大切に着たいシーズンごとの服を、お手入れしてからしまう、それが“しまい洗い”。クリーニングではなく、家で洗う“しまい洗い”こそ、冬物はきれいになります。今回は洗濯のプロである洗濯ブラザーズに正しい洗濯法と干し方を教えていただきました。
冬物衣類も家で洗える! クリーニングに持って行く前にチェック。
ウール、カシミア、アンゴラ、ダウン……。クリーニングに出して衣替えと思いがちですが、実は9割の洗濯物が家で洗えます。「ドライクリーニングは石油系の溶剤を使う服の生地を傷めない洗い方です。でも、実は汗の汚れやにおいなどはドライクリーニングではなく、水洗いでしか落ちないのです。特殊な生地以外は、家庭で水洗いしましょう」と、洗濯ブラザーズの茂木さん。ニットやダウンなどをすべてクリーニングに出していると、コストもかかります。形崩れが気になるコート・ジャケットなどを除いては、家で洗ってOK。
家で洗ってはいけないのは、縮んだり、硬くなったりする水に弱い素材、シワやプリーツの、加工を再現しにくいものなどです。
<基本の洗濯>普段洗いのやり方
洗濯機の使い方や手洗いのしかたにもコツがあり、 日常の洗濯でも汚れ落ちや衣類の傷み方が変わります。ちゃんとしまい洗いするためには、 まずは普段の洗濯環境を整えることから。 洗濯機の使い方も見直しましょう。
STEP 1:準備
◆洗濯物は通気性のいいカゴに
洗濯物を洗うまで洗濯機に入れておくのは NG。においのもとになる雑菌が、洗濯槽の中で繁殖してしまいます。 通気性のよいメッシュなどの洗濯カゴに入れましょう。
◆汚れが気になる場所に“プレウォッシュ”
プレウォッシュとは、繊維の奥に残っている皮脂汚れを浮かせるためのプロセス。手作りしたプレウォッシュ液を汚れの部分にスプレーして使います。洗濯機や手洗いの本洗いのときに、汚れが落ちます。
1.プレウォッシュ液を、衿、袖など汚れがつきやすいところに3〜4回スプレーします。
2.スプレーした部分を洗濯ブラシでトントンとたたき 、汚れを浮かせます。10分ほど置いてから洗濯機に入れます。
◆普段洗いには弱アルカリ性の液体洗剤がおすすめ
油性の汚れにも強く、洗浄力の高いのが弱アルカリ性の洗剤。肌着や下着など汚れがつきやすいものや普段着は、弱アルカリ性の液体洗剤で洗うといいでしょう。
また、生乾き臭などの原因は、洗濯槽の奥に潜むモラクセラ菌。秋冬は3か月に1回、春夏には月に1回は洗濯槽の洗浄を行いましょう。
STEP 2:本洗い
洗濯機も、全自動コースにお任せでは、充分な力を発揮できません。 ポイントは、衣類を入れるタイミングと設定時間です。洗濯機の賢い使い方をマスターしましょう。
◆汚れは「洗い」ではなく「すすぎ」で落ちる
洗い、すすぎ、脱水のうち、汚れが落ちるのは実は洗いではなくすすぎのプロセスです。洗剤の界面活性剤で浮いた汚れが、すすぎの水の力で引きはがされるのです。
◆洗濯機の水量は多めが正解
洗いやすすぎで水が不足していると、離れた汚れがまた繊維に戻ることが。日本の洗濯機は節水に対応しているので、水量は基本設定より1段上げるか、常に満水状態で。
◆全自動→マニュアル設定で洗濯レベルがアップ
洗濯機はマニュアルモードを活用。ドラム式なら洗いを長めの20分、すすぎは水量が多めで2回、脱水は短めの3〜5分の設定にすると汚れ落ちとシワ対策が完璧に。脱水時間を短くするだけで、シワ予防になり、生地の傷みも少なくなります。タオルのパイルが抜けてごわごわになるのも防止。
そもそもの水量がたくさん入らないドラム式は、汚れ落ちに弱点があります。 洗い時間を長くすることで、そのデメリットを解消。
◆洗濯機に水→洗剤→衣類の順番で入れる
1.洗濯槽が空の状態で、水の量を最大に設定し、 スタートボタンを押します。
2.水がたまったら一時停止して、直接洗剤を入れます。再度スタートボタンを押して2〜3分空回しをし、洗剤を泡立てます。
3.最後に洗濯物を入れます。 泡立ってから入れることで、水が衣類に直接ふりかかることによるダメージがおさえられます。
衣類がすべて水につかった状態で、こぶしを衣類の上に置いて、手首まで水がくるくらいがちょうどよい水量の目安です。
【ドラム式の場合は?】
ドラム式は先に水をためることができないので、事前に水と洗剤を1:1の割合でペットボトルなどに入れ、よく振って混ぜます。それを注入口に入れればOK。泡洗浄コースがあればそれを使いましょう。
STEP 3:乾燥・仕上げ
服を長持ちさせるには普段洗いも「部屋干し」を。天気に関係なく、大切な衣類は部屋干しするのがおすすめ。紫外線の光は衣類の色あせやダメージの原因になります。
速く乾かせばにおわない
衣類に水分が残っている状態が続き、落ち切らなかったモラクセラ菌が繁殖するのが生乾き臭。素早く乾かせば、においはしません。
狭い部屋で高い場所に干す
湿気は部屋の下のほうにたまるので、なるべく高い場所に干すこと。 広い部屋よりは、除湿しやすい狭い部屋で干すのがベター。
除湿機と扇風機を使って
扇風機の風を水分がたまりやすい下のほうから当てると、乾きが速くなります。除湿機も同時に使うと、乾燥時間を短縮できます。
衣類のすきまをあけて
◆空気に触れる面積をできるだけ多くする
教えてくれた 洗濯ブラザーズ profile
photograph:Jun Fujiwara text:Ema Tanaka illustration:Kayo Yamaguchi web edit:Riho Abe
リンネル2020年4月号より
※画像・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください
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