暮らしや旅にまつわる著書が30冊を超える人気エッセイスト・柳沢小実さん。これから先、できるだけ心穏やかに過ごしていけるように、できる範囲で準備をしていきたい。新著では、そんな柳沢さんの「暮らしとお金」をクローズアップ。ずっと自分らしく暮らすためのお金の「はじめの一歩」とは？

買うものと、買わないもの。自分のなかで線引きをする
その積み重ねが暮らしの土台をつくる

「このままじゃマズい？」

人生100年時代とか、老後に2000万円必要とか、ニュースにそんな数字が飛び交うたび、胸をよぎるそこはかとないお金の不安。人気エッセイストの柳沢小実さんも、実はそのひとりでした。

「私はもともとお金にだめな人だし、フリーランスなので収入も安定しない。周りの友人は家を買ったりして、みんなすごいちゃんとしてる？ ふわふわしてるの自分だけ？ と、不安でした」

生活コストを見直そうとしたのは、40歳手前の頃。都心のマンションから郊外に引っ越し家賃を下げ、その他小さなお金の工夫を凝らし始めます。

「でも、私は“節約”という言葉があまり好きではなくて。本当に節約したいなら、何も買わない、どこにも行かないのが一番ですよね。でもそれじゃ人生楽しくないし、やっぱり使うのは好きなので」

柳沢さんの新刊『私らしい暮らしとお金の整え方』は、そんな同じ気持ちを抱く人たちのための“はじめの第一歩”。

「たとえば平日は食パンで、週末だけ好きなお店で買ったご褒美パンにするとか。買うものと、買わないもの。自分のなかの線引きをするんです。なのでお金を『使わない』ではなく、むしろ気持ちよく『使う』ためのメリハリやコスパの話かもしれません」

さらに「視点を変える」ことも。
「いいなというものがあって、値段を見たら想像の倍くらいしたんです。だったらかわいい材料を揃えて、自分で作ればいいよねって。節約じゃなく、違う楽しみに変えること」

もちろん、エッセイストという仕事柄「新しいものを使ったり、試したりしたい。ただ、『仕事のために』を言い訳にしてるなって。年齢が上がるにつれ『欲しい』から『買う』へのアクションが早すぎると思っていて。学生の頃はお金がなかったから、もっと悩んで大事にしていたと思うんですよね」

そして「お金のプロ」であるファインナンシャルプランナーとの対談も掲載。
「細かいやりくりとかは得意じゃないけれど、大事だなと思ったのは現在地を知ること。みんな自分がどこにいるのかわからないから不安なんだと思うんです」

お金の話は友人ともしづらいもの。けれど「こういう話なら、情報交換してもいいって思えました」
そして思い至ったのは「結局は自分の問題。上を見たらきりないし、人と比べてどうこうじゃない。自分の暮らしを愛するための、手段のひとつなんだと思います」

新著『私らしい暮らしとお金の整え方』

柳沢小実／￥1,540（主婦の友社）

さまざまな切り口で生活実用の書籍を出し続けてきた著者初となる「暮らしとお金」がテーマ。実体験に基づいているゆえの、リアルで小さなお金の工夫。衣食住はもちろん、気になる健康や美容、財布の選び方まで。「その視点があったか！」と膝を打つアイデアがふんだんに。人気ファイナンシャルプランナー深田晶恵さんとの対談や、家計アドバイスも。

お話を伺ったのは……柳沢小実さん

Instagram：@tokyo_taipei

photograph：Shinnosuke Soma　text：BOOKLUCK　web edit：Mina Ota
リンネル2022年8月号より
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