CULTURE

【今見たいアート案内:9~11月】 この秋見逃せない美術展4選 【今見たいアート案内:9~11月】 この秋見逃せない美術展4選

赤木 真弓

この秋も、次々と素敵な美術展が開催中。 『リンネル』本誌のアート&イベント連載ページを担当しているライター赤木真弓さんおすすめの、見逃したくないアート&イベントを厳選してご紹介します。

目次
【今見たいアート案内:9~11月】 この秋見逃せない美術展4選
  1. デイヴィッド・ホックニー展
  2. 『エルマーのぼうけん』展
  3. ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室
  4. 糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。

1. デイヴィッド・ホックニー展

■新たな表現をしつづける、ホックニーの大型個展

デイヴィッド・ホックニー《クラーク夫妻とパーシー》1970-71年 テート Ⓒ David Hockney
左から、デイヴィッド・ホックニー《自画像、2021年12月10日》 2021年 作家蔵 Ⓒ David Hockney Photo: Jonathan Wilkinson、デイヴィッド・ホックニー《スプリンクラー》 1967年 東京都現代美術館 Ⓒ David Hockney

現代で最も革新的な画家のひとり、デイヴィッド・ホックニーの、日本では27年ぶりになる大型個展。

ホックニーは、1937年イギリス北部のブラッドフォード生まれ。ロンドンの王立美術学校で学び、60年以上にわたり、絵画、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表。アクリル絵の具を使ってプールやスプリンクラーを平面的に描いた作品や、周りにいる親しい人々をモデルに、二人の人物で構成する「ダブル・ポートレート」、拠点とする地や旅先の風景などで知られています。

「世界をどのように描くか」を追求し、iPadを取り入れるなど、作品に応じて表現手段を変える自由な作風が特徴。制作のために世界各地を旅しながら、ロンドン、ロサンゼルス、ノルマンディーにスタジオを構え、現在は主にノルマンディーで制作しています。

デイヴィッド・ホックニー 《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》 2011年 ポンピドゥー・センター Ⓒ David Hockney Photo: Richard Schmidt

本展では、ホックニーの全面的な協力のもと、カリフォルニアで制作された代表作から、イースト・ヨークシャー、ノルマンディーで制作された近年の風景画まで、120点あまりの作品を展示。2011年に制作された、幅10メートル、高さ3.5メートルの油彩画《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》が、大判サイズのiPad作品12点とともに展示されるのも見どころです。

デイヴィッド・ホックニー《2022年6月25日、(額に入った)花を見る》 2022年 作家蔵 Ⓒ David Hockney assisted by Jonathan Wilkinson

86歳を迎えてなお制作に打ち込み、自らの芸術を刷新しつづけるホックニー。なかでも、コロナ禍にiPadを駆使して描いたという、全長90メートルの新作《ノルマンディーの12か月》は圧巻。身近にあるものに目を向けて描いた、豊かな色彩感覚のダイナミックな作品からは、きっと勇気がもらえるはずです。


デイヴィッド・ホックニー展』

 

開催中~11月5日(日)/東京都現代美術館 企画展示室1F・3F/10:00~18:00 ※入場は閉館30分前まで/月曜休館(ただし9/18〈月・祝〉、10/9〈月・祝〉は開館。翌9/19〈火〉、10/10〈火〉は休館)/一般¥2,300/https://www.mot-art-museum.jp/hockney

2. 『エルマーのぼうけん』展

■物語の世界を体感する、大人も子どもも楽しい展示

『エルマーと16ぴきのりゅう』原画 1951年 © Dragon Trilogy Irrevocable Trust/Kerlan Collection of Children's Literature, University of Minnesota Libraries, USA.

どうぶつ島にとらわれたりゅうの子を助けに行く、9歳の男の子エルマーの冒険物語の日本初となる展覧会。約130点の美しい絵本絵画や貴重な資料を通して、作者のルース・スタイルス・ガネットの人物像もひもときます。

『エルマーと16ぴきのりゅう』原画 1951年 © Dragon Trilogy Irrevocable Trust/Kerlan Collection of Children's Literature, University of Minnesota Libraries, USA.
フェルトでできたりゅうのぬいぐるみ 1940年代

また冒険家、写真家、スポーツ選手、絵本作家など、各界で活躍する100人が冒険の書を推薦する「ぼうけん図書館」も開館。

絵本の世界に入って、自分がエルマーになった気分で楽しめる展覧会。4つのシーンを中心に、光や映像、立体造作による演出で、わくわくする冒険を体験することができます。ぜひ物語の世界を体感してみて。


『エルマーのぼうけん』展

 

開催中~10月1日(日)/PLAY! MUSEUM/10:00~18:00 ※入場は閉館30分前まで/会期中無休/一般¥1,800/https://play2020.jp/article/elmer/

3. ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室

■制作者、教師であるアルバース日本初の回顧展

左から、イェール大学で色彩の授業を行うアルバースと学生 1952年 撮影者不詳 ジョセフ&アニ・アルバース財団 Courtesy of the Josef and Anni Albers Foundation、ジョセフ・アルバース《破片の入ったグリッド絵画》1921年頃 ジョセフ&アニ・アルバース財団 © The Josef and Anni Albers Foundation / JASPAR, Tokyo, 2023 G3217 Photo: Tim Nighswander/Imaging4Art

画家、デザイナー、ドイツの造形学校バウハウスの美術教師として知られるジョセフ・アルバース。授業の目的を「目を開くこと」だと述べたアルバースは、ただ知識を教えるのではなく、学生に課題を与え、手を動かして考えることを促しました。

ジョセフ・アルバース スタッキング・テーブル 1927年頃 ジョセフ&アニ・アルバース財団 © The Josef and Anni Albers Foundation / JASPAR, Tokyo, 2023 G3217 Photo: Tim Nighswander/Imaging4Art

そんなアルバースのバウハウスの学生時代のガラス作品から、家具や食器などのデザイン、絵画シリーズ〈正方形讃歌〉など驚くほど多様な作品を、彼の授業をとらえた写真・映像や、学生による作品とともに紹介します。

会場内には、アルバースの出した課題に挑戦できるワークショップ・スペースもあり、学生を夢中にさせた彼の授業を体験することができます。子どもから大人まで楽しめそう。

左から、ジョセフ・アルバース《プリズムのような II》1936年 ジョセフ&アニ・アルバース財団 © The Josef and Anni Albers Foundation / JASPAR, Tokyo, 2023 G3217 Photo: Tim Nighswander/Imaging4Art、ジョセフ・アルバース《正方形讃歌のための習作:針葉樹の中心》1961年 公益財団法人アルカンシエール美術財団 / 原美術館コレクション © The Josef and Anni Albers Foundation / JASPAR, Tokyo, 2023 G3217

『ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室』

 

開催中~11月5日(日)/DIC川村記念美術館/9:30~17:00 ※入館は閉館30分前まで/月曜休館(ただし9/18〈月・祝〉、10/9〈月・祝〉は開館。翌9/19〈火〉、10/10〈火〉は休館)/一般¥1,800/https://kawamura-museum.dic.co.jp

4. 糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。

伝統衣装から絵本の挿絵まで、刺繍をめぐるアート

《カロタセグ地方ハンガリー人スカーフ》(部分) 20世紀半ば 谷崎聖子、シェレシュ・バーリント蔵

伝統的な装飾品から日用雑貨にいたるまで、さまざまな形で現代の生活に浸透している刺繍。そんな刺繍をめぐるアートを複数の角度から紹介する本展。

東欧のスロヴァキアなどの伝統的な衣装やテキスタイル、イヌイットの壁掛け、さらに絵本の挿絵として制作された作品から精緻なオートクチュール刺繍まで、多彩な作例を楽しむことができます。

左から、エヴァ・ヴォルフォヴァー《『コーヒーの泡から生まれたこねこ』絵本原画》作家蔵、《カロタセグ地方ハンガリー人麻製タペストリー》谷崎聖子、シェレシュ・バーリント蔵
エヴァ・ブラーズドヴァー(刺繍) パヴェル・ブラーズダ(原案) 《城》 個人蔵

『糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。』

 

開催中~9月18日(月・祝)/静岡県立美術館/10:00~17:30 ※入室は閉館30分前まで/月曜休館(ただし9/18〈月・祝〉は開館。/一般¥1,200/https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp

こちらもチェック!

text & edit:Mayumi Akagi
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

編集者・ライター

  • Instagram

雑誌やウェブ、書籍で、主に暮らしまわりの記事を手がける。イベントで国内外の古本や雑貨を扱う「greenpoint books & things」、旅好きライターユニット「auk」としても活動。旅にまつわる著書多数。趣味は映画、アート、K-POP鑑賞、書店巡りなど。リンネル本誌では「アート&イベント」、リンネル.jpでは「今月のTO DO LIST」「清水みさとの食いしんぼう寄り道サウナ」などの連載を担当。

赤木 真弓

Related Article
おすすめ記事

リンネル最新号&付録

  • リンネル 最新号
  • リンネル 最新号
  • リンネル 最新号
  • リンネル 最新号
  • リンネル 最新号
  • リンネル 最新号

2025年1月号

暮らしの道具大賞2024

付録
marble SUD[マーブルシュッド]
ボアバッグ&
リング付きちょうちょ柄丸ポーチ

特別価格:1,520円(税込) / 表紙:上白石萌音 /
2024年11月20日(水)発売 ※一部の地域では発売日が異なります

VIEW MORE