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土岐麻子さん「年齢を理由に、臆病や億劫にならずにいたい」/ベスト・アルバム『Peppermint Time 〜20th Anniversary Best〜』インタビュー 土岐麻子さん「年齢を理由に、臆病や億劫にならずにいたい」/ベスト・アルバム『Peppermint Time 〜20th Anniversary Best〜』インタビュー

柔軟な姿勢で音楽、そして東京と向き合い続けた20年

━━確かに、今回のベスト・アルバムに収録された、活動初期の楽曲も、時代に色あせないエバー・グリーンな楽曲ばかり。

達郎さんやEPOさんをはじめ、先人たちの作った音楽は、なぜ古くならないのかなって考えたときに、その時代にある新しいことを、積極的に挑戦して取り入れているというか。柔軟にさまざまな要素を取り入れようとする姿勢が、時代が変わっても色あせないものになったりするのかなと思う。自分らしさとかあんまり考えずに、興味がある、興味が向くまま、それを表現してみるっていう。その思いきりがあった姿勢を感じる音楽のほうが、自分自身の作品も含めて、今聴いてもいいなと思えるものだったりします。

━━確かに、良質なメロディでありながらも、多彩なサウンドを取り入れていますね。

現在は、その瞬間に自分のなかで聴きたい音楽、 流行ってる要素とか、嗅覚みたいなものを信じて制作するようにしています。以前はそこに自信がなくて、こういうリスナーに響く音楽を、とか商業的なことを考えていた時期もあったのですが、私にはしっくりこなくて。わからないものを手探りで作っていくより、 今までのイメージを裏切るかもしれないけど、やりたいと思ったことを毎回やるようにしていて。それでいいんだっていうのを見つけてからは、活動をさらに楽しめるようになりましたね。

━━今回のベスト・アルバム『Peppermint Time 〜20th Anniversary Best〜』の収録曲は、どういう基準でセレクトされたのですか?

<シティ・ポップ>っていう言葉を知る前から、自分が生まれ育った場所である東京という街に興味があって。歌詞を書いていると情景描写を入れたくなり、自然に生まれ育った東京の情景が浮かんできます。海とか山を見て綺麗だなと思う気持ちもあるのですが、 それよりも交差点だったりとかビルのスカイラインなどを見て、ロマンチックに感じることが多くて。また、ビルが建て替わり、道幅が拡張したりだとか、東京の景色って日々変わっていく。その変化に、せつなさを感じる部分もある。だからこそ、私が知っている風景を曲に閉じ込めたいっていう気持ちもあって、東京を描写してきました。今回のアルバムの1つの指針となったのは、東京の街を歌っているものを中心に考えたり、自分なりにそこを行き交う人々の暮らしが浮かび上がるような楽曲っていうものをピックアップしようと、スタッフの方々と話し合いながらセレクトしました。

━━タイトルには、どんな思いをこめられているのですか?

これは個人的な見解なんですけど、東京に色があるとしたら、ペパーミントだなって。 自分に物心がついた80年代を連想させる色がそれなんですよ。当時は、アメリカの西海岸がブームで、海沿いのパームツリーがある広い道を、ピカピカの車で走っているみたいな。その風景が、私にはペパーミントに見えるのです。実際、東京の街にもそういうパステルカラーのものが増えていましたし。クルマや文房具、そして一人暮らし用のアパートまで。そういう、徐々に鮮やかになっていく都会の風景の象徴としてペパーミントが思い浮びました。

━━土岐さんの描かれる東京の風景は、徐々に視点が変化しているような気がしました。

最初は情景描写というか。東京の風景を俯瞰でとらえているような感じでした。でも最近は、例えばスクランブル交差点を歩いていると、気持ちよくなることがあるんですよ。周りにたくさん人がいるんだけど、私はこの人たちのことはほぼ知らないし、向こうも私のことを知らない。 一瞬孤独を感じるんですけど、その反面自由な感じもするというか。誰も知らない、もしくは知らない人が多い環境でこそ、いろんな挑戦ができるような気持ちになれる。孤独ってこう、自由と裏腹な感じがしていて、孤独だからこそ挑戦できることっていうのもすごくある気がする。そういうことを考えるようになって、 東京をひとり歩くときに歌詞が出てくるようになりました。東京に限らず都市で暮らしていると、孤独を感じてしまうこともあると思うのですが、そういう瞬間に自由な気持ちにシフトできるような。 晴れやかに、なんでもできるぞっていう気持ちに転換しようと思えるような音楽を作っていきたいと思うようになりましたね。

━━だからこそ、土岐さんの音楽からは、都会で暮らすさまざまな人々の<暮らし>が見えてきます。

私が描く楽曲ってワクワクできる部分もあるんですけれど、室内の感じというか。夜景を作る、一つ一つの窓の明かりの中にはそれぞれの暮らしがあって、なかには面白くも楽しくもないみたいな瞬間を過ごしてる人もいたりする。夜景として全体を見るとファンタジックだけど、形成する光のそれぞれには異なるドキュメントが詰まってると思っていて。なんかそういうワンルーム感というか、部屋の中の孤独感みたいなものも、描くようになりました。

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