CULTURE
:松下洸平さん 「作品を完成させて、いつか花が咲くように水をあげ続けるしかない」ニューアルバムインタビュー
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:次々と話題作に出演し、実力派俳優としてますます磨きがかかっている、松下洸平さん。2021年から音楽活動を本格的に再始動させ、23年末には2作目のオリジナル・アルバム『R&ME』を発表しました。ご自身のルーツである音楽と真っ直ぐに向き合い制作したという楽曲の数々からは、松下さんの新たな魅力、また日常のていねいな暮らしぶりもうかがえます。
松下洸平さん 「作品を完成させて、いつか花が咲くように水をあげ続けるしかない」ニューアルバムインタビュー
自分の本当に好きなものを詰め込んだアルバム
━━ミュージシャン活動を本格的に再開されてから、音楽に対する心境の変化はありましたか?
最初にデビューした頃は、2年くらいしか活動をしていなくて、当時は自分の趣味の延長みたいな感覚が、どこかにありました。再始動してからは、完全に「聴き手」から「作り手」に意識が変わった気がします。だから、(再始動した)当初は正直手探りだったし、わからないことだらけ。この2年で、音楽の作り方を改めて最初から学んでいったという感じですね。
━━この2年間は、さまざまな楽曲を発表されたり、ライブ活動も精力的な印象です。リスナーの方々からの反響も多く届いているのではないでしょうか。
日々聴いてくださる方の反応を気にはしていますが、それに縛られてしまうと、自分らしさがなくなってしまいそうなので、うまくバランスを保てるようにしたいと思っています。また、いい意味で期待を裏切ったりとか、 自分のイメージを覆すっていうこともあっていいのかなと思っていて。今回のアルバムでも、普段の僕のイメージとは違う一面をあえて表現することによって、リスナーのみなさんが「こういう楽曲も歌うんだ」とか「実はこういうことも考えてるんだ」っていう発見であったり、驚きを与えられたらいいなという思いもあって制作していました。とはいえ、 楽曲を作るのは僕なので、僕らしさだったりとか、イメージとかけ離れたものにはならないと信じているので。みなさんが、楽しんで聴いてくださる表情を想像しながら、作るように心がけました。
━━確かに、完成したアルバム『R&ME』は、R&B の要素をふんだんに取り入れ、俳優業で見せる爽快なイメージとは一味違う魅力を感じさせる仕上がりですね。こういった音楽は、松下さんの根底に流れているものなのでしょうか?
子どもの頃からブラック・ミュージックを聴いて育ってきたので、そこはストレートに表現しながらも、ポップスなど自分のルーツとしてる、ほかの要素もボーダレスに表現したいと思って。タイトルの『R&ME』には、R&Bというジャンルへのリスペクトに加えて、“音楽と自分”、“リズムと自分という思いを込めています。
━━制作方法としては、前作との違いはありましたか?
前作からご一緒しているプロデューサーの方が多かったので、制作のやりとりがとてもスムースにできましたね。なかには、今回初めてご一緒させていただいた方もいらっしゃったのですが、前作の経験を経て、自分はこういう音楽を作りたいというビジョンをより明確に伝えられるようになりました。前作は初めてやるからこその楽しさがたくさんあったんですけど、それとはまた違う楽しみ方で制作できたと思います。
━━そのクリエイターの方々との制作で、何を最も大切にしようと心がけましたか?
いくつかあるんですけど、ひとつはまだやってないことをやりたいという思いがありました。今までと、まったく違うものを取り入れて制作するのではなく、自分たちが好きなことの範囲で、まだやってないことにトライしようっていうのは、決めていましたね。
━━そんなアルバムの冒頭を飾る「君を想う」は、一方通行の思いというか、友達と恋人との間で揺れ動く、せつない心境をていねいに歌い上げている楽曲ですね。どういう思いを込めて制作されましたか?
2023年夏にリリースした(本作にも収録の)「ノンフィクション」を作曲してくださった、小倉しんこうさんと完成させたバラード。元気で明るいタイプの曲が少し続いたので、その印象をいい意味で覆したい気持ちがあって。小倉さんと何度かやりとりをしながら制作しました。自分のなかにあるポップス性というか、心に響く、歌いたくなるJ-POPを思いきり表現することができたのではないかと思っています。
━━いっぽう「You&Me」はセクシーな印象のR&B。
普段は照れ臭くて口に出せないような感情やメッセージをストレートに表現できるところが、R&Bやソウルの魅力だと思っています。日本語でそれを表現することの難しさもありますが、耳なじみや聴き心地のいい言葉のチョイスを心がけて書きました。
━━また「FLYFLY」は、ライブで盛り上がりそうなナンバーですね。
まさに、ライブで盛り上がれる曲をということで、作ったものです。再デビューして以降、いくつかツアーをやらせていただきましたけど、コロナの影響で様々な制限がある中での開催でした。次が初めての声出しOKな状況でのツアーになるので、会場で一体になれる楽曲を作りたいと思って完成させたのが、この楽曲ですね。
━━1月20日から全国ツアー『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 〜R&ME〜』がスタート。こちらの内容も楽しみになってきました。
みなさんと同じ空間で同じ音楽を共有できる貴重な機会。その時間だけは難しいことを考えずに、一緒に楽しみたいなと思います。みなさんが、気負わず楽しんでいただける空間作りを目指して頑張るので、ぜひ会場に足を運んでいただきたいです!
