“SDGs”というと大きすぎる目標に聞こえるけれど、私たちにもできることがたくさんあります。まずは未来への行動を実践している素敵な人のお話を聞いてみませんか? 今回登場いただいたのは、絵本作家のどいかやさん。保護猫活動や10年間続けた「服を買わない」チャレンジについて、お話を伺いました。
<インタビュー>自分の心と体の健康が一番。できることを無理なく続ける
おかっぱヘアと赤いほっぺのかわいい二人組「チリとチリリ」のシリーズをはじめ、自然や動物が登場するやさしいイラストの絵本で人気の絵本作家・どいかやさん。千葉県の森の中にある自宅のアトリエで、創作活動をしています。
「千葉の田舎に移住して20年ほど。きっかけは、私が20代前半のときに父がガンになり、原因などを調べているうちに環境問題に興味を持ったこと。これから自分はどう暮らしたいか考えたとき、自然豊かな場所で地元のものを食べたり、人と関わりながら暮らしたいと思ったんです」
SDGsが世間で言われるようになる前から、社会問題にも目を向けていたどいさん。あるとき、家に服があふれていることに気づき、10年という期間を設定して、新しい服を買わずに過ごすことを決めたそう。
「思いつきで決めましたが、服がどういうふうに作られているのか、簡単に捨てられた服が大きなゴミの問題になっていることを知り、チャレンジを続ける後押しになりました。続けた結果、売っているものにあまり興味がなくなったのは寂しいことかもしれませんが、今は必要なら買って、愛着を持って使うことで全うさせたいと思っています」
それと同時に取り組んだのが、ペット産業の問題。子どもの頃から動物が好きで、高校生のときに保護猫を暮らして以来、猫好きだというどいさんは、”保護猫や保護犬が当たり前の世の中になってほしい”という思いから、2012年に『ペットショップにいくまえに』を作り、無料で配布する活動を続けています。
「ボランティアをするなか、動物が置かれている悲惨な現状を伝えるときに、残酷な写真を見せると怖がられてしまうんです。大事なことなので伝えなくてはいけないのですが、まずは入り口に立ってもらいたい。私にできることのひとつとして考えたのがこの絵本でした。ペットショップで動物を売り買いするなかで、いろいろな問題があるということを興味のない人にこそ知ってもらうためにフリーペーパーに。知ることから、みなさんの行動が変わるかもしれないと思って続けています」
地域の保護猫活動も、ここまで苦労するとは思わなかったと笑うどいさんですが、見て見ぬふりして好きなことはできないといいます。
「本当は動物実験や家畜動物の劣悪な環境、動物園の問題など、大好きな動物のためにやりたいことはたくさんありますが、あれもこれもするのは難しい。自分の心と体の健康を保たないとボランティアはできないので、あまり無理しないように心がけています。自分ができることは少ししかないと思って、とりあえず今面倒を見ている猫たちを最後まで責任を取ることのが目標。あまり大きなことは考えていないんです」
できることから笑顔で挑戦する、どいさんの姿勢に勇気をもらいました。
<どいかやさんのSDGsなアクション #01>
フリーペーパーを作り、保護猫活動を続ける
ペット産業の問題を伝える絵本「ペットショップにいくまえに」を配布するほか、地元で保護猫活動をしているどいさん。現在、子猫の時に保護したテンとチビちゅ、この冬に保護した老猫シロミの3匹の猫と暮らしています。「田舎なので猫を捨てていく人が多く、子猫のうちに保護できれば里親を探しています。避妊去勢をして地域猫にしている子は、ごはんをあげるなどのお世話をしていますが、協力してくれる仲間がいることが励みになっています」
<どいかやさんのSDGsなアクション #02>
「服を10年買わない」チャレンジのその後
2007年から10年間にわたり、持っている服をリメイクしながら、新しい服を買わないチャレンジを実行。「着なくなったTシャツなどを残しておいて、パズルのように手を動かしながらリメイクするのは楽しかったです。体型や流行の変化によって着られなくなった服も、どうせ着ない服だからと思い切って手を加えることで、愛着も湧いて長く着ることができます。今は作りのいいもの、すごく好きだと思うものを買おうと思っています」
お話を伺った どいかやさん profile
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photograph:Miho Kakuta text & edit:Mayumi Akagi
リンネル2023年5月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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