生きることと切っても切れない「ゴミ」。環境省のデータによると、実は日本はゴミの焼却量が世界一! モデルのtaraさんが、ゴミ清掃員のお仕事もしているお笑い芸人・マシンガンズの滝沢秀一さんに、現場で感じた家庭ゴミの実情を教えてもらいました。
<テーマ1>おこもりで“断捨離”ブーム。ゴミ大国の日本。
taraさん:「マシンガンズ」の滝沢さんがゴミ清掃員のお仕事もしていらっしゃると聞きました。Twitterでのゴミ清掃のつぶやきも話題ですよね。今回、ゴミを収集する立場から見えたことをぜひ教えてください。ゴミ清掃を始められたのは2012年でしたよね?
滝沢さん:はい、9年ほど前ですね。最初はやっぱりゴミの量にびっくりしました。それまで分別くらいはしていましたけど、芸人やっててゴミのことを特に考えたこともなくて。ゴミを出せば清掃員が持っていってくれて、くらいは認識あるけど。でも、実際に回収するとすごい量だなって思いましたね。都内のいろんなところへ回るんですが、ゴミ2tを回収できるトラックで1日6回、約10t。回収し終えて清掃工場へ行くと、僕と同じような清掃車がほかに何台も何台も来るでしょ。集めたゴミを一旦ためておく40×30m、深さ20mくらいのゴミピットっていうでっかい穴があるんですよ。そこがゴミだらけで、年末は溢れそうになるんだよね。毎日毎日こんなに出るんだったら、全国となると相当の量だと思いましたね。
taraさん:コロナ禍で家時間が増えたので、ゴミもより増えたのでは?
滝沢さん:みんな断捨離をしたんで1.5〜2倍くらいに増えましたね!
taraさん:生ゴミが増えたというより?
滝沢さん:圧倒的に断捨離のゴミです。洋服や100円ショップのカゴは大量に見ましたね。不燃ゴミで多かったのが食器で、結婚式の引き出物でもらったようなシャンパングラスや、いいワイングラスを箱のままで、とか。植木鉢やビニール傘もよく見ました。5、6月は庭の雑草も多かったですね。
taraさん:雑草ってゴミなんですね。
滝沢さん:水分を含んでいるから燃やすのにエネルギーを使うんだよね。枯らしてから出してもらうのが一番いいかな。僕も家庭菜園をやっているけど、そうしてます。あとはそもそも自然のものだから、庭に穴を掘って入れちゃえば、半年後くらいにいい土になるんだってね。ゴミ袋に入れるからゴミになる。ゴミ袋自体が世の中で唯一ゴミとして生まれてくる存在なんですよ。ほかはゴミとして生まれてきていないんですよね。それって、哲学的だと思いませんか。
<テーマ2>日本のゴミの埋め立て地がピンチ! ゴミの概念を変えよう
taraさん:環境省によると、日本の最終処分場が20年後になくなると。
滝沢さん:意外と知られていない事実ですよね。ゴミって燃やせば手品みたいに消えると思っている人もいるかもしれないけど、灰が残るんです。その灰を埋められる場所があと20年。あっという間ですよ、僕がお笑い芸人になって23年ですから。だから、まずみんなでゴミを減らしていかないと。
taraさん:清掃の現場から見て、何に気をつけるといいでしょうか?
滝沢さん:単純にゴミを減らすとなると、分別をするのがいいんです。ほとんどがリサイクルされればゴミという概念がなくなるんですよね。ペットボトルや缶を“資源ゴミ”という人が多いんですけど、僕らの世界では怒られます。
taraさん:“資源ゴミ”という言葉は間違っているんですか?
