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新たなお月見の形を提案するプロジェクト「OTSUKIMI.」による、新しいお月見会をレポート 新たなお月見の形を提案するプロジェクト「OTSUKIMI.」による、新しいお月見会をレポート

平安時代に中国から伝わり、 今では日本でも風習と化している「お月見」。 「OTSUKIMI.」は、お月見の魅力をアップデートして、広めようと活動しているプロジェクトです。今回は、そんなOTSUKIMI.が開くお月見イベントにお邪魔してきました。

目次
新たなお月見の形を提案するプロジェクト「OTSUKIMI.」による、新しいお月見会をレポート
  1. 「OTSUKIMI.」とは?
  2. 開催地は風情豊かな街・浅草に佇む「梅と星」
  3. お月見会限定のお酒とお弁当をおともに
  4. 柴田元幸さん×小島ケイタニーラブさんによる【月にまつわる翻訳夜話】
  5. 会場では「コトゴトブックス」が選りすぐりの本を販売

OTSUKIMI.とは?

OTSUKIMI.は、現代のくらしにあった月見のあり方を提案するプロジェクト。食トレンド研究家の渥美まいこさんが2020年に活動を開始し、以来、お月見の歴史や新しい楽しみ方を提案しています。イベントで提供するお酒や食といった商品企画や、イベントなど活動はさまざま。今回は2023年9月30日、中秋の名月の翌日に開かれた浅草でのイベントの様子をちょこっとだけご紹介します。

渥美まいこさん

食ビジネスメディア「Yellowpage」の編集長。2000年以降の食文化に明るく、日本経済新聞、読売新聞、他複数メディアでの執筆や、ZIP!などの情報番組に出演している。ライフワークとして現代のお月見を提案するOTSUKIMI.プロジェクトを2020年から推進。

開催地は風情豊かな街・浅草に佇む「梅と星」

会場となった「梅と星」は、浅草・雷門のほど近くにある、“おいしい寄席”をテーマにしたごはん屋さん。炊きたての羽釜ごはんや全国を巡ってセレクトした絶品の梅干し、七福神のおみくじでおともを選べるユーモアあふれる定食が人気だとか。

お店には見たことも聞いたこともないような梅ぼしがずらり……! 梅干し好きにはたまらない光景です。梅干しのほかにも、珍しいふりかけや薬味もたくさん。ついついごはんが食べたくなる空間でした。
梅と星
TEL 03-4400-8620
東京都台東区浅草2-2-4
浅草駅(東武・都営・メトロ)から275m

[火・水・木・金]
9:00~17:00(15:00 LO)
[土・日]
9:00~17:00(16:30 LO)
[定休日] 
月曜日
梅と星 公式HPはこちら

お月見会限定のお酒とお弁当をおともに

1階で販売されていたのは15個の"満月"を詰め込んだ、梅と星特製の『お月見弁当』と、お月見をテーマにしてつくられたクラフトビール『こよいお月見』。イベントに参加しながら味わうもよし、イベント前や終了後に1階のバーで味わうもよし、といった自由なスタイルで提供されていました。

お月見弁当はさつまいもや里芋といった季節の食材などを丸い満月に見立て、15個の満月を探しながら食べるというユニークな発想が素敵なお弁当。もちろん、中には梅と星さんの羽釜ごはんと、大きい梅干しも。

一方、こよいお月見は「豊水」という梨を鳥取の農家さんから仕入れて贅沢に使用し、酸味を抑えた芳醇な甘みを感じるウィートエール。OTSUKIMI.がクラフトビール定期便「オトモニ」とコラボして作った、ここでしか味わえないビールだそうです。

柴田元幸さん×小島ケイタニーラブさんによる【月にまつわる翻訳夜話】

この日のメインイベントは、会場2階で行われる翻訳家の柴田元幸さんと、シンガーソングライターで中国文学翻訳家でもある小島ケイタニーラブさんによる【月にまつわる翻訳夜話】。柴田さんと小島さんは、朗読劇「銀河鉄道の夜」で十年にわたって共演し、2021年には、共編著『中国・アメリカ 謎SF』も出版された間柄。イベントでは伝統的なお月見にまつわる逸話から、SF作家が描く奇想天外な月夜のお話まで、ふたりが翻訳してきた作家作品の中から「月にまつわる話」を選りすぐり、新訳も加えて、語り、朗読し、そして音楽で、豊かな小説世界を表現してくれました。

