CULTURE

ヨシタケシンスケさん「子どもの頃の自分が言ってほしかったことを描きたい」/展覧会『ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ』インタビュー前編 ヨシタケシンスケさん「子どもの頃の自分が言ってほしかったことを描きたい」/展覧会『ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ』インタビュー前編

絵本では、自分が言われて嬉しいことを描きたい

ちょっとしたスペースに、学校で使われていた机を置いて

ヨシタケさんの視点は、いつも物語の中心になりがちな人ではない人に向けられていて、やさしさを感じます。

「それは僕がやさしくしてほしいからなんですよね。絵本の中で言っていることも、子どもの頃の自分が言ってほしかったこと。子どもの頃の疑問の答えになっているか、大人になった今でも知りたいことの着地点になっているかどうかを考えながら作っています。

僕自身が人一倍常識を気にする子どもで、普通はこんなことをしないんじゃないか、こういうことをしたら怒られるんじゃないか、そんなことばかり考えていたんです。だから嫌われたっていいんだよとか、好きなように生きればいいんだよと言われたときに、イラッとする気持ちがすごくよくわかるんです。それができれば苦労しない、できないから困ってるんだよって。だから、できない側としてこういうふうに言ってもらえると安心する、こう言ってもらった方が嬉しいという感じで、自分にとって必要な考え方を自主開発しているんです。自分用の松葉杖を自分で作るような感覚というか、自分にとって歩きやすくなる道具を作って、ほかの方も体に合うようであればどうぞみたいな感覚があります。

自分のようなできなさや弱さを抱えている人の気持ちはわかるので、自分はこういうふうに言われたら嬉しいんだけどな、というものを作っているだけなんです。選択肢はたくさんあった方がいいと思うので、元気がないときはこういうものもありますよ、くらいの気持ちで、選択肢が増えていくといいなという思いです」

親から子どもには言いづらいこと、言ってあげられないことをカバーしてくれるヨシタケさんの絵本は、今の時代に必要なものだと感じます。

「自分も子育てをしていて一番わかったことは、親だからこそできることがたくさんある半面、親だからこそ言えないこと、親だからこそわかってもらえないこと、親が言うから採用されない意見がたくさんあるんですよね。それは学校の先生も一緒で、親や先生は例えば“夢って叶わないよ”って言っちゃいけないんですよ(笑)。でも実際は叶わない夢もあるわけで、そういう世の中の本当の姿を子どもたちはいつ何から学ぶかと考えると、それが絵本や漫画、映画だったりする。

絵本作家はそういう身も蓋もないことを言ってもいい、親や先生が言えないことを言っていい位置にいて、教科書では言えないことを言う義務もあるのかなと。親や先生が思っていても言えないことや、逆に思ってもいないことをコンテンツの中に込めて、選択肢を増やすことが、絵本作家としての仕事のひとつなんだろうなと思います」


後編では、開催中の展覧会『ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ』の見どころについて、ご紹介します。

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