LIFESTYLE
:【吉田羊さんの着物と12のアソビゴコロ】 第10回 “バランス”とアソブ
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:アンティーク着物を愛する吉田羊さんが、四季折々に着物のおしゃれを楽しむ様子を撮り尽くしたフォトエッセイ『ヒツジヒツジ』(宝島社)を発売。その至極の着こなしの数々から、「着物で遊ぶ」をテーマに切り取ったアソビゴコロあふれる着物語りを12か月にわたって綴っていきます。第10回で遊ぶのは「バランス」。
こんにちは、吉田羊です。
着物スタイルだからこその「アソビゴコロ」をお伝えする連載です。
今回のテーマはバランス。
主役の着物に対して、合わせる小物の色柄で足し算引き算。
自分の中で「ここ!」と思えるバランスを、調整するのが楽しいのです。
キメすぎていないバランスが好き
着物でも洋服でも、鏡の前に自分を映しながら、「あーでもない、こーでもない」と、自分がしっくりくる調和を考えることこそ、おしゃれの醍醐味。同じ色味で合わせたり、色調を統一したり、全体に均一なバランスも素敵ですが、私はどこかに「外し」が感じられるコーディネートが好きです。特にアンティーク着物は派手な色柄が多いので、引き算でバランスを取るのが肝。ヤジロベエを思い浮かべながら、「柄が過多になっていないか」「色が偏っていないか」と着物に小物を合わせていく。これも手数の多い着物ならではの楽しみです。
和装の美しいバランスの鍵は「丈」


着物は直線的なシルエットで着るのが美しさの基本。裄丈足らずで腕が見えてしまったり、身丈足らずで足が見えてしまうとバランスを欠いたような印象になってしまいます。
この着物はまさに裄丈が足りなかったのですが、つけ袖をつけることでバランスを取りました。しかも洋装の雰囲気がアクセントに。秋冬は中にタートルネックを着て、袖丈のバランスを調整することもあります。着丈が足りない場合は、下にスカートを合わせたり、いっそ短めに着付けてブーツをはいて、直線的なラインを強調するのも手。
基調色は3色以下に絞ることも、バランス調整のマイルール。このコーディネートはアイスミント、青、白を基調に考えて、帯、バッグ、帯留めを選びました。
半衿は重要なバランサー

水彩で描いた洋画の雰囲気漂う格子柄の着物。総柄なので半衿に無地を選びがちですが、着物と同じく格子柄を選んだことでバランスが整いました。どこか不揃いな柄の着物に対して、左右上下に整列した柄の半衿なので引き締まって見えるんです。顔写りや顔の印象を変える半衿は、実は一番重要なバランサー。


着物や帯の柄に合わせるか、色に合わせるか、はたまた反対色を選ぶかによって、シックにも華やかにもお茶目にもなる。今回は着物の柄の茶褐色に合わせましたが、グリーン系を選んでいたら、全く印象は変わるはず。
帯は洋画のイメージから、西洋の港町を思わせる柄に。帯留めは帆船柄を選びました。帽子、クラッチ、シューズで雰囲気を統一。合わせるところは合わせ、どこかは外す。そういうメリハリが好きなんです。
主役を絞った引き算コーディネート

お正月の銀座を晴れやかな気持ちで歩く、をテーマにしたコーディネート。付け下げの唐獅子の存在感を引き立てるために、色を限りなく抑えました。大人の街、銀座のイメージで、金糸が使われた格子柄の帯を選び、全体を格上げ。華やかなお正月に対してシックな装いにしたことも、「外し」のバランスを意識してのこと。
アンティーク着物は賑やかな柄の着物が多く、遊び心をくすぐられて盛り気味になりがちですが、俯瞰で見て引き算するのが大切です。足しすぎると、ポイントがぼやけたコーディネートに。主役をしっかり決めてバランスを取っていくと、大人っぽく決まりますよ。

「今日はこの色が着たかった」「この柄で相手への気持ちを表したい」「祝いの日を表現したい」ーー。その想いがきちんと伝わるように、コーディネートで調整していくと、自ずとバランスが取れていくのかもしれません。
吉田羊さんのフォトエッセイ『ヒツジヒツジ』好評発売中です!
こちらもチェック!
キモノ語り:Yoh Yoshida edit & text:Masaki Takeda(mineO-sha)
photograph:Kayoko Asai[浅草&銀座]、Emiko Tennichi[格子柄]
※人物カットはフォトエッセイ『ヒツジヒツジ』(宝島社)から
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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