ジョルジュ・メリエスの映画『月旅行世界』(1902年)を背景に映しながら、イタロ・カルヴィーノ著『レ・コスミコミケ』内一篇「月の娘たち」冒頭から始まり、自身で翻訳したスティーヴン・ミルハウザー著『魔法の夜』(白水社) から何篇か朗読する柴田さん。どれも奇しくも幻想的な、月に関する物語です。

柴田元幸
1954年、東京都出身。米文学者・東京大学名誉教授・翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベック、スティーヴ・エリクソン、レベッカ・ブラウン、バリー・ユアグロー、トマス・ピンチョン、マーク・トウェイン、ジャック・ロンドン、エドワード・ゴーリーなど翻訳多数。『生半可な學者』で講談社エッセイ賞、『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞、『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞を受賞。また2017年、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。文芸誌『MONKEY』(スイッチ・パブリッシング)、および英語版 MONKEY責任編集。訳書の近刊に、ミルハウザー『夜の声』、ギンズバーグ『吠える その他の詩』など。

小島ケイタニーラブさんは自身の楽曲『十五夜バタフライ』を歌った後、中国の児童文学作家・常怡の著を自身で翻訳した『紫禁城の秘密のともだち』シリーズ(偕成社)を朗読。美しい演奏も交えて、わくわくするような冒険譚を語ります。

小島ケイタニーラブ
音楽家・作家・翻訳家。1980年静岡県浜松市出身。シンガーソングライターとして、「毛布の日」(NHKみんなのうた)、「四街道エビバデ音頭」(千葉県150周年記念事業、宮内優里との共作)など。2011年から朗読劇「銀河鉄道の夜(with 古川日出男・管啓次郎・柴田元幸)」に出演および音楽監督を担当。著書に『こちら、苦手レスキューQQQ!』(絵・木下ようすけ、白水社)、訳書に『中国・アメリカ 謎SF』(柴田元幸との共編訳、白水社)、『紫禁城の秘密のともだち』シリーズ1巻~3巻(常怡著、おきたもも絵、偕成社)がある。現在、東京新聞・中日新聞の書評コーナー〈海外文学の森へ〉案内人を務める。

最後はおふたりの共編著『中国・アメリカ 謎SF』 (白水社)から、王諾諾「猫が夜中に集まる理由」。時には小島さんの音楽を添えて、時には息の合ったふたりの競演で、月夜に集まる猫たちの不思議な物語を紡いでくれました。


会場では「コトゴトブックス」が選りすぐりの本を販売

イベントでは「コトゴトブックス」が柴田さんと小島さんによる翻訳著を販売。コトゴトブックスは月に10タイトル程度を取り扱うオンライン書店。通常の書店と異なり、店主の木村綾子さんが厳選したタイトルに、作家と共に企画した特典を添えて約1ヶ月間をかけて販売しています。

この日、販売されている本の中には、イベントで朗読された『中国・アメリカ 謎SF』(白水社)や『魔法の夜』(白水社)のほか、柴田さんや小島さんが翻訳を手掛ける著書がいくつか。いずれも「月」や「夜」に関連した、装丁から手に取りたくなるような本ばかりでした。

OTSUKIMI.が提供する新たなお月見の形、いかがでしたしょうか? 美味しいご飯とお酒、そして古今東西から伝わる幻想的な月夜の物語……。会場を出た際に空に浮かぶ美しい満月が、より一層特別に感じられるイベントでした。「これからも定期的に、こういった活動でお月見の魅力を広めていきたいです」と主催者の渥美さん。リンネルは今後も、OTSUKIMI.に注目していきます!

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Photograph: OTSUKIMI.、liniere.jp text: liniere.jp
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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