少年アヤさんインタビュー 道のはしっこを歩かなきゃいけないのは、 ゲイの自分も、お母さんたちも同じなんだなって。 少年アヤさんインタビュー 道のはしっこを歩かなきゃいけないのは、 ゲイの自分も、お母さんたちも同じなんだなって。
自身のジェンダーやコンプレックスと向き合ってきたエッセイストの少年アヤさんが、誰にも嘘をつかないと決めて綴った文章とは?
少年アヤさん新作インタビュー
生きづらい世界で、自分のセクシュアリティと向き合う
隣のテーブルの会話にかき消されてしまうほど、それはとても小さな声でした。「ずっと、気持ちをうまく表現できなかった。家族や友人に対してもできなかった。それは、ぼくがゲイであることも、深く関係しています」
生きづらい世界で、自身のセクシュアリティと向き合い「自分が苦しくなるから」と、せめてうそをつかないと決めて綴った文章。てらりと桃色に光る繊細な筆致が話題となり、多くのエッセイを上梓してきた少年アヤさん。本人いわく「20代の総決算と思って書いた」という新刊が『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』です。
「ここ数年は、自分のなかに潜って心を修復したり、癒やす作業を中心にやってきましたが、今作は外に向かっていく様子を書こうと思い、他者の存在を特に意識しました」
登場するのはまわりの家族や友人、恋人たち。彼らとのかかわり、リアルなエピソードから、ジェンダーや女性中心の育児など、昨今社会で起きている問題が透けて見えます。
「たとえばゲイという存在も、キャラクターとして認知はされているけれど、実際に当事者たちがのびのび暮らしているかといえば、そうではない。当たり前ですよね。いまだに結婚すら許されないんだから」
自身もまた、しかり。「こうやって表に出てゲイです、とは言えても、普段から堂々とゲイとして振る舞えるわけではない。外ではつい声を潜めてしまうし、恋人とも距離を取ってしまう」
道のはしっこを歩かされている人たちへ
さらに胸をつくのは、同世代の女性の友人たちの逸話。
「親友のまゆちんが、職場ではかされるパンプスで、ひどく足を痛めていたり、母親になった友人たちが、毎日ボロボロになりながら、ほとんどひとりで育児をしていたり。間近でそんな彼女たちの姿を見て、あらためて衝撃を受けたし、自分の生きづらさとも重なったんです。ストレートの男性中心の社会で、それ以外の人たちは、ほとんど道のはしっこを歩かされている。その様を、日記という形で炙り出したかった」
今作は、それらへの提言の意味合いも込められているというアヤさん。
「自分はゲイとして、道のはしっこを歩かなきゃいけないように、お母さんたちや、働いてる女の人も同じなんだなって」
だからこそ。たとえ声は小さくとも抗い、叫び続けることの大切さ。
「微力かもしれないけど、この本を出したことで、マイノリティの自分が、つねに他者と生きていて、しっかり社会のなかに存在するんだと示せる。それが誇らしいです」
新著『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』
少年アヤ/¥1,760(双葉社)
友人や家族、恋人たちとかかわりながら、自分と向き合う。決してうまいことやれない暮らしのなかで、ひりひりとした切なさを抱きしめながら今を生きる、日記を基にした小説のような本書。どこかユーモラスだけど、どうしようもなくピュアな著者の気持ちに、胸がかきむしられることうけあい。
お話を伺ったのは……少年アヤさん
PROFILE
少年アヤ
しょうねんあや/1989年生まれ。エッセイスト。ブログ「尼のような子」が注目を浴び、 人気を得る。著書に、同ブログを基にしたエッ セイ集『尼のような子』(祥伝社、2014年)、 『焦心日記』(河出書房新社、2018年)、 『ぼくの宝ばこ』(講談社、2020年)など。
photograph:Shinnosuke Soma text:BOOKLUCK
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