LIFESTYLE
:2LDK 63㎡ 都内ヴィンテージマンションに3人暮らし。趣あるインテリアと余白を大切にした空間づくり(素敵なおうち訪問:長野宏美さん宅前編)
LIFESTYLE
:
素敵なおうちを訪ね、家づくりにおいてこだわったところやお気に入りのポイントなどをお聞きする連載「素敵なおうち訪問」。
今回訪れたのは、都内のヴィンテージマンションにて、家族三人で暮らしている編集者の長野宏美さん。こちらの前編では、たくさんのお気に入りに囲まれながらも、余白を大切にしたインテリアについてお話を伺いました。
長野宏美さんのおうちDATA


・世帯人数:三人暮らし
PROFILE
長野宏美さん(編集者・PR)
株式会社となりの代表。日本各地のものづくりや、暮らしにまつわる取材と執筆、PRを手掛けるなど幅広く活躍中。一児の母。
Instagram:@hrm_ngn
築40年超のヴィンテージマンションでの暮らし
ものづくりや暮らしにまつわる編集・PRの仕事を行う長野宏美さんが暮らすのは、都内のヴィンテージマンション。結婚を機に、現在の住まいへ。竣工当時の設えをそのまま残し、どこか海外のような雰囲気を感じる佇まいが魅力的です。
「1980年代に建てられたマンションです。もちろん古さはあるのですが、私も夫もこういう雰囲気のお家が大好きで。一番の決め手は広いキッチン。リビングにあるガラスブロックの窓も夫婦揃ってお気に入りです。『このガラス窓がある』ということも、家探しの加点ポイントのひとつでした」

趣ある曇りガラスのデザインは、ヴィンテージ建築ならではの意匠
竣工当時の木の雰囲気を生かして
赤みがかった木の扉や柱など、築古物件らしい落ち着いた雰囲気になじむようなスタイリングも長野さん流です。
「大規模なリノベーションがされておらず、竣工当時の雰囲気を感じるところも気に入りました」

異素材を取り入れて、空間にリズム感を
リビングの壁には木目調の剥がせる壁紙、床には茶色のフロアタイルが敷かれていて、全体的に統一感のある配色と木の温もりが感じられる長野さんのお宅。落ち着いたなかにも、どこかモダンな印象が漂います。
「木製のものだけでまとめるのではなく、シルバーやガラスなど、異素材を意識的に取り入れて、空間を引き締めるようにしています」

ル・コルビジェのテーブルはガラス製
パートナーがDIYで作ったという壁付の棚も、白っぽいタイル調のデザインに。脚もシルバーを選びました。ラグのオレンジもちょうどいいアクセントになっています。
「床も壁も茶色が強めなので、少しやわらかい雰囲気も取り入れたいと、棚やソファは白っぽいものを選びました。イケアで見つけた大判ラグも、空間が重くならないよう明るい色に。インドの手仕事による限定コレクションで、店頭で見かけて一目惚れしました」

そして、結婚記念に買ったというお気に入りのソファはアイボリー系の色味。ふっくらとしたフォルムが特徴です。大きなメタルの留め具が、上品なデザインのアクセントに。
「汚れを気にしながらも、思い切ってこの色を選びました。ヴィンテージ感とモダンな雰囲気を両立しているデザインで、家の佇まいになじんでくれていると思います。家具は時代を超えて愛されるような普遍的なデザインのものが好きです」

カッシーナのソリアナは、1969年にデザインされたミッドセンチュリーの名品
空間になじむ、子どものもの
お子さんがちょうど1歳になる長野さん。子ども用の家具は近所のリサイクルショップやメルカリでセカンドハンドのものを手に入れることが多いそう。
「子どもの成長はとても早く、すぐに使えなくなってしまうことも。だからこそ、本当に必要なときにだけ購入して、手放すときは潔く。そんなふうにものが気持ちよく巡っていくような、好循環が生まれたらいいなと思っています」

「子どものものは、これからどんどん増えていくと思いますが、できるだけひとつの収納箱やワゴンの中に集約するようにしています。一日の終わりにはきちんと片づける習慣をつけて、すっきりまとめられる仕組みを心がけています」
大切に選んだ手仕事のものやアート
日本各地を巡り、まるで旅をするように仕事をしている長野さん。作家さんのお話を直接聞いて、共感し、惹かれたものを少しずつ集めていったそう。
家のあちこちに点在する手仕事のものやアートからは、その確かな審美眼と、独特のオーラが漂います。長野さんのお気に入りをいくつかご紹介します。
リビングの壁面には、木工作家・髙橋成樹さんのスツール作品が二つ並んでいます。

