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作家・甘糟りり子さんの暮らし 古い家や家具の個性に寄り添いながら四季をたのしむ 作家・甘糟りり子さんの暮らし 古い家や家具の個性に寄り添いながら四季をたのしむ

作家甘糟りり子 鎌倉 暮らし
連載 #素敵なおうち訪問

好きなものや生活スタイルに合った部屋は、暮らしをますます豊かにしてくれます。自分らしく暮らすことが一番幸せ。今回は作家甘糟りり子さんの鎌倉の家を訪ねました。

目次
作家・甘糟りり子さんの暮らし 古い家や家具の個性に寄り添いながら四季をたのしむ
  1. 受け継いだ鎌倉の家で、器にも目覚めました
  2. 家族の記憶と生き続ける、鎌倉の家のリビング
  3. お話を伺ったのは……甘糟りり子さん

受け継いだ鎌倉の家で、
器にも目覚めました

「わが家は、日本建築のなかでは最も華奢でいわばドレスのような数寄屋造りと、最も頑丈でデニムのような合掌造りが組み合わさった珍しい建物。リビング部分は合掌造りで、中学生の頃福井から移築したものです」。それからずっとこの家で家族は思い出を積み重ね、お父様も最期をリビングに入れたベッドで過ごしました。そしてひとりになったお母様を想い、気ままに暮らしていた逗子マリーナを引き払ったのは数年前。お父様を失い、力と手間のかかる囲炉裏は閉じられたままとなりましたが、りり子さんが帰ってきたことで鎌倉の家は年々、新たな命を与えられています。

「うちで一番気に入っているのは『くじら』と呼んでいる花器。母も、地震が起きたらこれを持って逃げたいと言うくらいです。作家ものではなくて、近所の方がご自分で作ったもの。亡くなり処分されるということで、もらい受けました。いつも庭の花を活けています」。お母様の教え通り、花は買わずに庭のものを。「買わないと決めると、庭をよく観察するようになりますし、季節にも敏感になるんです。花を活けると、家が完成する気がしますね」

親交のあった向田邦子さんからいただいた器や澁澤龍彦さんのお母様が作った鎌倉彫りの土瓶敷が、生活の品として生きている甘糟家。そんな歴史とひとつづきの暮らしがある実家に戻り、りり子さんが興味を持ったのは器です。

「昔は母に説明してもらっても、あまりピンとこなかった。でも今は洋服のコーディネートのように、これとあれを合わせようと食堂で考えるのが楽しくて。たとえば伊万里焼に、オリーブの木の器を組み合わせたり、和や民芸で合わせすぎないのが好きですね。これからは、家具や雑貨でも海外のものやモダンなものを、わざとらしくならないように増やしていきたいです」

その趣味をめぐっては、ご病気をしながらも闊達なお母様と母娘らしくぶつかったりも。でも、二人の好きなものをもろとも受け止めるだけの、包容力を感じるおうちです。

玄関には、洗濯物入れのカゴが。「来てくださる洗濯屋さんに出すものはここにためておきます」。昔実際に使っていた火もらいには庭の花を。「廊下を玄関から眺めるのも好きです」

食堂にかかっている舩木倭帆さんのガラスの花瓶には、庭のアシタバやトウガラシが。
器は和洋折衷。「オリーブの器は、色の変化を楽しみたい」
天井まである茶碗専用の棚には、女性客が皆歓声を上げる。お茶碗は100ほどあり、お客さんが自分で選んで食事をすることも。「わが家の器は骨董というより、実際に使いたいと集まったものばかり」

家族の記憶と生き続ける、
鎌倉の家のリビング

築250年の福井の農家の家を移築。見事な梁が印象的なリビングでは、花瓶の「くじら」に活けた庭の花が季節を教えます。「夜、くじらにスポットライトが当たっているのも好きな風景」

お話を伺ったのは……甘糟りり子さん

PROFILE

あまかすりりこ/作家。1964年、神奈川県生まれ。著書は『モーテル0467 鎌倉物語』『中年前夜』など多数。また最新刊にこの家での暮らしや鎌倉の魅力を綴った『鎌倉の家』(河出書房新社)がある。

photograph: Miho Kakuta text: Miho Arima web edit:Masako Serizawa
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
リンネル2019年4月号より

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