滝沢さん:要は資源じゃないですか、再生するからゴミじゃないんですよ。ゴミは燃えるゴミと燃えないゴミの2種類しかないんですよね。瓶や缶、ペットボトルは再生されるから資源って呼ぶんです。紙だって可燃ゴミとして出せば灰になってしまうけれど、雑紙として、資源の日に出せば、紙になる。
あとは分別のひとつとしてスーパーにペットボトルを持っていくといいと思います。いくら自分がきれいにしてゴミの集積所へ出していても、ほかの人がすすがなかったり、キャップやラベルをつけたまま出していると、ペットボトルはペットボトルにかわらないんですよ。実のところ、きれいなものとそうでないものは清掃業者に仕分けてもらえないんです。
きれいなペットボトルからペットボトルが再生されることを水平リサイクルっていって、汚れているペットボトルはボールペンの先や卵のパック、洋服になる。ボールペンや、卵のパックは使い終わったら捨てるじゃないですか。そうなると最終的には燃やすでしょ。ではなくて、水平リサイクルでペットボトルからペットボトルにかわれば永遠に使えますよね。だから、資源をきれいな状態で出すことが大切で。ほかにスーパーで水平リサイクルしているのは、牛乳パックや発泡スチロール製のトレー。大体のスーパーで回収しているのでぜひ持っていってみて。
taraさん:以前、私が住んでいたクロアチアの街は古きよき昭和の雰囲気があって、みんなとっても物を大切にしていて。男の子は物を直すというスキルを持っていました。
滝沢さん:ヨーロッパでは、今年から一部の電化製品を自分でリペアしてもいいという法律ができたよね。ゴミの分別を授業でやるみたいに、リペアも義務教育でやるといいかも(笑)。自分の行動次第では燃やさなくてすむんだよね。燃やすとなると二酸化炭素も排出するし、ただ単純にお金がかかるんですよ。それは税金でまかなっているわけで。焼却炉の保全費も毎年毎年、何十億円もかかっているんです。ゴミを燃やした後の灰も、そこに雨が降ると汚水になるから、きれいな状態にして下水に流すのに東京都で年間約25億円。灰を埋めたらそれで終わりじゃない。
<テーマ3>物を作る人、ゴミを回収する人の顔を想像してみて
滝沢さん:僕はリスペクトの心が大概のゴミ問題を解決するように思うんです。ゴミを減らす3R(リデュース・リユース・リサイクル)って言葉がありますけど、あえてもう1R付け加えるならリスペクト。断捨離もそうですけど、お中元お歳暮シーズンに高級ゼリーが箱のまま捨てられていたり、新米の季節は昨日まで食べていたお米が捨てられていたり、めちゃめちゃもったいない。それって、誰が作ったかわからない、顔が見えない社会になったからじゃないかなって。僕がゴミ清掃員をやっているから、まわりの芸人もゴミの分別をしてくれるようになったんです。ひょっとしたら滝沢が回収してくれるかもしれないって。ゴミ袋から包丁が飛び出してきたりしたこともあったんで、誰が回収するかを想像するだけでも変わっていくのかなと。ゴミの捨て方ひとつとっても、リスペクトの気持ちや思いやりの気持ちが大切なのかもしれないですね。
お話を聞いて、taraさんが感じたこと
「ゴミは、一体どこからが『ゴミ』となるのでしょう。ついさっきまで食べていたもの、使っていたものもいざゴミ袋に入れて封を閉じてしまえばゴミとなってしまう......滝沢さんのお話、そして収集センターで目に留まった『分ければ資源』の標語と相まって、あたりまえであるが故に無意識のうち目を逸らしている物事の多さを痛感しました。『リデュース・リユース・リサイクル(最近はリフューズも)』そして滝沢さんが提唱するもうひとつのR『リスペクト』。誰かを思い、物を敬う気持ち、その心がベースにある行動はたとえゴミの出し方ひとつでもやさしさが伴うと思います。リスペクトのR。これはきっと、私たちがあたりまえに持たなくてはいけない0番目のRなのではないでしょうか」
教えてくれた マシンガンズ 滝沢秀一さん profile
話を聞いた taraさん profile
photograph:Miho Kakuta text:Nao Yoshida 撮影協力:中野運輸 web edit:Riho Abe
リンネル2022年2月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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