変える知恵を集めました。今回は、衣食住にまつわること。まずは身のまわりのことでできる、小さなことからはじめてみませんか?
1.「衣」にまつわる、
ソーシャルグッドな取り組み
<取り組み1>
花の残渣を染料にして蘇らせる
わたしたちの暮らしに彩りを添えてくれる花々。しかし生花はいずれ枯れるものであり、元気がなくなった花々は廃棄することになります。花を捨てるのは切ないことですし、そしてゴミが大量に出ることも生花を扱う人たちがずっと懸念していたことでした。そんな中、廃棄される花をボタニカルダイ(現代生活様式に寄り添いやすい染めの手法)の材料として再利用する商品を作ったお花屋さんが『THE LITTLE SHOP OF FLOWERS』(以下リトル)です。
リトルのオーナー壱岐ゆかりさんがボタニカルダイに出合ったのは数年前のこと。「たまたま染色をやっている方と出会い、草木で染め物を行う現場を何度も見に行き、花や植物の奥深さを知りました」
当時、多忙な日々を送っていた壱岐さん。扱う花が増えるほど廃棄する花も増えていきます。それに気づかないぐらい忙しい日々を送っていたといいます。しかし昨年のコロナパンデミックによって、立ち止まり、状況を見直す機会がありました。
「コロナ禍で来店のお客さまが激減しました。そこで花をご自宅に置配するサービスを始めたんです。するとお客さまがお手紙などで励ましてくださって。玄関置きで、直接お会いすることは叶わなくても、私もスタッフもその心遣いに励まされました。そこで、お客さまに何かお礼がしたいという気持ちから、廃棄になってしまう花で染色したハンカチをプレゼントしようと思い至りました」こうしてやさしさのバトンから商品が生まれました。
「ボタニカルダイは色落ちしないですし、発色もいい。わたしたちの暮らしにちょうどいいなと思っています。それが植物で染められて、布地に植物の力が宿る気がするんです」その結果、リトルからのギフトは、お花のサステナビリティをつなげ、植物がもたらす新たな癒しをわたしたちに届けてくれることになったのです。
そのとき出る廃棄の花の種類によって色味も変化するので、1着1着色味が微妙に違うのがまたよい。エプロン(¥19,800)は男女兼用サイズ。小ロットで作っているため、一期一会のグッズも多い。
● THE LITTLE SHOP OF FLOWERS
東京都渋谷区神宮前6-31-10(ATELIER)
03-5778-3052
不定休
http://www.thelittleshopofflowers.jp/
2.「食」にまつわる、
ソーシャルグッドな取り組み
<取り組み2>
普段の食卓と開発途上国をつなげる
「食の不均衡」に
クリックひとつで支援
世界の約70億人のうち、10億人が飢餓で苦しむ一方、20億人が栄養の取りすぎで肥満にあるといいます。「TABLE FOR TWO」は「開発途上国の飢餓」と「先進国の肥満や生活習慣病の問題」のふたつを同時に改善すること。宅配サービス「Oisix」で寄付金付きの商品を購入すると、開発途上国の子どもに栄養のある学校給食を届けることができます。選べる商品はOisixで人気のヘルシー食材多数。ヘルシーな食事を通して食生活を改善しながら、子どもたちに温かい給食と未来への希望を届けられる仕組みです。
● TABLE FOR TWO
https://jp.tablefor2.org/
3.「住」にまつわる、
ソーシャルグッドな取り組み
<取り組み3>
マイホームがいくつもある、という生き方
「ADDress」
家も故郷も家族もシェアが
当たり前になる未来
地方移住や二拠点居住が当たり前になりつつある今、新たな「家」の概念がここに。「ADDress」は、定額制で、全国各地にある住環境の整った家に住み放題。空きさえあれば、いつでも好きな地域の「家」に滞在することができます。その「家」は、日本全国にたくさんある空き家を活用し、地域活性化に一役買っているのです。ADDressの代表・佐別当隆志さんは「シェアサービスで増大する空き家を有効活用してほしいという相談を多数いただき、私自身、テレワークでどこでも働ける環境で都市だけでなく地方にも暮らしたいという思いがありました」と、昨今の状況を踏まえたサービスインだといいます。都会の高い家賃を支払い、狭い部屋でテレワークをするよりも、地域の社会問題である空き家に住むことで、地域を活性化し、自身ものびのび暮らせる「共助関係」が成立します。家はひとつだけ、という常識は過去のものになる日が近づいているかもしれません。
● ADDress
https://address.love/
<取り組み4>
床を木に張り替え森林を守る 「ユカハリ」
置くだけで無垢のフローリングに
フィンランドに次いで世界第2位の森林大国である日本。岡山県の西粟倉村では、村の面積の95%を占める森林の持続可能な森林経営を推し進めることで国内外で注目されています。西粟倉・森の学校で販売している「ユカハリタイル」は、裏地にゴムシートがついた無垢の木のタイル。賃貸のお部屋でもあっという間に国産無垢のフローリングがつくれるのです。おうち時間がまだまだ続くなか、心も体も癒される空間づくりは今や必須。やわらかで温かみのある無垢材は子どものいる環境にも最適です。
●西粟倉・森の学校
https://morinogakko.jp/
<取り組み6>
パッケージを慈しんで使う
化粧品 「BAUM」
使えば使うほど、肌も森も潤う化粧品
「BAUM」は「樹木の力」に着目し、全化粧品の90%以上が自然由来の素材で作られています。まるで森林浴をしているような香りは樹木が傷ついたときに出る「フィトンチッド」を含んだシダーウッドオイルがベース。目を惹くパッケージの木製パーツは家具メーカー「カリモク」とのコラボにより、家具を作る際に出る端材を再生利用。一部にバイオPETを採用したパッケージ、リサイクルガラス容器、FSC森林認証の紙を使用した外箱など、環境への配慮は完璧。また、売り上げの一部は東北地方の「BAUMの森」の木々を育てることに使われており、BAUMを使うことによって、樹木の恵みを未来につなぐことができます。
● BAUM
https://www.baumjapan.com
photograph:Mari Yoshioka text:Asai Asami(Kokohore Japan Inc.) web edit:Riho Abe
リンネル2021年11月号より
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