北欧

文筆家・萩原健太郎さんに聞いた、北欧各国のデザインの魅力 文筆家・萩原健太郎さんに聞いた、北欧各国のデザインの魅力

【フィンランド編】
国民のためのデザイン

最後にフィンランドを紹介しますが、すでに述べた4つの国と決定的に違う点があります。それは他が王国であるのに対し、共和国であることです。つまり、フィンランドには王室御用達はなく、ブランドもデザイナーも安価で庶民的なデザインをめざしたのです。

フィンランドの建築、デザインを語るとき、筆頭に名前が挙がるのが、アルヴァ・アアルトです。紙幣や切手にも肖像画が描かれ、2010年には大学の名前にもなった20世紀の偉人は、シンプルな本脚の「スツール60」(1933年/アルテック)、真鍮のシェードが美しい「ゴールデンベル」(1937年/アルテック)、湖のかたちや白樺の断面などモチーフに諸説あるフラワーベース「アルヴァ・アアルトコレクションベース」(1936 年/イッタラ)などをデザインし、フィンランドのどの家庭にもひとつはアアルトのプロダクトがあるといわれるほどです。

現在まで連なるテーブルウェアの原型を生み出したといえるのが、〝フィンランドデザインの良心〞と呼ばれるカイ・フランクです。「キルタ(現ティーマ)」(1953年/イッタラ)や、ガラスのタンブラー「カルティオ」(1958年/イッタラ)は、アノニマス(無銘性)の名作であり、フィンランドの家庭の食器棚の定番です。フランクは1956年の初来日以降、志を同じくする民藝の関係者と言葉を交わし、そして、日本の農村や窯元を訪れては、市井の人々や職人たちと交流を深めたそうです。

同年代に、北欧を代表するテキスタイルブランドが生まれていることを見逃してはいけません。 1951年にアルミ・ラティアが設立したマリメッコです。代表的なデザイナーに、「ウニッコ」(1964年/マリメッコ)をはじめ、500点以上の図案が採用されたマイヤ・イソラ、シャツの「ヨカポイカ」(1959 年/マリメッコ)をデザインしたヴオッコ・エスコリン=ヌルメスニエミ、「ブブー」(1975年/マリメッコ)をデザインした脇阪克二、現在は陶芸家として活動する石本藤雄らがいます。

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photograph:Shinnosuke Yoshimori styling:Yui Otani illustration:Atsumi Iwama text:Kentaro Hagihara web edit:Riho Abe
リンネル2023年12月号より
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