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:『イオビエ』に込めた、愛猫イオへの想い 【猫沢エミさんと猫の話 vol.3】
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              現在パリで2匹の猫と暮らす、ミュージシャンで文筆家の猫沢エミさん。特に愛猫イオちゃんから多くのことを学んだといいます。イオちゃんとの日々を描いた最新刊の『イオビエ 〜イオがくれた幸せへの切符』の一部をご紹介してきたこの連載。3回目の今回は、猫沢さんのインタビューをご紹介します。
『イオビエ』に込めた、愛猫イオへの想い【猫沢エミさんと猫の話 vol.3】
猫沢エミさんプロフィール
ミュージシャン、文筆家、映画解説者、生活料理人。2002〜2006年、一度目のパリ在住。2007年より10年間、フランス文化誌『Bonzour Japon』の編集長を務める。超実践型フランス語教室《にゃんフラ》主宰。著書に『ねこしき』(TAC出版)、『猫と生きる。』『パリ季記』(ともに扶桑社)など多数。2022年2月より愛猫を引き連れ、二度目のパリ在住。
Instagram:@necozawaemi
悪い人が出てこない小説にしたかった

イオちゃんを含め、3匹の愛猫との幸せな日々を描いた前作『ねこしき』と、今回出版した『イオビエ』(ともにTAC出版)。
イオちゃんが語る小説と、猫沢さんがSNSに綴った日記を交互で構成された本書。捨てられていたイオちゃんと猫沢さんが出会い、だんだん元気になり、糖尿病が寛解して喜んだのも束の間、扁平上皮ガンになり……という波乱万丈なイオちゃんの猫生が描かれています。
「以前出版した『猫と生きる。』(扶桑社)では、私の口から実際にあったことを語っていたので、今回イオの口から語る形式の小説にすることは、スッと決まりました。
また今回は、私と出会う前のイオの話からスタートします。実はイオが捨てられて私が保護したとき、動物好きな友人たちから情報が日に日に集まってきて。捨てられた時期や場所などの詳細を知れば知るほど、恨みの念が渦巻いて辛かったし、知ったことを後悔したこともありました。でもそのおかげで、その後の治療やケアなど、注意しないといけないところもわかって、よかったというところもありました。なによりイオ自身が恨まず、元気になるために純粋な頑張りを見せてくれていて、過去のことにとらわれずに今を見ないといけないと教えてくれたんですよね」

本書のテーマは、“すべてを許す”ことだという猫沢さん。
「イオが捨てられたシーンを書くとき、悪い人が出てこない小説にしたいと思いました。どんな理由があっても、動物を捨ててはいけないと思っているのですが、世の中にはいかんともしがたい人もいるのだろうなと。もちろんどんな理由があっても捨ててはいけないことを大前提として。
私が想像で書いている部分は、イオが少しでも幸せであってほしいというファンタジーが入っているんですよね。辛いことばかりだとしたらあの段階で生きていない気もしますし、路上であれだけ生きられたのは誰かの助けがあったんじゃないかとか、拾ったときも人間をすっと信じられるところがあったのは、誰かによくしてもらった思い出もあったんじゃないか、猫同士の社会の中で助け合いがあったんじゃないか、そういうことを少しやさしく切なく書きたいなという気持ちがありました。
路上の猫は長くは生きられないし、病気で亡くなることもある。猫は悲しくて辛いと抵抗するのではなく、受け入れながら許しながら、納得して運命を受け入れていく。きっと、愛は持っても憎しみは持たないと思うんですよね。だからその純粋さを書きたいという思いがありました。読んだ方が幸せな気持ちになる本にするために、負の感情は全部取りのぞこうと、とにかく全部書いて一度ボツにしてをくりかえして。そこからイオの視点に戻るのは辛い作業でした。だから、多分読むと感情がすごく揺さぶられて涙はたくさん出ると思うのですが、読み終えるとあたたかな気持ちになれると思うんです」
愛猫との別れのとらえ方

『イオビエ』の猫沢さんの日記ページに写る、イオちゃん。
イオちゃんとの別れの2日後に、親友との突然の別れが続いたという猫沢さん。
「なんとか救われたいと思って、学術的な死生観の本を読んでみたんです。哲学から宇宙論、時間から見た死生観までいろいろ読んだのですが、何ひとつ救われませんでした。それは学者の方が書いた本は、事象が並んでいるだけで感情が伴ってないからなんですよね。死については誰も知らないから恐れる。でも50歳を過ぎると大事な人が突然亡くなったり、死が近くなるから、その手前にある生き方を考えることはすごく大切だと思うんです。人間よりも短命な動物は何年後かには見送りがあって、それが激烈に悲しいことを知っていながら、見ないようにしていることがとても多い。だから、もっと誰でも読みやすい文章で書かれた本があるといいな、もし私が近ごろ猫を喪った人で、読んだら救われる本はこういう本だなというものを書きたいという気持ちがありました。
本を出したからって、イオは戻ってこないし、寂しいし、会いたいのは全然変わらないんです。生きていると逃げられない運命や抗えないことが必ずありますよね。変えることができないなら、視点を変えるしかない。私は本の中で天国を“楽園のようなハワイ”だと書いたのですが、読んだ人が「うちの子は熱海で温泉に入って、お魚を食べている感じかな」と、それぞれの“心のハワイ”を想像してくれるのがすごくいいなと思って。これをひとつのケースとして、こんなやさしい魂の置き方をする。つまり、してあげられなかったことを悔やむのではなく、その子に一番合った場所で安らかに眠っているところを想像してあげること。そうすることがただのファンタジーではなく、もう一度生きる力を底上げしてくれたり、穏やかな気持ちを作ってくれると思います。先に逝った子や友人が唯一願うのは、残された愛する人が笑顔で幸せに生きることだと思っているんです」
インタビューはvol.4に続きます。
photograph:Keiko Ichihara edit & text:Mayumi Akagi 
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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