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環境に流されず幸せをつかむためには? 大女優・高峰秀子さんの養女で『ふたり』の著者、斎藤明美さんが語る誇り高き女優の人生 環境に流されず幸せをつかむためには? 大女優・高峰秀子さんの養女で『ふたり』の著者、斎藤明美さんが語る誇り高き女優の人生

恵まれない環境、望まない仕事から救ってくれた松山さんとの出会い

晩年も一緒に外出するときは、高峰さんが夫の松山さんの服をコーディネートしていたそう。

華々しい映画スターという仕事が実は嫌いで、1日も早く辞めたかったという高峰さん。

「高峰は母親が亡くなった後、5歳で父親の妹の養女になり、養母と親戚20人近くを養うため、金銭製造機のごとく働かされていました。親の愛情もなく、自分が好きじゃない職業で、小学校も1ヶ月しか行けなかった。それを救ったのが松山。高峰は松山じゃないと幸せになれなかったと思います。

中学生の頃に高峰のファンだった松山は、助監督として映画『カルメン故郷に帰る』で初めて仕事を共にしましたが、身分が違いすぎて、高峰は松山の顔さえ覚えていない状態。だけど、その少し後に松山は高峰に交際を申し込むんです。雲の上の人に普通は言えないですよ、でもその申し込みを高峰は受けるんですよね。井上靖さんがいった、『事実は小説よりも奇なり』ってその通りだなと思います。高峰は骨董を見る目もありましたが、人間を見る目があったんです」

当初は、釣り合わないといわれていた2人の結婚。マスコミの記者が、続いたとしても3年だと賭けをしたくらいだったそう。

「高峰は自分で美人ではないし、馬鹿だと思っていたんです。私はあれだけ頭のいい人には会ったことがないですが、謙虚で自分を過小評価していました。松山を選んだのは誠実だから。こんな人には二度と会えないと思ったって、当時のインタビューで語っています。高峰は松山が考えているような難しいことはわからないから、1日に1回は楽しいことをいって笑ってもらうことを心がけているといっていました。あんなに美人の奥さんが家にいて、料理もものすごくおいしくて楽しいって、松山もどれだけ幸せだったかと思います。

結婚したとき松山は貧乏だったので、奥さんを引退させるべく500本脚本を書くなど、ものすごい仕事をしました。2人の収入がちょうど交差したのが50歳くらい。5歳から50年働き、55歳で引退しました。女優の仕事になんの未練もなかったんです。そして死が2人を分かつまで添い遂げた。だから、本当に幸せだったと思いますよ」

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