CULTURE
:上白石萌音さんのアートの楽しみ方と、おうち時間の過ごし方「印象派にはロックな精神を感じて、そこもとても好きです」 【「印象派—室内をめぐる物語」開催中!】
CULTURE
:
移ろう光や大気をとらえた風景画で知られる印象派。マネ、ドガ、モネ、ルノワール、セザンヌなど、印象派の画家たちが描いた室内をテーマとする作品に焦点を当て、パリ・オルセー美術館所蔵の傑作が一堂に会する「オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語」が、東京・上野の国立西洋美術館にて開催中です。
展覧会アンバサダーと音声ガイドナビゲーターを務めた、俳優・歌手の上白石萌音さんに、好きなアートの話から家での過ごし方など、お話をたっぷり伺いました。
パリ・オルセー美術館から、傑作が来日

1900年に建てられた駅舎を利用
オルセー美術館(内観) © Musée d’Orsay_Sophie Crép
印象派は、発展していく街の様子や自然の風景、季節や時間で変化していく光や空気を感じられるような絵が特徴。外の景色を描いたことで知られる印象派の画家たちが、室内をどうとらえたのかをテーマにした本展。
「印象派の殿堂」ともいわれる、パリ・オルセー美術館から日本初公開作品を含む、印象派コレクション約70点が来日しています。
「オルセー美術館に行ったことはまだないのですが、お土産でいただいたノートをずっと使っていて。何かご縁を感じています」と話すのは、本展のアンバサダーと音声ガイドナビゲーターを務めた上白石さん。
「印象派」の魅力
普段からよく美術館に通うという、上白石さんは、もともと印象派の絵が好きだったそう。
「父が、私が生まれたときにモネの絵のレプリカを買ってくれたんです。幼い子どもが描かれている絵で、父が私を重ねてくれたのかなと思いました。中学生くらいになって、それがモネの絵だと気づいて。名前も同じなので親近感を覚えましたし、シンプルにモネの描く絵がとても好きだなと感じました」

印象派が好きな理由も、アートへの造詣の深い上白石さんならでは。
「印象派は、《印象・日の出》 というモネの作品が発端となり、それまでのカチッとした絵とは違ってとらえどころのない絵を、当時は“印象しか描かれていない”と揶揄されたところから、“私にはこう見えるんだ”と主張して印象派展という展覧会を開催したんです。見た目には穏やかでやさしい絵なのですが、そのなかにロックな精神を感じて、とても好きです」

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ピアノを弾く少女たち》 1892年 油彩/カンヴァス オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

室内をテーマにした本展を、新しいと感じたという上白石さん。
「印象派は屋外を描いた絵が多いなか、家のなかの人々の生活を切り取ったり、静物画だったり。外の変化をとらえている人たちだからこそ描ける室内があるんだというのが、かなりおもしろいと思いました。さまざまなエッセンスを潜ませていたり、遊び心があったりするのも素敵ですし、空気そのものを閉じこめるような印象派だから、当時の人たちの生活そのものが伝わってくる感じがします」
上白石さんがお気に入りの作品は?

上白石さんが最も観るのを楽しみにしていたというのが、モネ 《アパルトマンの一隅》 。モネが家族とともに暮らしていた、セーヌ川河畔のアルジャントゥイユの住まいを描いています。
「モネが息子のジャンを描いた作品ですが、ほの暗い室内の奥にある窓から淡い光が差し込んでいる、とてもきれいで静かな作品。光をとらえるのが得意だったモネが描く、彼ならではの室内画という感じがして、ずっと楽しみにしていました。アルベール・ベナールの《ある家族》も、表情が素敵。
印象派の絵はあえて筆致を残した作品が多くて、たくさん筆を重ねて塗った形跡や、勢いにのって筆が走った跡を見ると、“本当に画家が描いたんだ!”と感じられて楽しいです。特にモネは、筆が見える感じがして好きなんです」
リンネル読者へのおすすめ!
描かれている服やインテリアも見どころ

上白石さんが印象派の作品を観るときに注目しているのは、洋服なのだそう。
「印象派の絵画のなかで描かれる洋服は、シンプルだけどこだわったものが多く、合わせや、帽子やアクセサリーなどの小物が素敵。質感を伝えるようなタッチで描かれています。服の質感、ドレープや透けた感じも素敵なんですよね。
家具もかわいくて。花柄の壁やカーテンなど、細かな描写が気になって、どうしても観るのに時間がかかってしまうんです。
また、《エドゥアール・ドゥバ=ポンサン夫人》 はジャポニズム、浮世絵の影響で、こういういった構図で鶴が描かれていて。絵のなかの日本を探すのも楽しくておすすめです」


