ヨシタケシンスケさん「子どもの頃の自分が言ってほしかったことを描きたい」/展覧会『ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ』インタビュー前編 ヨシタケシンスケさん「子どもの頃の自分が言ってほしかったことを描きたい」/展覧会『ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ』インタビュー前編
小さくても、色がついていなくても絵本はできる
ヨシタケさんの原画は繊細な線で描かれ、驚くほど小さいのが特徴です。
「絵も字も小さいのは、最初の本からずっと。半年間だけサラリーマンをしていた時期に、非常に辛くて、職場の人にわからないようにずっと落書きをしていたんです。ただすごく狭い職場だったので、先輩方が頻繁に後ろを通るから、人の気配を感じるとパッと隠せるように小さく描いていたら、小さくしか描けなくなっちゃって。その半年間のサラリーマン生活で得たもののひとつが、絵のサイズなんです(笑)。
普通の絵本は、大きく描いて縮小するので、拡大して本にするのはなかなか珍しいそう。さらに僕は色をつけるのがすごく苦手で、お話を考えたこともないし絵も小さいし、絵本を描ける訳がないだろうと思っていたんです。それでも“ヨシタケさんなりのやり方があると思います”と励ましてくだったおかげですね。
連載をまとめるときは自分で色をつけることもありますが、絵本は基本的にデザイナーさんに色をつけていただくことがほとんどです。デビュー作の『りんごかもしれない』で自分でつけてみたのですが、編集者の方が僕の色つけを見て、その場でボツになったんです。その瞬間に絵本作家ヨシタケシンスケが誕生した(笑)。がっかりもしたのですが、ちょっとホッとしたんですよね。絵を描くのは好きなのですが、色をつけるのはそんなに楽しくなくて(笑)。
自分で色もつけていないのに絵本作家と言っていいのかとも思うのですが、そういう人もいていいし、40歳で絵本作家デビューするおじさんがいてもいい。表現の幅の広さみたいなものの一つに、珍しい枠としていてもいいはずだと、日々自分に言い聞かせています」
日々のスケッチは、たくさん描く日もあれば、1か月何も描かないこともあるそう。
「思ったこと、あったことを描いているのですが、仕事ではなくリハビリのような感覚でやっていることなので、仕事がなくなっても多分やり続けます。家族とすごくケンカしたとか、仕事が忙しいときの避難先として機能しています。満ち足りているときはこんなことをやる必要がないんですよね(笑)。ここ数年は老眼で眼鏡がないと絵が描けなくなったので、言葉はスマホにメモだけ取り、後で眼鏡をかけて描き直すようにしています。
描くことで、“あぁ俺はこういうことを思っているんだな、こういうことが好きなんだな”とわかったり、記憶が強化されるところもあるので、基本的にはあまり見返したりはしないのですが、ここから絵本のネタになったりすることがよくあって、助かっています」
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