この秋も、次々と素敵な美術展が開催中。 『リンネル』本誌のアート&イベント連載ページを担当しているライター赤木真弓さんおすすめの、見逃したくないアート&イベントを厳選してご紹介します。
1. デイヴィッド・ホックニー展
■新たな表現をしつづける、ホックニーの大型個展
現代で最も革新的な画家のひとり、デイヴィッド・ホックニーの、日本では27年ぶりになる大型個展。
ホックニーは、1937年イギリス北部のブラッドフォード生まれ。ロンドンの王立美術学校で学び、60年以上にわたり、絵画、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表。アクリル絵の具を使ってプールやスプリンクラーを平面的に描いた作品や、周りにいる親しい人々をモデルに、二人の人物で構成する「ダブル・ポートレート」、拠点とする地や旅先の風景などで知られています。
「世界をどのように描くか」を追求し、iPadを取り入れるなど、作品に応じて表現手段を変える自由な作風が特徴。制作のために世界各地を旅しながら、ロンドン、ロサンゼルス、ノルマンディーにスタジオを構え、現在は主にノルマンディーで制作しています。
本展では、ホックニーの全面的な協力のもと、カリフォルニアで制作された代表作から、イースト・ヨークシャー、ノルマンディーで制作された近年の風景画まで、120点あまりの作品を展示。2011年に制作された、幅10メートル、高さ3.5メートルの油彩画《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》が、大判サイズのiPad作品12点とともに展示されるのも見どころです。
86歳を迎えてなお制作に打ち込み、自らの芸術を刷新しつづけるホックニー。なかでも、コロナ禍にiPadを駆使して描いたという、全長90メートルの新作《ノルマンディーの12か月》は圧巻。身近にあるものに目を向けて描いた、豊かな色彩感覚のダイナミックな作品からは、きっと勇気がもらえるはずです。
『デイヴィッド・ホックニー展』
開催中~11月5日(日)/東京都現代美術館 企画展示室1F・3F/10:00~18:00 ※入場は閉館30分前まで/月曜休館(ただし9/18〈月・祝〉、10/9〈月・祝〉は開館。翌9/19〈火〉、10/10〈火〉は休館)/一般¥2,300/https://www.mot-art-museum.jp/hockney
2. 『エルマーのぼうけん』展
■物語の世界を体感する、大人も子どもも楽しい展示
どうぶつ島にとらわれたりゅうの子を助けに行く、9歳の男の子エルマーの冒険物語の日本初となる展覧会。約130点の美しい絵本絵画や貴重な資料を通して、作者のルース・スタイルス・ガネットの人物像もひもときます。
また冒険家、写真家、スポーツ選手、絵本作家など、各界で活躍する100人が冒険の書を推薦する「ぼうけん図書館」も開館。
絵本の世界に入って、自分がエルマーになった気分で楽しめる展覧会。4つのシーンを中心に、光や映像、立体造作による演出で、わくわくする冒険を体験することができます。ぜひ物語の世界を体感してみて。
『エルマーのぼうけん』展
開催中~10月1日(日)/PLAY! MUSEUM/10:00~18:00 ※入場は閉館30分前まで/会期中無休/一般¥1,800/https://play2020.jp/article/elmer/
3. ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室
■制作者、教師であるアルバース日本初の回顧展
画家、デザイナー、ドイツの造形学校バウハウスの美術教師として知られるジョセフ・アルバース。授業の目的を「目を開くこと」だと述べたアルバースは、ただ知識を教えるのではなく、学生に課題を与え、手を動かして考えることを促しました。
そんなアルバースのバウハウスの学生時代のガラス作品から、家具や食器などのデザイン、絵画シリーズ〈正方形讃歌〉など驚くほど多様な作品を、彼の授業をとらえた写真・映像や、学生による作品とともに紹介します。
会場内には、アルバースの出した課題に挑戦できるワークショップ・スペースもあり、学生を夢中にさせた彼の授業を体験することができます。子どもから大人まで楽しめそう。
『ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室』
開催中~11月5日(日)/DIC川村記念美術館/9:30~17:00 ※入館は閉館30分前まで/月曜休館(ただし9/18〈月・祝〉、10/9〈月・祝〉は開館。翌9/19〈火〉、10/10〈火〉は休館)/一般¥1,800/https://kawamura-museum.dic.co.jp
4. 糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。
伝統衣装から絵本の挿絵まで、刺繍をめぐるアート
伝統的な装飾品から日用雑貨にいたるまで、さまざまな形で現代の生活に浸透している刺繍。そんな刺繍をめぐるアートを複数の角度から紹介する本展。
東欧のスロヴァキアなどの伝統的な衣装やテキスタイル、イヌイットの壁掛け、さらに絵本の挿絵として制作された作品から精緻なオートクチュール刺繍まで、多彩な作例を楽しむことができます。
『糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。』
開催中~9月18日(月・祝)/静岡県立美術館/10:00~17:30 ※入室は閉館30分前まで/月曜休館(ただし9/18〈月・祝〉は開館。/一般¥1,200/https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp
こちらもチェック!
