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山林の現状を知って、森林保護につながるアイテムを選びたい【モデル・taraさんと考えるSDGs】 山林の現状を知って、森林保護につながるアイテムを選びたい【モデル・taraさんと考えるSDGs】

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土壌を健全に保つため密林を間引く「間伐」。近年、間伐が行き届いていない山林が増加していることが問題に。「未来の子どもたちのために」と都会から徳島へ移住したデザイナーが、プロジェクトを立ち上げ問題解決に取り組んでいます。町内のほとんどが人工林という、徳島県の神山町で、杉の間伐材を使って製品をつくる「神山しずくプロジェクト」の主任・渡邉朋美さんにお話を伺いました。

目次
山林の現状を知って、森林保護につながるアイテムを選びたい【モデル・taraさんと考えるSDGs】
  1. 放置されている山林の現状を知ろう
  2. 森林保護につながる商品を選ぶ
  3. お話を聞いて、taraさんが感じたこと
  4. 教えてくれた 渡邉朋美さん profile
  5. 話を聞いた taraさん profile

放置されている山林の現状を知ろう

徳島県に植生する神山杉の間伐材を活用した「神山しずくプロジェクト」の食器は、ふわりと軽いのが特徴。職人さんが杉のブロックからひとつひとつ丁寧に削りだした美しい曲線は毎日の食卓を彩ってくれます。

taraさん:山林の間伐材を利用することは、環境にどのようにいいのでしょうか?

渡邉さん:「緑の砂漠」という言葉はご存じですか? 日本が抱える人工林の問題で外側から見ると緑豊か、でも森林に入ると真っ暗で、草花が育たず、土が砂漠のような状態になっていることを指します。
なぜそうなるかというと、人工林は生育過程で樹木を間引く計画で、苗木を密植するのですが、間伐されず放置されているからなんです。太陽の光が射しても、密林だと地表まで光が届かない。さらに針葉樹の人工林だと落葉しないので、土が砂漠のような状態になってしまいます。砂漠化した土は固いので水を吸い込みづらく、雨が降ってもその水は、地表を流れていくだけ。本来は、葉が落ち、太陽の光が届いて、虫や微生物によってふかふかになった土壌が雨水をろ過し、川の水量を保ってくれます。ですが、土壌が固いので、雨が降った後だけは増水しますが、川の水量自体は減るという現象に。土砂崩れもしやすくなると言われています。

taraさん:間伐することで、土壌を機能させるのですね。

渡邉さん:そうですね。神山町の山林も杉やヒノキの人工林がほとんどで、同じ問題を抱えています。東西を鮎喰川が流れているのですが30年前に比べて水量が3分の1に減ってしまったんです。
名前の通り天然の鮎がたくさんいましたが、今はいません……。それだけでなく山の水を生活用水にされている山間部の方は、お風呂に入れない日も出てきています。

taraさん:どうして山林が放置されているのでしょうか?

渡邉さん:昭和20~30年頃、日本は戦後の復興などで植林が盛んで、神山町も林業で栄えていました。ですが時代が変わり、輸入木材が主流になって国内木材の需要が減った、というのが大きな原因です。
再び杉のよさに注目してもらえるよう、私たちがデザイン事務所として何かできないかと考えたのが食器でした。身近で、いろんな人が手に取れて……。器を通して杉っていいねと気づいてもらえて、広めていただくことで、杉を活用する価値が高まり、結果神山の美しい自然を残していけたら。
30年、50年、100年続けていかないと結果が見えないこの活動を継続することが、私たちの命題です。


森林保護につながる商品を選ぶ

環境問題になっている放置された人工林。間伐材や計画的に伐採された木材や竹の製品を選ぶことは、山肌の土砂崩れの抑制や、水源かん養(※)の保護につながります。
※森林の土壌が降水を貯蓄し、河川の水の量を平準化して洪水を緩和するとともに、川の水量を安定させる機能のこと。また雨水を土壌がろ過する機能。

