『リンネル』で連載中の「フィンランド西海岸の12か月」。その暮らしは、華やかでも特別なものでもなく、自然とともに、毎日を丁寧に生きるだけ。フィンランドに住む4人のデザイナーたちが発信する地域ブランド・アンナヤリーサが綴る、フィンランドからの歳時記をお届けします。今回はフィンランド語でいう「スースクー(9月)」のお話。
キノコ狩りのピークシーズン
9月はフィンランド語で「スースクー」といいますが、直訳すると「秋の月」という意味。フィンランド人にとって、9月は秋が始まる月です。秋の楽しみといえばキノコ狩り。キノコのシーズンは5月中旬ぐらいから始まりますが、9月はキノコ狩りのピークで、白樺の林を歩くと、いろいろな種類のキノコに出くわします。「どこに行けばたくさん採れるの?」と質問すると、「おいしいカンタレーレがたくさん採れる森がどこにあるかは秘密(笑)」とタニヤ。「この図鑑で調べるとキノコの種類がわかるのよ。毒キノコだと大変でしょ」とエリーナ。「見たことがないキノコを見つけると、嬉しくなるよね。ほらこれ、なかなかいい感じ」と、毒キノコの写真を得意げに見せるアンドレアス。それぞれの楽しみ方があるようです。
キノコ狩りは森の宝探し。真剣な表情でキノコを探す。
ウールの靴下とキャンドルの秋
アンナヤリーサのメンバーは、気持ちが落ち着くこの季節が大好き。外で過ごすにはもうかなり寒く、室内での生活が中心になります。フィンランドでは室内では靴を脱ぎますが、この季節になると最低気温は10度を切るぐらいまで下がるので、室内ばき用のウールの靴下を玄関に出しておきます。そして、だんだん日が短くなっていくので、夕方になるとキャンドルを灯します。気分的には夏の余韻がまだ残っているだけに、秋の美しさがよりいっそう体感できる「秋の月」です。
ドラマティックな自然を満喫
4人が住む町はそれぞれ点在しているので、フィンランド西海岸と一言で言っても少しずつ差がありますが、フィンランドの南端にあるヘルシンキと比べると、早めの秋がやってきます。キラキラ輝く太陽をたくさん浴び、欲張るほどに毎日活動的だった夏とは対照的に、マイペースで静かに過ごす時間が増えていきます。緑の大地は茶色に、青い海はどんよりとした灰色になり、少しずつ紅葉する木々の色を見ながら、夏が終わったことを実感する季節です。朝もやが立ちこめる街並みも、黄色やオレンジの木々も、ドラマティックな絵画のようです。フィンランドでは紅葉の中心は白樺ですが、まず初めに色づき始めるのはメープルの木。陽のよくあたる上のほうから美しいグラデーションを生み出していきます。あと1か月ぐらいたつと初雪が降るので、ヨハンナはマイガーデンでの最後の収穫を急ぎます。
整理整頓のすすめ
シンプルであっても無機質ではない、温かなスタイルがアンナヤリーサ流。パターンペーパーを使った仕分けラベルで棚の整理を。
アウトドア中心の夏休みのあと、家のなかは何かと散らかりがち。フィンランドでは学校の新学期が8月中旬に始まるので、9月には学校関係のプリントも山積みです。これから始まる室内中心の暮らしに備えて、9月に整理整頓をするフィンランド人はとても多く、アンナヤリーサも例外ではありません。アンナヤリーサおすすめの整理整頓は、シンプルなボックス収納を基本に、少し遊び心を加えること。付箋や事務用ラベルではなく、パターンペーパーを切ってオリジナルラベルを作ったり、大きなラッピングペーパーを使って箱ごとくるんでしまうのも楽しい演出です。
整理整頓のための仕分け作業が終わったあと、白い紙に文字を書き、それをパターンペーパーに貼って、パターン入りの額縁のように作っていきます。あまり細かくすると余計に煩雑になってしまうので、要注意。棚の整理はもちろん、子ども部屋のおもちゃの整理や散らかりがちな玄関まわりにも最適です。
季節のおすすめアイテム:手編みの靴下
アンナヤリーサたちにとって、9 月はウールの靴下をはき始める月。どこの家庭でも常備している手編みの靴下。今回は、アンナヤリーサのファミリーによる手編みの靴下(室内ばき)をご紹介いたします。ひとつひとつ柄が異なる、手編みならではの商品です。
Made in Ostrobothnia, Finland
アンナヤリーサ手編み靴下
各4,950 円(税込み)
[お問い合わせ先]アンドフィーカ 03-6721-9090
アンナヤリーサとは
アンナヤリーサ(Anna ja Liisa)は、フィンランド西海岸オストロボスニア地域に住む4人のデザイナーたちが発信する地域ブランド。左より、タニヤ、アンドレアス、エリーナ、ヨハンナ。
ヘルシンキの北西約500キロ。起伏がない広大な大地の向こうには、真っ直ぐな地平線が広がっています。普通の暮らしのなかに、必ず喜びや楽しみがあり、小さな感動からデザインが生まれます。
教えてくれたのは……「アンドフィーカ」代表 今泉幸子さん
7年前に初めてこの地を訪れ、自然の美しさと人々の温かさ、そしてデザインのある暮らしに感動。以来、毎年のように現地に通い、デザイナー4人との心の通い合いがアンナヤリーサ誕生のきっかけとなりました。デザイナー4人とともに、アンナヤリーサの12か月の暮らしについてお伝えします。
photograph:Anna ja Liisa edit & text:Sachiko Imaizumi web edit:Masako Serizawa
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
リンネル2021年11月号より
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