親子の関わりや思春期の心のモヤモヤ……。頭ではわかっていても、困ってしまいますよね。そんなときの考え方のヒントを、40年以上性教育に取り組んでいる村瀬幸浩先生に教えていただきました。
お話を聞いた
村瀬幸浩先生 profile
<自分を守るための性教育についての質問>
Q.犯罪に巻き込まれないために、親が教えられることはある?
A.プライベートパーツは、親でも触らないように注意!
全身どこもプライバシーですが特に口、胸、性器、お尻はプライベートパーツ。これらは自分だけが触っていい場所なので、たとえ親や兄弟、親族であっても勝手に触れないということに留意しましょう。日ごろからその線引きをしておくことで、犯罪にあったときに「これはおかしい」と、子ども自身が気づけます。
Q.思春期の子のために、親ができることって?
A.困ったときに話しやすい関係をつくること、親自身も性への認識やジェンダー観をアップデートすることです
普段は親子の会話が難しくても、「何か困ったときは相談にのるよ」という、姿勢を示しておきましょう。また、父親が母親をいたわって家事を分担するなど、女性の不調に理解をもって協力しているのを示すのもGOOD。古いジェンダー観を押し付けないなど、知識を常にアップデートしておくことが大切です。
Q.最近話題の「性的同意」ってナニ?
A.夫婦や恋人など親しい仲でも、相手の意思を確認することです
部屋に二人きりになったり、露出度が高い服を着ていても、性的なことをしていいサインではありません。プライベートパーツに触れる行為は、言葉で相手の同意をとることが必要だというのが「性的同意」。子どもに同意を得るとともに、意に沿わないときは「NO」を言える力を身につけさせて。
Q.そもそも反抗期ってなぜあるの?
A.反抗は「NO」と言える大人になるためのレッスンだと思い、受け止めて
子どもは成長の過程で、自分は他人とは違う、相手の言うことをすべて受け入れる必要はなく、「NO」を言ってもいいのだと学びます。身近な親に対して反抗するのは、自立への第一歩を踏み出した証し。そうした経験を通して、誰かに嫌なことをされたときに「イヤ」と言うことができ、対等な関係を築けるようになるのです。
<心と体の変化と多様性についての質問>
Q.“女らしく”“男らしく”は言っちゃダメ?
A.“らしさ”は、男女どちらをも苦しめる原因に
性別による「らしさ」(ジェンダー)は、生まれつきではなく社会や文化でつくられたもの。世の中どちらかの「らしさ」を持っている人だけではありません。こうした「らしさ」は、女性だけではなく男性をも苦しめます。押し付けない、決め付けない理解を。
Q.子どもが性的少数者かも。親はどう対応したらいい?
A.無理に聞き出すのはNG。見守る姿勢で
「困っているなら正直に言ってほしい」と、大人は思いがちですが、無理に聞き出すのはやめましょう。ニュースや日常会話で性のあり方が話題になったときに、茶化したりすることなくまじめに受けとめる態度を示せば十分です。本人が望んだときには話し合い、学校に話すなどの対応を。
Q.娘や自分の生理による不調を、家族に知らせてもいい?
A.生理について自然に話せる雰囲気が望ましい。ただし、本人に許可をとって
月経がまだ安定しない思春期は、痛みが強く出ることもあります。生理のことは「ナイショの話」ではなく、家庭でも日常的に話すほうが、女性の不調に対して男性の理解も進むのでベター。ただしその場合も、本人に家族に伝えていいかどうかを確認しましょう。
Q.子どもの性格が小さいころと変わってしまって、 親の私がツライです……
A.思春期の子育てはきれいごとでは済まないものと、心得て
かわいらしく素直だった子どもが、ときには憎らしくも感じられるのが思春期で、親の気持ちが不安定になるなどツライ気持ちもわかります。厳しいことをいうようですが、親はときに心を雑巾のように汚したり、破れたりする覚悟が必要、それが子育てです。反抗的であっても子どもは親の心配を理解しているのです。
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text:Ema Tanaka illustration:Acha Sugizaki web edit:Riho Abe
リンネル2023年4月号より
※画像・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください
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