箱根にあるポーラ美術館にて、開館20周年を記念して「ピカソ 青の時代を超えて」が開催中です。これまでポーラ美術館とひろしま美術館が欧米の美術館の協力を得て深めてきた、作品研究をもとに制作のプロセスに焦点を当て、絵画芸術に挑んだピカソの作品を初期から捉え直そうとする企画展の、見どころをご紹介します。
「青の時代」を通してみるピカソの生涯
国内でも屈指のピカソ・コレクションを誇る、ポーラ美術館開館20周年とひろしま美術館開館45周年を記念し、共同で企画された本展。ピカソがオリジナリティを初めて確立した「青の時代」を、キュビスムをはじめ、革新的な表現を次々と生み出していった原点として捉え直します。
この企画の発端は、それぞれの美術館が所蔵する、パブロ・ピカソの「青の時代」の『海辺の母子像』と『酒場の二人の女』という2つの作品だったのだそう。
1901年秋から1904年の、ピカソが20〜23歳の頃、パリとバルセロナを往復しながら、青を主調色に貧しい人々を描くなど、深い精神性をまとった重厚な作品を制作した「青の時代」。本展ではピカソの原点であるこの時代の作品を超え、実験的なキュビスムの研究、さらに円熟期から晩年に至るまで、91年の生涯を通して旺盛に制作し続けたピカソの創造の軌跡に迫ります。
見どころ1:アート・ヒストリー×サイエンス 最新のピカソ研究
「青の時代」の作品の特徴は、でこぼこして厚塗りに見えること。実はカンヴァスなどの支持体をリユースし、多くの作品の下に違う絵が描かれていました。
会場内に設置された「青の時代ラボ」では、科学的な調査の進展によって明らかになった、『海辺の母子像』と『酒場の二人の女』をはじめとした、「青の時代」の重要作品にどのような複数のレイヤーが隠れているのかを、動画やパネル解説でピカソの制作のプロセスを追体験できるような展示になっています。
最新の研究では、『海辺の母子像』の下には酒場にいる女性、『酒場の二人の女』の下には母子像と、表面と下層でモチーフが逆転して描かれていたことを発見。二つの絵の深い関係がよくわかります。また、絵に転写した新聞のインクの文字によって、ピカソの足取りを辿ることができるのも興味深いです。
見どころ2:映像でみる、ピカソの制作過程
戦後、南フランスに住まいを移して制作を続けたピカソ。写真やフィルムで制作過程を残しました。
展覧会の第2会場では、晩年、『ラ・ガループの海水浴場』を制作する過程をフランス人監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾが撮影したドキュメンタリー映画、『ミステリアス・ピカソ 天才の秘密』の一部を絵画作品とともにを見ることができます。大胆に自由に、何度も描き直しながら完成していく絵を見ていると、時間を忘れてしまいそうです。
そのほかキュビスムや、1920〜30年代の新古典主義からシュルレアリスムなど、ピカソの多様な作風をたっぷり堪能できます。
見どころ3:企画展オリジナルメニューやグッズ
館内のレストランでは、ピカソの出身地であるスペインの食材を使ったコース料理のほか、作品をイメージしたドリンクやデザートも楽しめます。
ピカソの作品『海辺の母子像』に着想を得たドリンクは、りんごとグレープフルーツのミックスジュースに、 マンゴーシロップとブルーキュラソーをブレンド。 女性がまとう衣の深い青から緑へのグラデーションが表現されています。
「青の時代」からインスピレーションを得た、ブルーを基調にしたノートやトートバッグ、チョコレートなど、洗練されたオリジナルグッズもおすすめです。
またゲルハルト・リヒターなど、収蔵作品も素晴らしいポーラ美術館。富士箱根伊豆国立公園という立地をいかした、全長約1kmの「森の遊歩道」にある作品もお見逃しなく。秋のおでかけにぜひ足を延ばしてみては?
ポーラ美術館開館20周年記念展「ピカソ 青の時代を超えて」開催情報
開催中〜2023年1月15日(日)
ポーラ美術館 展示室1,3
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285
9:00〜17:00 ※入館は閉館30分前まで
会期中無休
一般¥1,800ほか
https://www.polamuseum.or.jp/sp/picasso2022/
Photo:Ken Kato text:Mayumi Akagi
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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