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:星野文月さん『不確かな日々』を半年間日記にして気づいた、揺れる自分の現在地/3年ぶりの新刊インタビュー
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思うようにいかない日々の中で、現在地を確かめるように綴られた、星野文月さんの半年間の日記本『不確かな日々』が発売。
めまぐるしく変化する現代に、日記のリアルな言葉が心に届き、自分の気持ちや暮らしと向き合うきっかけになるような一冊に。書いてみた後の今の気持ちを伺いました。
弱さ比べしてもしょうがないし、強くてやさしい人になりたい
「あ、この気持ち知ってる」書かれているのは誰かの日常なのにもかかわらず、あたかも自分のことのように思えてくる。「共感」というよりも「共鳴」するように、自身の感情として確かに深く響き、増幅していく。それはなんとも魅了された読書体験でした。
作家・星野文月さんの新刊『不確かな日々』は、能登半島地震が起こった2024年のはじめから半年間、心身ともにぐらぐらと揺れる日々のできごと、心模様を綴ったもの。
「自分の傷口を観察するの、大好きなんです」
ふふふ、と笑うその表情は、本の中の彼女よりも、タフで凜とした印象でした。「ずっと弱い自分が弱いままでいい、と思ってたんですけど、今はそうは思わなくて。弱さ比べしてもしょうがないし、強くてやさしい人になりたい。まだめざしているところには届かないんですけど、その途中で揺れ動いている自分の現在地みたいなのは、見えた気がします」
その手だてが、彼女の場合「日記を書くこと」でした。
「たとえば、友だちが結婚したり、子どもを産んだり。ライフステージが変わるにつれて『一緒にいたいけどいられない』どうしようもない寂しさというのがあって。ただこれをエッセイでもし書いたら、強く自分の寂しさを打ち出したものになってしまう。そうじゃなくて『私は寂しいなあ』という、そのままの形で記録したかったんです」
はたから見てわかりやすい悲しさやうまくいかなさは、ケアの対象になるけれど。「どうにもわかりにくいし、説明もうまくできないことって、自分でもどう扱っていいかわからない。なのでまずはあったことを淡々と書いて、未来の私に『頼んだよ』と託すような感じかもしれません」
まとまらなくてもいい、ネガティブやポジティブなどと分けて考えなくてもいい。星野さんいわく「生煮えの言葉」を許容できる余地が、日記にはある。
「単純にひとつの出来事をいい、悪いで判断するんじゃなく、色彩のバランスのようなもので、暗めな色でもきれいで、ひとつの絵として見る、そういう視点を得たような気がします」
とても、苦しかった半年間でした。
「ただこうして本として束ねられたとき、自分が不思議と愛おしく感じられる。一生懸命生きてきたなって」
新著『不確かな日々』

お話を伺ったのは……星野文月さん
ほしの・ふづき/作家・文筆家。1993年長野県富士見町生まれ、松本市在住。文芸誌や、Webメディア、新聞などでエッセイや小説、コラムを執筆。著書に『私の証明 』(百万年書房)『プールの底から月を見る』(SW)、共著に『取るに足らない大事なこと 』(ひとりごと出版)『もう間もなく仲良し』(BREWBOOKS)がある
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photograph:Yuki Nasuno text:BOOKLUCK
リンネル2025年8月号より
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