花にまつわるお仕事が多かった 2023 年の後半
━━そして、ラストに収録されたご自身で作詞・作曲を手がけられた「たんぽぽ」は、ピアノとボーカルだけで構成され、松下さんのボーカリストとしての魅力、息づかいを堪能できる仕上がりに。
アルバムのラストにピアノだけの曲を収録することを、自分のなかでなんとなく決めていて。特に今回は、ビートが印象的な楽曲が多いので、裸の自分というか、今の自分をそのまま閉じ込めておきたかったんです。だから、ボーカルに関しても、通常はブロックごとに分けて録音することが多いんですけど、これはできるだけ一続きで歌うようにしました。
━━この楽曲からは、現在の松下さんの等身大の思いが伝わってきました。
この楽曲は、エッセイというか、感じたことを曲にしただけなので日記のようなものに近いかもしれません。また、23 年の後半は<花>にまつわるお仕事が多かったんですけど、そのなかで、自分も花を題材にした楽曲を作りたいと思うようになり、完成したものになります。
━━確かに、俳優としての松下さんは<花>というイメージが強いですね。そうすると、日々の暮らしも花に囲まれたものになるのでしょうか?
以前から、花屋に行って、好きなものを2、3本買って部屋に飾るみたいなことはしていました。ドラマなどで、花に関わる役柄をいただいたことによって、暮らしに生きているものがあることの大切さをより実感するようになりましたね。ひとりじゃないと感じられるというか。 それは、お花じゃなくてもいいと思うんですけど、水をあげて枯れないように愛でる時間が、心を満たしてくれるんです。
━━素敵な暮らしぶりがアルバムからも伝わってきました。何か、お部屋にこだわりはありますか?
外が明るいうちに、光を入れるように心がけてます。部屋が暗いと心もちょっと落ち込んでしまうので、 なるべくカーテンを閉めずに、光を部屋じゅうに入れるようにしていて。だから部屋はなるべく光を遮らないレイアウトにしていますね。また、寒くても空気の入れ替えはするようにしています。部屋に溜まっている空気を循環させたいので。
━━今後の音楽活動では、どんな循環をさせていきたいと思っていますか?
あんまり、先々のことを計画的に考えるタイプではないので、今できることを精一杯やるしかなくて。ただ、いろんなアーティストとコラボしたり、フェス出演なんかも実現できたらいいですね。
━━なるほど。
僕がやらせていただいている仕事は、特にすぐに結果が出るものではないと思っていて。人との巡り合わせ、自分が持ってる運など、タイミングが必要。 だから、自分は作品を完成させて、それに水をあげていくしかない。いつ芽が出るかはわかりませんが、ひたすら畑を耕して、枯れないように、いつか花を咲かせてくれるといいなっていう。
━━最後に、リンネル読者にアルバムの聴きどころを教えてください。
普段ソウルや R&B などを聴かない方でも、身近に感じていただける楽曲を作ったつもりなので、心地いい時間を感じていただけたらうれしいです。
NEW ALBUM『R&ME』
ビクターエンタテインメント
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2023年末にリリースされた2作めのオリジナル・アルバム。夏にリリースされた「ノンフィクション」など、多彩な作家陣と制作した楽曲のほか、松下さんがソングライティングを手がけたものも収録された全10曲。楽曲ごとに表情を変化させていく松下さんのボーカル力に圧倒される内容。現在の充実ぶりが伝わってきます。
Profile
まつした・こうへい/1987年生まれ。08年にシンガー・ソングライターとしてデビュー、その後俳優業に専念。21年より音楽活動を再始動。2024年1月20日より全国ツアー『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 〜R&ME〜』を敢行。ファイナル・東京公演は3月13・14 日に東京ガーデンシアターにて。
こちらもチェック!
photograph:Miho Kakuta styling:Taiji Goto hair & make-up:Yuki Akagi interview & text:Takahisa Matsunaga
リンネル2024年3月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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