風邪から体を守る最前線が、鼻やのどにある粘膜。乾燥や寒さで衰える粘膜の力を高めて、病気を予防しましょう。
感染症を防ぐ!
鼻とのどの粘膜が果たす役割
鼻の役割
●吸った息の温度や湿度を調節する
鼻水が一日中たえず分泌しているのは、鼻から入った吸気をしっかり保湿するため。吸った吸気に湿り気をあたえて、温度をあげることで、肺への負担を少なくしています。
●花粉やごみなどの異物を取り除く
鼻の粘膜には線毛があって、吸気に含まれる花粉やごみを取り除く役割を果たしています。ウイルスなど異物を含んだ鼻汁をのどにむけて流し込むことで、異物を取り除いています。
●鼻汁の力で感染を防ぐ
鼻汁のなかには、さまざまな感染を防ぐ物質が存在しています。免疫物質のIgA、細菌の壁を分解するリゾチーム、鼻粘膜に異物がくっつくと排出するラクトフェリンなど。
のどの役割
●のどで食べ物の誤嚥や逆流を防ぐ
ものを飲み込むと、のどの奥にある喉頭が動いて、食べ物を食道に、空気を気管に送り分けます。気管や肺に食べ物や唾液が入る誤嚥や、胃からの食べ物の逆流は、のどで防いでいます。
●リンパ組織で抗体を作り感染を防ぐ
のどの奥には細菌やウイルスに対する抗体を作るリンパ組織があり、のどの粘膜の感染を防いでいます。さらに、抗体を作るリンパ球を鼻や耳の粘膜にも送って、感染から守っています。
●唾液腺から唾液を出して抗菌や消化を促す
鼻汁と同様に、IgA、ラクトフェリン、リゾチームなどの抗菌物質のほか、デンプンを分解するアミラーゼ、虫歯を防ぐハイドロキシ・アパタイトを含む唾液を口内の唾液腺から分泌します。
鼻とのどの粘膜が衰えると
感染から身を守る力もダウン
なぜ冬は風邪をひきやすいのでしょう。「実は、風邪のウイルスの多くは、突然どこかから入ってきたのではありません。症状が出る前から鼻やのどにいろんな病原体が付着しており、粘膜が、体内への侵入を防御しているのです」と語るのは、神鋼記念病院耳鼻咽喉科科長の浦長瀬昌宏先生。呼吸した空気はまず、鼻を通って肺に送り込まれます。鼻汁は1日に1・5ℓほど分泌され、異物が入ってきたときは鼻汁でつつみ、粘膜に生えている線毛によってのどの奥に送ります。また、のどの粘膜の奥には、感染から身を守るリンパ組織があり、感染を防いでいます。
「そんな防御システムでウイルス感染から身を守る粘膜ですが、乾燥して低温になる季節は、粘膜の働きが悪くなります。それで冬は、風邪やインフルエンザなど、呼吸器系の感染症が増えるのです」
粘膜は、年齢とともに衰えることもわかっています。病気でもないのに、鼻の奥に鼻汁がたまったり、朝だけ鼻汁が多く出るのは、粘膜の衰えのサイン。粘膜の衰えは、感染症だけではなく、嗅覚や味覚、聴覚などにも影響をあたえ、発声がしにくくなるなどの症状にもつながります。鼻、のどの粘膜力を守る習慣を始めましょう。
冬に粘膜力が低下する原因
粘膜が乾燥しやすい
冷たい空気で刺激を受ける
粘膜が刺激を受ける
鼻・のどの粘膜力を守る日々の習慣
お肌ケアするように、冬は粘膜のケアも心がけましょう。カギは、加湿することと、粘膜を自分で傷つけないことです。
蒸気で温かい、粘膜には最高の環境
【これに注意!】ぬるめのお湯につかると副交感神経優位になり、一時的に鼻水が出ることがあります。
大きな音をたてるうがいはNG!
【これに注意!】
うがい薬は刺激が強いので、粘膜を傷める場合も。水か緑茶でのうがいがおすすめ。
スチーム式の加湿器で
快適な湿度に調整
【これに注意!】
超音波式、気化式の場合は、こまめに清掃すること。
鼻呼吸のフィルターでウイルスの侵入を防ぐ
いびきには注意! 横向きで寝るだけで改善
のどを傷める逆流性食道炎は
前かがみの姿勢が原因
【これに注意!】
食後や飲酒後すぐ寝ると、胃の内容物が戻りやすいので、2時間は空けて寝ましょう。
リンネルおすすめ
粘膜ケアアイテム
シルクマスク
粘膜をケアする
塗る風邪薬
教えていただいたのは……神鋼記念病院耳鼻咽喉科科長 浦長瀬昌宏先生
Text:Ema Tanaka Illustration:Kayo Yamaguchi web edit:Masako Serizawa
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
リンネル2022 年2月号より
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