川内有緒さん「自分の楽しみを、自分で生み出せること。それは、素敵で最強なことです」/新刊インタビュー 川内有緒さん「自分の楽しみを、自分で生み出せること。それは、素敵で最強なことです」/新刊インタビュー
お金がないと何も手に入れられないという不自由さから、買わなくても、つくることができればいいなという考えに至った作家・川内有緒さん。今回、新著『自由の丘に、小屋をつくる』の発売を記念し、インタビューしました。現代社会の生きづらさから本当の幸せのありかを発見できる読み応えのある一冊です。
疲れているんだけど、今日も元気になったなあと
「家は好きなんですけど、買うことはまったく考えてなくて。ずっと借り暮らしでもいいなと」と言うのは、ノンフィクション作家の川内有緒さん。そんななか、ある日〝思いついちゃった〞のが、買うでも借りるでもなく「つくる」こと。著書「自由の丘に、小屋をつくる」は、まったくゼロの状態から、手探りで小屋を建てるまでの日々を綿密に、軽快に! 綴った奮闘記です。
まずは土地探しから。あれこれ探した末、山梨にある、遠くに山が見渡せる友人宅の土地を借りられることに。「私自身は東京で生まれ育って、都会を転々としてきた人生で。映画館にも本屋さんにも喫茶店にも行きたい、欲望にまみれた人間なんですよ。地方に移住した友人がいるんですけど、よく都会と全然違う環境に引っ越せるなと思ってました」
一方で、憧れもまた。「彼らはアーティストなので、いろんなものをつくりながら、毎日すごい充実してる。何かを与えられなくても、本当に楽しい人生を送ってるんです」。感じたのは、お金がないと何も手に入れられないことの不自由さ。「消費社会を否定してるわけではないけれど、買わなくても、つくることができればいいなと。自分の楽しみを自分で生み出せる。それって素敵だし、最強だなって」
さらに決め手となったのは、子どもが生まれたことでした。「都会にはない、違う景色を見せてあげたいなと。価値観の転換ですよね」
いざ、小屋をつくろう! となったはいいけれど、本人いわく「相当な不器用」。木工教室に通っての家具づくりから始まり、徐々に技を身につけます。そして本書の胸アツなハイライトは、小屋づくりを手伝うまわりの強力な助っ人たちの存在。「もちろん大工さんはかっこいいし、技術もすばらしいんですけど、能力が高くなくても、それはそれでおもしろい。何もしないで帰る人もいるし、私も小屋に行って、『今日は疲れたからやめようかな』とかいうこともある。ひどいですよね。でも『いついつまでにこれこれやらなきゃ』とか、そんな仕事モードみたいなのは、できるだけ持ち込まないように。みんなもそういう空気感を、つくり続けてたんじゃないかな」
そう、川内さんも、みんなにとっても、小屋とは「遊び道具」だから。「いつもとは全然違う環境のなかで、体を動かして。夕方になったら温泉に入って、夜は焚き火をして。疲れているんだけど、今日も元気になったなあという感じなんですよね」突飛な発想だけど、シンプルで根源的な、これぞ豊かさのかたち。
Related Article おすすめ記事
-
アルマ・ポウスティさん「辛い現実のなかでも、愛することを忘れないで」/アキ・カウリスマキ監督映画『枯れ葉』インタビュー アルマ・ポウスティさん「辛い現実のなかでも、愛することを忘れないで」/アキ・カウリスマキ監督映画『枯れ葉』インタビュー
-
江國香織さん「感傷的にならないで“ただあるもの”として受け止めていたらいいなって」/新刊インタビュー 江國香織さん「感傷的にならないで“ただあるもの”として受け止めていたらいいなって」/新刊インタビュー
-
Aマッソ加納愛子さん「書くことは雑味がない行為」/新刊エッセイ『行儀は悪いが天気は良い』インタビュー Aマッソ加納愛子さん「書くことは雑味がない行為」/新刊エッセイ『行儀は悪いが天気は良い』インタビュー
-
村川絵梨さん「今がいちばん楽しい」/ドラマ『うちの弁護士は手がかかる』インタビュー 村川絵梨さん「今がいちばん楽しい」/ドラマ『うちの弁護士は手がかかる』インタビュー
-
セックスレス夫婦を描いたドラマ「あなたがしてくれなくても」で伝えたかったこと 三竿玲子プロデューサーインタビュー セックスレス夫婦を描いたドラマ「あなたがしてくれなくても」で伝えたかったこと 三竿玲子プロデューサーインタビュー
-
くるり「一番リラックスして自分たちの心地よさを見つけた作品」 くるり「一番リラックスして自分たちの心地よさを見つけた作品」
-
“捨て活”で人生が好転した40代ひとり暮らし女性、apartment301さん書籍インタビュー “捨て活”で人生が好転した40代ひとり暮らし女性、apartment301さん書籍インタビュー
-
「すぐそばに幸せがあると信じたかった」藤沢あかりさん書籍インタビュー 「すぐそばに幸せがあると信じたかった」藤沢あかりさん書籍インタビュー
-
向井理さん「舞台の仕事は毎回吐きそうなほど緊張する。でもまたやりたくなる」 舞台インタビュー 向井理さん「舞台の仕事は毎回吐きそうなほど緊張する。でもまたやりたくなる」 舞台インタビュー
-
井之脇海さん舞台インタビュー「自分でいられる時間を大切に」 井之脇海さん舞台インタビュー「自分でいられる時間を大切に」
-
居心地の悪い感情を「なかったこと」にしなくてもいい。 温 又柔さん書籍インタビュー 居心地の悪い感情を「なかったこと」にしなくてもいい。 温 又柔さん書籍インタビュー
-
【モネ展開催中】 俳優・芳根京子さんの人生観を変えたモネの世界 【モネ展開催中】 俳優・芳根京子さんの人生観を変えたモネの世界
Latest News
CULTURE
-
秦 基博さん「さまざまな軽やかさ・奥深さに触れられた1年でした」/アルバム『HATA EXPO -The Collaboration Album-』インタビュー 秦 基博さん「さまざまな軽やかさ・奥深さに触れられた1年でした」/アルバム『HATA EXPO -The Collaboration Album-』インタビュー
-
【モネ 睡蓮のとき 開催中!】 展覧会アンバサダーの石田ゆり子さんが語る、モネの魅力 【モネ 睡蓮のとき 開催中!】 展覧会アンバサダーの石田ゆり子さんが語る、モネの魅力
-
今日はがんばったからあそこに行こう! 麻生要一郎さん新刊『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』発売 今日はがんばったからあそこに行こう! 麻生要一郎さん新刊『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』発売
リンネル最新号&付録
2025年1月号
暮らしの道具大賞2024
- 付録
- marble SUD[マーブルシュッド]
ボアバッグ&
リング付きちょうちょ柄丸ポーチ
特別価格:1,520円(税込) / 表紙:上白石萌音 /
2024年11月20日(水)発売 ※一部の地域では発売日が異なります