1.ヒノキの間伐材が紡ぐあたたかな音をファーストトイに

岡山県西粟倉村に工房を構える「mori no oto(モリノオト)」の楽器玩具。西粟倉村は、面積の95%が山林であり 、さらにその85%が杉やヒノキなどの人工林。「モリノオト」のプロダクトは、村が取り組む、森林を守るためのプログラムとして、ヒノキの間伐材を用いています。

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赤ちゃんも楽しめるお米が入った小さなマラカス・カスタネット・鈴のセット。森のオトハジメ(カチカチ・シャカシャカ・コロコロ3種各1個入り)¥6,600/モリノオト

2.口当たりなめらかで丈夫 優秀な竹製品を毎日に

「BALIISM」の繰り返し使えるカトラリーセットは、バリ島の計画伐採区内で採れた竹を使用。スウェーデンのテーブルウェアブランド「cink(サンク)」の食器は、竹箸の製造工程で出る廃棄物・竹粉が原料。竹は、中国の竹林から適切に伐採。成長が早い竹は、注目のエコ資材。

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バンブーカトラリーセット¥2,200/BALIISM(カーサフライン表参道本店)、バンブーマグ¥1,210、バンブープレート¥1,540、バンブーボウル¥1,430/すべてサンク(BLUE)

3.間伐材から作られた和紙の生地を、夏の風が心地よく通り抜ける

通気性、吸水性、抗菌性、調湿性。優れた機能を持つ和紙を主原料とする素材・製品のブランド「KAMITO」。和紙には、カナダに植生する針葉樹・ホワイトスプルースの間伐材と製材廃材を使用。間伐材の有効活用は、森林保護だけでなく、廃棄を減らすことにもつながります。Tシャツとパンツは、さらりとした肌触りのよい生地で、暑い夏の相棒に。

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Tシャツ¥11,000、ワイドパンツ¥22,000、ト ートバッグ¥12,100/すべてKAMITO(TFC)

4.日本が抱える放置竹林問題 孟宗竹を使ったメンマが登場

ピリ辛の赤麦味噌味がごはんのお供にぴったりな「延岡メンマ」。メンマの原料は、宮崎県延岡市に植生する「孟宗竹」。宮崎の孟宗竹だけでなく、日本全国で問題視されているのが、生産者の高齢化や後継者不足による放置竹林。成長の早い竹が増殖すると森に入る日光を遮り、土壌が痩せ、土砂崩れなどの原因に。国内の竹製品を選ぶことは竹害を回避する一助に。

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森を育てる「延岡メンマ」¥1,500/延岡メンマ(LOCAL BAMBOO)

お話を聞いて、taraさんが感じたこと

tara
「豊かな緑に隠されるように取り残された負の遺産と責任。利益と効率を求めすぎた故の代償の大きさに、人間の愚かさを改めて痛感しました。移住者という立場でありながら神山の土地を想い始まったプロジェクトは、マイナスをプラスに変える力で新たな循環を創りだしていました。その健やかな循環と戻りつつある町の活気を巡らせた先、時間はかかるかもしれませんがきっと山も元気になってバランスを取り戻せるような気がしています。この環を広げ持続させていくためにも、消費者としてこういった問題に取り組む企業やブランドを知ること、そしてプロダクトを手に取ることで循環の一部となり、サポートすることが大切なのではないかと思います」

教えてくれた 渡邉朋美さん profile

渡邉朋美
神山しずくプロジェクト 主任
8年前、大阪から徳島県名西郡神山町に移住したデザイナーが立ち上げた「神山しずくプロジェクト」の主任。自身も東京で証券会社に勤めた後、7年前に神山に移住し就職。デザインが持つ力を実感しているそう。shizq.jp

話を聞いた taraさん profile

tara
5歳よりバレエを始め、15歳で単身渡米。ヒューストン・バレエ団の研修を経て、チェコ、クロアチアの国立劇場でソリストとして踊る。2016年に拠点を日本に移しモデルとしての活動をスタート。雑誌、カタログ、TVCMやPVなどに多数出演するほか、絵本の翻訳(『チュチュをきたトラ』 文化出版局)、エッセイの執筆、ヴィーガン料理のレシピ開発など幅広く活躍している。

photograph:Miho Kakuta text:Nao Yoshida web edit: Liniere.jp

リンネル2021年10月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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