text & edit:Mayumi Akagi
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
赤木 真弓編集者・ライター
雑誌やウェブ、書籍で、主に暮らしまわりの記事を手がける。イベントで国内外の古本や雑貨を扱う「greenpoint books & things」、旅好きライターユニット「auk」としても活動。旅にまつわる著書多数。趣味は映画、アート、K-POP鑑賞、書店巡りなど。リンネル本誌では「アート&イベント」、リンネル.jpでは「今月のTO DO LIST」「清水みさとの食いしんぼう寄り道サウナ」などの連載を担当。
Related Article おすすめ記事
-
杏さん×呉美保監督「ママ友として共感したり、刺激をもらったりしてます」/映画『私たちの声』対談 後編 杏さん×呉美保監督「ママ友として共感したり、刺激をもらったりしてます」/映画『私たちの声』対談 後編
-
うつりゆく季節の中で見つけた日々の気づき。中川たまさん書籍インタビュー うつりゆく季節の中で見つけた日々の気づき。中川たまさん書籍インタビュー
-
【はまじさんの服の思い出 vol.1】 アニエス・ベーの白いシャツ 【はまじさんの服の思い出 vol.1】 アニエス・ベーの白いシャツ
-
【乙女の東京案内:神田】 文筆家・甲斐みのりさんが好きな老舗洋菓子店 【乙女の東京案内:神田】 文筆家・甲斐みのりさんが好きな老舗洋菓子店
-
インテリアとして飾りたくなる、美しい刺しゅうの装丁も魅力! 「コーラル アンド タスク」のスペシャルブック発売 インテリアとして飾りたくなる、美しい刺しゅうの装丁も魅力! 「コーラル アンド タスク」のスペシャルブック発売
-
【ニットデザイナー三國万里子さん】 『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』書籍インタビュー 【ニットデザイナー三國万里子さん】 『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』書籍インタビュー
-
北欧好き5人が選ぶ、北欧映画。独自の視点を持つ作品が勢揃い!【私が好きな北欧映画】 北欧好き5人が選ぶ、北欧映画。独自の視点を持つ作品が勢揃い!【私が好きな北欧映画】
-
【おしゃれショップ案内:葉山】行くときっと素敵な出合いが見つかる! アートスポット『gallerykasper』 【おしゃれショップ案内:葉山】行くときっと素敵な出合いが見つかる! アートスポット『gallerykasper』
-
【今見たいアート案内:7~9月】 ガラスから写真や絵本、建築まで、幅広く楽しめる美術展4選 【今見たいアート案内:7~9月】 ガラスから写真や絵本、建築まで、幅広く楽しめる美術展4選
Latest News
CULTURE
-
秦 基博さん「さまざまな軽やかさ・奥深さに触れられた1年でした」/アルバム『HATA EXPO -The Collaboration Album-』インタビュー 秦 基博さん「さまざまな軽やかさ・奥深さに触れられた1年でした」/アルバム『HATA EXPO -The Collaboration Album-』インタビュー
-
【モネ 睡蓮のとき 開催中!】 展覧会アンバサダーの石田ゆり子さんが語る、モネの魅力 【モネ 睡蓮のとき 開催中!】 展覧会アンバサダーの石田ゆり子さんが語る、モネの魅力
-
今日はがんばったからあそこに行こう! 麻生要一郎さん新刊『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』発売 今日はがんばったからあそこに行こう! 麻生要一郎さん新刊『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』発売
リンネル最新号&付録
2025年1月号
暮らしの道具大賞2024
- 付録
- marble SUD[マーブルシュッド]
ボアバッグ&
リング付きちょうちょ柄丸ポーチ
特別価格:1,520円(税込) / 表紙:上白石萌音 /
2024年11月20日(水)発売 ※一部の地域では発売日が異なります