2021年に発表した楽曲「エヴリー・セカンド」が、全世界で75億以上の再生数を記録し、話題を呼んでいるミイナ・オカベさん。日本をルーツのひとつに持ち、現在はデンマーク・コペンハーゲンに在住。奏でる音楽は、北欧の爽快な季節を連想させる瑞々しいアコースティックな楽曲が中心です。その心地よい音楽が生まれる環境はもちろん、コペンハーゲンでの暮らしぶりや、おすすめスポットなども尋ねてみました。
コペンハーゲンでの暮らしがきっかけになりました
━━ミイナさんは、お母様が日本人ということもあって、幼い頃から邦楽も聴いておられたそうですね。
母親がレミオロメンの「粉雪」や宇多田ヒカルさんの「Automatic」などを聴いていたので、それらを耳にすると幼い頃を思い出しますね。また、父親もいろんなところで暮らしていた影響もあって多様な音楽(ポップス)を聴いているので、そういった嗜好が私に音楽の魅力を教えてくれ、かつ自分のスタイルを形成するきっかけになったんだと思います。
━━16歳の頃からコペンハーゲンで暮らし始め、その頃から本格的にソングライティングをスタートさせたのだとか。
子どもの頃から曲を作るのが大好きで、両親の誕生日プレゼントとして自分の曲を披露することもあったりして。ソングライティングは幼い頃から好きでした。そして16歳になりコペンハーゲンで暮らし始めるようになった頃から、本格的に自己表現をするためにソングライティングの勉強をスタートした感じです。
━━コペンハーゲンは、音作りにいい環境なのですか?
とても自然が豊かな環境。だからか、自分のやりたいことに集中しやすい部分はあるのかもしれませんね。
世界中で話題を呼んだ「エヴリー・セカンド」
━━そして21年に発表された楽曲「エヴリー・セカンド」が、世界中で大きな話題を呼びました。これは、どういうきっかけで完成したものなのですか?
この楽曲は、別の楽曲をシングルとして制作するためにスタジオに入ったときに生まれたもの。当時、本来完成させるはずだった楽曲を作りたいモードになれなくて、ふと思い浮かんだのが、この楽曲のフレーズだった。それをレーベルに送ったら、反応がよくてシングル化する運びになりました。自分でもいい楽曲になると思ったから、うれしかったですね。
━━完成した時点で多数の共感を得られたのですね。そうしたら、ヒットの予感もありました?
これほどまでにヒットするなんて想像していなかったですよ。ただ、自分にしっくりくる楽曲を作りたいという思いで制作していて、それをひとりでもいいと思ってくださる人がいたらうれしいという感じなくらいだったので。
━━ヒットの影響によって「エヴリー・セカンド」に対する思いの変化はありましたか?
たくさんの共感の声をいただけたのは、純粋にうれしかった。でも、それぞれ異なる解釈や反応をしてくださるのです。私自身もいちリスナーになったときには、自分のフィルターを通して楽曲を解釈していくし。その感情をソーシャル・メディアを通じてメッセージとしてくださるのを拝見していると、こういうふうに楽曲を捉えることができるのか、と自分でも発見することがたくさんありました。たくさんの物語が発生する楽曲を制作できたことが、素敵だなって思いましたね。
━━その後作る楽曲にも変化がありましたか?
ヒットがどうこうということで、自分の意識に変化はないと思う。ただ、成長していくプロセスのなかで、いろんな出来事や人々に出会い、たくさんの刺激を受けて、もっとこういう音を作りたい、こういう表現をしたいというアイディアが膨らんでいるのは、確か。また、ヒット曲ができたことによって、それに左右されたものを作ったとしても、決して自分にもリスナーのみなさんの心にも響くものが必ず生まれる訳ではないと思いますし。
━━今後はどんな楽曲を作っていきたいですか? 日本語曲に挑戦する予定は?
日本語の楽曲もそうですが、デンマーク語の楽曲にも挑戦してみたいですね。どちらも、自分という人間を形成する大切な要素であるので。ただ、実際に歌ってみると、まだ慣れないことが多いので難しい部分もあるのですが、新しいことを始めるときにはそういう壁は当たり前。なので、いろんなことに挑戦していきたいですね。
━━ミュージシャンとしての目標はありますか?
まず、音楽とはどういうカタチになったとしても、関わっていきたい。実は1年前までコペンハーゲンのカフェでバイトしながら活動をしていたので、もうそういう生活には戻りたくないですね(笑)。また、進化することを恐れずにいたい。常に新しいものを取り入れ続けて、いろんな世界を知りたいのです。だから、自分自身が将来どうなっているか想像つかないし、どんな進化を遂げているのか楽しみにしている。
━━リスナーにはどんな思いや風景を届ける存在になりたいですか?
音楽を作り始めた頃は、自分のためだけに制作していたというか。楽曲を作ることで、自分がどういうことを考えて、どうしたいと思っているのか、頭の中を整理するというか。セラピーのような役割を果たしていた。でも、楽曲をリリースするようになって、たくさんのメッセージをいただけたことにより、世界には自分と同じように悩みながら生活している人がたくさんいるんだということを知ったのです。また、自分の音楽には、何かしらの意味を世界に残すことができる力があることに気づいた。だから、今後も自分に正直でありながらも、誰かの心の隙間に響くような音楽を届けられたら。
コペンハーゲンのおすすめスポット
━━ところで、現在コペンハーゲンではどんなことが流行しているのですか?
夏の終わりですと、まだ日が長いので、野外キャンプに出かけることが多いですね。また、どんな季節でも湖に飛び込むのが流行っていますね。老若男女問わずに。
━━サウナに入った後にですよね?
いいえ。デンマークではサウナ文化は限られた人の間でしか浸透していませんので。ただ、水の中に飛び込むのです。私は見ているだけですが(笑)。
━━すごい文化ですね(笑)。では読者がコペンハーゲンに行った際のおすすめショップとかあれば教えてください!
Andersen & Maillard、Juno the Bakery、Hart Bageri、Lille Bakeryといったベーカリー&カフェや、ピザ屋のDiamond Sliceは、お気に入りです。また、Enomania(セキュリティ警告が出たので、オフィシャルサイトは入れていません)というレストランは味はもちろんインテリアも素敵なので、暮らしの参考になるのでは。
NEW ALBUM『ベター・デイズ』
ユニバーサル
9.6 on sale
2021年にリリースされたデビュー盤を世界初CD化。アコースティックのサウンドにのせ、自然に身体が揺れる楽曲から、じっくり聴きたいメロディアスな楽曲まで、ミイナさんの飾らない日常が伝わってくる仕上がり。
Profile
ミイナ・オカベ(Mina Okabe)/デンマーク人の父親と、日本人の母親のもとに生まれ、現在はデンマークで暮らす22歳。9月9日には、横浜赤レンガ地区野外特設会場で開催されるLocal Green Festival ’23に出演決定。
photograph:Miho Kakuta text:Takahisa Matsunaga web edit: Liniere.jp
リンネル2023年10月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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