FOOD
:東京・下北沢の喫茶店「喫茶 一房」のフルーツサンドとクリームソーダ:空想喫茶トラノコクさんのあの店この店、喫茶訪問日記 #14
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いつも素敵な喫茶店やカフェにアンテナを張り巡らせている空想喫茶トラノコクさんが、気になるあの店この店を巡る連載。
14回目は、東京・下北沢にある「喫茶 一房」。葡萄を思わせる色合いの店内で、旬の果物を贅沢に使った美しいフルーツサンドと、つぶらな瞳の愛らしい犬クッキーがのったクリームソーダをいただきました。
空想喫茶トラノコクさん
クリエイター
空想喫茶トラノコク

「こんな居場所があったらいいな」という会話から生まれた架空の喫茶店。SNSで素敵な喫茶店の紹介や、喫茶店レシピの発信を行う。著書『至福のチーズケーキ本』(エムディエヌコーポレーション)が発売中。

東京・下北沢の喫茶店
「喫茶 一房」

音楽に演劇、古着、映画。さまざまな文化が小さな街の中で隣り合ってきた下北沢は、駅周辺の景色が新しくなった今も、一本路地へ入れば個人の営む小さな店に出会う。
整えられていく街並みと、歩くたびに個性とすれ違う自由な空気。
その両方が混ざっているところに、下北沢らしさがあるように思う。
そんな街の一角、建物の2階にあるのが喫茶 一房。
shop information
東京都世田谷区北沢2-21-26 2F
アクセス:小田急線 下北沢駅 南西口から徒歩2分、京王井の頭線 下北沢駅 西口から徒歩4分
営業時間:13:00〜20:00(L.O.19:30)
定休日:火曜
※営業時間やフルーツサンドの内容は時期により変更となる場合があります。お出かけ前に店舗の公式Instagram等で最新情報をご確認ください
一粒が集まって、ひとつの房に
この場所は、もともと「スナック一房」として始まった。
店主は以前、フルーツサンド専門店の運営に携わり、その後下北沢で人と人が自然につながる場所をつくりたいと「一房」を始めたという。
店名の由来は葡萄。
一粒一粒は違っていても、連なればひとつの房になる。
その姿を、この街で行き交う人たちに重ねてみる。それだけで「一房」という名前が、なんだかとても粋に思えた。
夜はスナック、昼は喫茶店。
空間の記憶をそっと受け継いでいるからか、どこか優しく、少し大人びた不思議な安心感が店内に漂っている。

店内を見渡すと葡萄を思わせる色が目に留まる
店内を見渡すと、店名の由来は色にも現れている。
淡い紫色の椅子と、葡萄の葉を思わせる緑の壁。
木のカウンターや棚には、大事に長く使い込まれた質感も残っている。
華やかに世界観を押し出すのとは違って、「ああ、そういうことか」とふと気づくくらいの距離も心地がいい。
さらに目を凝らせば、昔懐かしいキャラクターや玩具があちこちに潜んでいる。

ふと棚に目をやると、『クレヨンしんちゃん』に登場するカンタムロボの姿が。
どこか懐かしいおもちゃとふと目が合う瞬間、子どもの頃の記憶がそっと蘇り、心が温かくなる。

ここを見てと大きく主張するものではない。それでも、視線を動かすたびに何かが見つかる。
そして、その感覚はお店の料理にもよく表れているなと感じる。
季節の旬を閉じ込めた
贅沢なフルーツサンド
葡萄のみずみずしさと
白餡×白ワインのハーモニー
この日注文したのは、シャインマスカットとサンシャインレッドに白餡を合わせた季節のフルーツサンド。
パンとクリームの間から、緑と淡い赤紫の葡萄が丸く美しい断面をのぞかせる。

上には小さくクリームが絞られ、ひと切れずつ美しく仕上げられている。
頬張った瞬間に感じるのは、葡萄のみずみずしさ。
果汁がじゅわりと弾ける。
クリームとなめらかな白餡の甘さが重なり、ほのかな塩味が最後を整えていく。

餡やクリーム、香りまで組み合わせる遊び心がいくつも潜んでいる
白餡には、隠し味にほんのり白ワインを。
果実の風味を引き立てる仕掛けが隠されている。

いちじくを引き立てる、
自家製スパイスジャムの隠し味

もうひとつ、この日のメニューに並んでいたのが、いちじくのフルーツサンド。
ねっとりとした食感のいちじくに自家製のジャムを合わせ、そのジャムにはバルサミコ酢とスパイスが加えられているそう。
甘さだけではない奥行きのある味わいが、いちじくのおいしさを引き出している。

食べるのが惜しくなる、
愛らしいクリームソーダ
ドリンクで注文したのはクリームソーダ。
鮮やかな緑のソーダの中に一枚のレモン。
その上にバニラアイスが乗り、頂上では赤いさくらんぼがツヤッと輝いている。
そして、アイスの横からこちらを覗くオリジナルの犬クッキー。
つぶらな瞳でこちらを見つめている。

食べるのをためらうぐらい、いとおしい。
まちと人々の距離を近づけてくれる場所
葡萄はどうやら、実が寄り集まって房になるわけではない。
ひとつの軸から伸びた小さな花が、それぞれに実を結び、一粒ずつ育っていく。
古着を愛する人も、音楽を鳴らす人も、店を営む人も、今日初めてこの街を訪れた人も。
同じものになるのではなく、それぞれがこの街の今につながっている。
下北沢にはこれまで何度も訪れてきた。
好きな店もあれば、立ち寄る場所もある。
それでも、街とはどこか少しだけ距離が残っていたように思う。
また来たいと思える場所がひとつ増えるだけで、心の距離は変わる。
一房は、そんなふうに街と私の間を近づけてくれた店でした。
おいしいものと懐かしいものに囲まれて、つい長居したくなります!

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photograph & illustration & text : toranocoku
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旬のフルーツサンドを目当てに、下北沢の「喫茶 一房」へ!