「遠い昔のものとして観るのも感慨深いと思いますが、同じ人の生活として観て、自分ごとにしてみると楽しい。自分がこの服を着るなら、この部屋で過ごすなら、このクッションはどんな感じだろうと想像してみると、一気に絵画が身近に感じられる気がします」
上白石さんのおうち時間

女性たちが読書や針仕事をする姿や、くつろぐ様子が多く描かれている印象派の室内画。上白石さんの家での過ごし方は?
「読書がすごく好きなので、暇さえあれば本を読んでいます。家で過ごすのが大好きです。部屋はあまり広くないので、重心の低い家具を多くしたり、色味を合わせて、少しでも広く感じられるようにしています。お気に入りのスペースはハンモック。読書専用のライトを置いて、快適に読書をしています」

4、5冊を並行して読むという読書家の上白石さん。
「その日によって読みたい本を読んでいます。海外の美術館に行く前には、アートの本を読んでから行くことも。
最近、ちょっと宗教画にも興味が出てきて。前にイタリア旅行をしたとき、フィレンツェのウフィツィ美術館やローマのバチカン美術館にも行って、どうせならギリシャ神話の知識があった方が楽しいと聞いて、一緒に行った友人が貸してくれた本を旅の間ずっと読んでいました。
なんの知識もなく、本当に感覚だけで絵を観ることもすごく好きですが、事前に知識を入れて、より深くアートを楽しむことも好き。音声ガイドもそういうことだと思うのですが、絵から受ける印象が変わり、より記憶に残ると思います」

おうち時間を大切にしているという上白石さんは、家事も好きなのだとか。
「掃除はイヤイヤしていますが、洗濯やお皿洗いは好き。できるだけ朝起きたときに“いい部屋だな”と思いたいので、夜のうちにちゃんときれいにしてから寝るようにしています。
つい仕事のことばかり考えてしまうので、生活をきちんとできるようにしておきたいなと思っています。家のなかは緩められる空間に。リビングのテーブルだけはきれいにしておいて、いつでも帰りたい家にしておく。でも確立できたのはつい最近なんです」
読者へのメッセージ

開催情報

オルセー美術館所蔵
印象派ー室内をめぐる物語
約10年ぶりに、日本初公開作品も含む、パリ・オルセー美術館所蔵の傑作約70点が来日。国内外の重要作品も加えて、室内をめぐる印象派の画家たちの関心のありかや表現上の挑戦をたどります。
開催中~2026年2月15日(日)
会場:国立西洋美術館
9:30~17:30 ※金・土曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで
月曜、11月25日(火)、12月28日(日)~2026年1月1日(木・祝)、1月13日(火)休館(ただし11月24日〈月・休〉、1月12日〈月・祝〉、2月9日〈月〉は開館)
観覧料:一般¥2,300、大学生¥1,400、高校生¥1,000
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.orsay2025.jp

俳優・歌手。1998年1月27日生まれ。主な出演作に映画『君の名は。』『夜明けのすべて』、ドラマ『カムカムエヴリバディ』、舞台『千と千尋の神隠し』など。歌手、著作家、ナレーターとしても活動している。
こちらもチェック!
photograph:Chihaya Kaminokawa styling :Junko Okamoto hair & make-up :Tomoko Tominaga text & edit:Mayumi Akagi
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
(衣装クレジット)
トップス¥29,700/ル フィル(ル フィル ニュウマン 新宿店)、スカート¥108,900/ディウカ(ドレスアンレーヴ)、チャーム¥45,100、イヤリング(片耳)¥27,500/ともにアガット(アガット)
おすすめ記事 RELATED ARTICLES
Recommend
SNAPRanking
DAILY
/
WEEKLY








































「私は美術館に行くのがすごく好きですが、絵画の前に立つたびに、画家が一心不乱に向かったそのキャンバスの前に、今私は立っていると感動します。今回は印象派の室内を巡る物語がテーマ。当時の室内の静かな移ろいや、暮らす人々の息遣い、暮らしの気配を感じられると思うので、ぜひ足を運んでみてみてくださいね」