「髙橋さんは、森林面積が7割の高知県で、健全な森を守り育てる“山師”としても活動されている方。自ら山に入り、伐採した木の魅力を引き出して、作品を生み出されているところが素敵だなと思いました。個展に行った際、この二つを持ち帰ってきました。植物や花器、香炉を置いたり、そのときの気分で自由に使っています」
日本のものだけではなく、海外のものも。なかでも、1950〜70年代に西ドイツで生まれたヴィンテージの陶器「ファットラヴァ(Fat Lava)」の花器がお気に入りなのだとか。

ファットラヴァの花器。火山の溶岩のような、もこもこした模様が特徴的
「国内外を問わず、国や地域ごとのものづくりの歴史や背景、そしてその土地ならではの特徴を知るのがとても楽しいんです。ファットラヴァの花器もいくつか集めています。棚には一度にたくさん飾るのではなく、季節や気分に合わせて少しずつ入れ替えて、並べるレイアウトを変えて楽しんでいます」

お気に入りの器たち(左上から)沖縄で作陶する紺野乃芙子さんのボウル。鹿児島の飲泉カップは、一輪挿しや来客時のフルーツピック入れとして。結婚祝いでいただいたという、Studio bwanjiのマットな質感の白磁のプレート

デンマークのガイストの壁掛け時計は、中心がぼやけているデザインが特徴的。夫婦で一緒に暮らす前、たまたまお互い同じようなデザインのものを持っていたそう
アーチが特徴の広々としたキッチン

取材で地方に行った際、道の駅などで買った珍しい野菜などを帰宅後に料理することも楽しみの一つ
リビングに隣接するキッチンは、アーチ状の入り口が特徴的なデザイン。
「家族ができたら料理をする頻度も増えると思い、モチベーションが上がるような広いキッチンがあるお家に住めたらいいなと思っていました。部屋選びの際にも、このキッチンの存在は大きな決め手になりました」

タイルや木扉など、もともとのキッチンの雰囲気を生かしつつ、黒の家電などで落ち着いた空間に。広いだけではなく、たくさん収納があるところも使い勝手◎なポイントだそう。
そして、長野さんが一日のなかでも大切にしているお茶の時間。シンク上の一等地に、お気に入りの茶器たちがきれいに収納されています。

余白を大切にした空間づくり

まるでアートギャラリーのような住まいですが、「生活感のない空間の方がいい、とは思っていません」と話す長野さん。何より大切にしているのは「余白」を残すこと。
「ちょうど最近、夫とも『余白って大事だよね』と話していたんです。雑誌などで素敵なお宅を見ると、広い空間に少しずつものが置いてあって、その余白がいいなと。ただ都内の賃貸マンションだと空間が限られるので、ついついものを詰め込みがちになるんですが、本当は収納から出したいものがあっても、そこはぐっと我慢。たとえば、以前はレコード棚の上にたくさんの植物を置いていたんですが、少しごちゃついてる気がして、場所を変えてみたらしっくりきました。お気に入りのものを並べたい気持ちと空間の心地よさ、そのバランスをいつも大切にしたいと思っています」

レコード棚のタイル部分には植物をたくさん置いていましたが、現在は照明だけ
また、昔から必要になるまで買わない、本当に気に入ったものだけを迎えるということを大切にしている長野さん。
「大きな買い物をするときこそ、『これだ!』と思えるものに出合えるまで買わないようにしています。一人暮らしを始めた20代前半の頃から、“とりあえず”買うことをしないようにしてきました。欲しいデザイナーズ家具やヴィンテージ家具があるなら、買えるまで我慢します。そうやって一つずつお気に入りを揃えていくことで、自然と部屋の雰囲気にも統一感が出て、自分や家族にとって心地よい空間ができあがっていく気がします」

長く大切にされてきたおうちの中で、大好きなものに囲まれながら、余白を大切に暮らしている長野さん。もの選びの基準や空間づくりには、心地よい住まいをつくるヒントがたくさん詰まっていました。
こちらもチェック!
photograph:Tsubottle edit & text:Riho Abe illustration(間取り):Kayo Yamaguchi
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
おすすめ記事 RELATED ARTICLES
Recommend
SNAPRanking
DAILY
/
WEEKLY





































