北欧

文筆家・萩原健太郎さんに聞いた、北欧各国のデザインの魅力 文筆家・萩原健太郎さんに聞いた、北欧各国のデザインの魅力

北欧家具

すっかり私たちの暮らしに定着した感のある北欧デザイン。北欧やインテリア、デザインについて数多くの執筆を行う文筆家の萩原健太郎さんに教えていただきながら、あらためて北欧デザインについておさらい。今では世界的に人気の北欧デザインですが、その始まりの物語は20世紀初頭にまでさかのぼります。国ごとに見ていきましょう。

目次
文筆家・萩原健太郎さんに聞いた、北欧各国のデザインの魅力
  1. 教えてくれた 文筆家・萩原健太郎さん profile
  2. 【デンマーク編】
    コーア・クリントを代表に
    ミッドセンチュリーを彩ったデザイナーたち
  3. 【スウェーデン・ノルウェー編】
    日用品をより美しく
  4. 【フィンランド編】
    国民のためのデザイン

教えてくれた
文筆家・萩原健太郎さん profile

文筆家・荻原健太郎さん
文筆家。日本文藝家協会会員。デザイン、インテリア、北欧、民藝などの周辺の執筆を中心に活動。北欧に関する多くの著書がある。

色褪せることなく、時間の経過とともに価値が増すものたち

セブンチェア¥70,400/フリッツ・ハンセン(フリッツ・ハンセン東京)、95 テーブル¥178,200、スツール 60 コントラスティ¥39,600/ともにアルテック(アルテック)、ティーママグ リネン [0.3L]¥2,750、バードバイトイッカ シロフクロウ¥66,000/ともにイッタラ(イッタラ表参道ストア)、PH 5 ミニ¥116,600/Louis Poulsen(ルイスポールセン東京)、Rotate Trolley¥68,200、Flowerpot Portable VP9¥37,400/ともにアンドトラディション(林物産)、Urna Vase ホワイト¥47,300、Viitta クッションカバー[50cm角]¥14,300/ともにマリメッコ(ルック ブティック事業部)、その他/スタイリスト私物

アルヴァ・アアルトやアルネ・ヤコブセン……。シンプルにコーディネートされた空間に溶け込む、北欧の巨匠たちの名作の数々。半世紀以上の時を重ねたロングセラーばかりです。


【デンマーク編】
コーア・クリントを代表に
ミッドセンチュリーを彩ったデザイナーたち

デンマークデザインの礎を築いた人物として、コーア・クリントが挙げられます。いくつもの顔を持っていますが、家具デザイナーとしては、フォーボー美術館のためにデザインされた「フォーボーチェア」(1914年/カール・ハンセン&サン)が有名です。背もたれからアームにかけて半円を描き、後脚が弓を引いたようなフォルムからは、シノワズリー(世紀頃、ヨーロッパで流行した中国趣味)の影響とともにモダンな香りが漂います。このように、クラシックにモチーフを見出し、時代に合わせて進化させる「リデザイン」と呼ばれる手法は、クリントから始まったといっても過言ではありません。同時に、身体が包み込まれるような座り心地を提供するなど、「人間工学」についても重視されています。

リデザインと人間工学については、1924年、教授に就任したデンマーク王立芸術アカデミーの家具科において、後世に受け継がれます。直接的、間接的に教えを受けた、オーレ・ヴァンシャー、ボーエ・モーエンセン、ハンス J.ウェグナー、アルネ・ヤコブセンらによって、戦後、デンマークがミッドセンチュリーの主役を演じたことを考えても、教育者としての貢献は大きいといえるでしょう。

建築家としては、父との共作である「グルントヴィ教会」(1940年)などを遺していますが、こちらはガイドブックに掲載されるほど、コペンハーゲンの人気の観光地に。さらに、照明器具ブランドのレ・クリントの創業家としての顔もあります。以上のような功績から、“デニッシュモダンの父”といわれるのも納得です。

第二次世界大戦後、北欧デザインはアメリカをはじめとして世界中で評価されますが、なかでもデンマークのデザイナーによる家具は名作ぞろいです。

ジョン・F・ケネディが大統領選のテレビ討論会で腰かけたというエピソードを持つ「ザ・チェア」(1950年/PPモブラー)や、背もたれの“Y”のパーツが特徴の「CH (Yチェア)」(1950年/カール・ハンセン&サン)などを生み出したハンス J.ウェグナーは、その代表的な存在といえます。

双璧をなすのが「アリンコチェア」(1952年/フリッツ・ハンセン)や、自らが設計したSASロイヤルホテルのためにデザインした「エッグチェア」(1958年/フリッツ・ハンセン)などで知られるアルネ・ヤコブセンです。ヤコブセンは、建築から家具、照明時計、カトラリーまで手がけるなど、完璧主義者として知られました。

他にも、フィン・ユール、ポール・ケアホルムなど、類い稀なタレントが集結していたのです。照明においては「PH 5」「PHアーティチョーク」(ともに1958年/ルイスポールセン)などをデザインしたポール・ヘニングセンの名前を忘れることはできません。

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