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【子どもたちの性教育】 何歳からどう始める? 【子どもたちの性教育】 何歳からどう始める?

子どもの性教育イラスト

目をそむけたくなるような性犯罪のニュースが数多く聞かれる昨今。 子どもたちがよりよい人生を送るための「性教育」とはどんなものなのでしょうか。まずは私たち大人がその本質を正しく知ることから始めませんか?

目次
【子どもたちの性教育】 何歳からどう始める?
  1. 学校での性教育、どんなことを教えているの?
  2. 足かせとなっているのは大人が持つタブー意識!
  3. 「寝た子を起こすな」は、大きな間違い
  4. そもそも性教育はなんのためにするもの?
  5. 教えてくれたのは…… 高橋幸子先生

学校での性教育、どんなことを教えているの?

親から子への性教育はまだまだハードルが高いイメージ。今どきなら、必要なことは学校で教えてくれているんじゃない?と思っている親も多いのでは。しかし、日本の学校での性教育には、実はかなりの規制があります。

「学習指導要領で定められている性教育の範囲では、性交や避妊については高校まで触れません。そもそも高校に進学しない子は、避妊について教わる機会すらないのです。しかも実際には現場まかせなので『コンドーム』についても言葉だけが出てきて使い方に触れない授業が多いのが現状です」

そう語るのは産婦人科医の高橋幸子先生。
大人はこの現状を知っておく必要がありそうです。でも、家庭での性教育といってもどんなことを何歳までに教えるべきか、ほかの家ではどうしているのかなどわからないことばかり。

「実際、家庭だけに頼るには限界があると思います。自分の子どもだけが知識を持っても、まわりの子どもや大人に共有されていなければ、子どもを守ることはできないからです。地域や保護者全体が性教育について理解してほしいと思います」

足かせとなっているのは大人が持つタブー意識!

日本の性教育がうまく進まないのは、大人の意識の問題が大きい、と高橋先生。

「性について語ることをネガティブにとらえる意識がまだまだ強いのではないでしょうか。でも実は、性教育とは生殖にまつわる健康や安全確保のためだけのものではないのです」

性教育についてユネスコが掲げている8つのキーコンセプトには、人間関係や価値観、人権、文化などの理解が含まれています。つまり、性教育は人権や多様性とも深くかかわっており、子どもたちがよりよく生きていくためのツールなのです。

「寝た子を起こすな」は、大きな間違い

「『寝た子を起こすな』理論というものがあります。性教育をすることで、それまで性に関心がなかった子どもが目覚めてしまうのではないか、という理屈です。しかし、諸外国では段階に応じた性教育を行うことで、むしろ若者の行動は慎重になり、予定しない妊娠などが減ることもわかっています」

子どもが初めて触れる性についての情報が、インターネットなどの不確かなものや大人向けの偏った情報ではなく、正確なものであることが何よりも大切です。

そもそも性教育はなんのため?

「性教育の最終的な目的は、予定しない妊娠をしないことでも、性暴力に遭わないことでもなく『将来のパートナーと豊かな性を楽しむこと(ただし、したくない人はしないでもOK)』ということにあります。本来、性的なふれあいは、安心できて、心豊かになれるものだからです」

それを伝えるためには、子どもに対し繰り返し「あなたはとても大切な存在である」というメッセージを伝え続けること。大人に大事にされていないと、子どもは自分や相手が大切な存在であることに気づけないのです。性教育の本質は、自分と人への愛。

大人がそれを理解することで、性教育の考え方や伝え方が変わるのではないでしょうか。

教えてくれたのは… 高橋幸子先生

埼玉医科大学医療人育成支援センター、産婦人科医。全国の学校で行った性教育に関する講演は、年間120回以上。『子どもと性の話、はじめませんか?』(CCCメディアハウス)監修。

illustration:Naomi Mori text:Ema Tanaka web edit:Noriko Naya
リンネル2022年8月号より
※写真・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください

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