CULTURE
:いしわたり淳治さん「オアシスがいなければ、今の自分はいなかった」/『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』特別インタビュー
CULTURE
:作詞家・プロデューサーとして、日本の音楽シーンに欠かせない存在になっている、いしわたり淳治さん。そのルーツには、1994年にデビュー・アルバムを発表し、日本でも圧倒的な人気を誇る英国出身バンド、オアシスの存在があったそうです。
このたび開催される、バンドの30周年を記念した展覧会『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30 周年特別展』にあわせ、いしわたりさんが彼らの名曲の数々を、再対訳。力強いロックンロール・サウンドを、時代を超えて心に響く普遍的な名曲へと進化させています。
今回、その対訳にこめた思い、また展覧会の見どころなどを、WEB版のみのスペシャル・インタビューでお届けします。
オアシスを聞いた瞬間に、自分の音楽だと思った
━━いしわたりさんとオアシスとの出会いはいつ頃でしたか?その時の印象は?
初めて聞いたのは高校生の頃でした。それまで世界はグランジロック全盛で、暗い音楽が多かったのですが、オアシスはメロディも歌詞もポップで明るかった。グランジロックは格好いいけれど、自分の身の丈より悲しすぎると内心では思っていて、しっくりきていなかったので、オアシスを聞いた瞬間に「これだ! これこそが俺の音楽だ!」と思いました。
━━ご自身の音楽活動に、彼らの音楽はどんな影響をもたらしましたか?
オアシスの音楽に出会わなければ、私は音楽はやっていないと思います。オアシスがデビューした当時のインタビューでノエルが自分が育った町のことを「サッカー選手かロックスターになる以外は成功できない町」というようなことを言っていて、同じように陸の孤島みたいな青森の田舎町で暮らしていた私はその発言に感化されて、慌てて通信販売でギターを買って音楽を始めました。
━━では、今回彼らの楽曲の対訳をすることは、感慨深かったのではないでしょうか?
純粋にうれしいと思いました。若い頃から洋楽もなるべくは日本盤で買って歌詞と対訳を読むようにしていて、当然オアシスもすべて日本盤で買っていました。その歌詞を改めて訳させてもらえるのは光栄なことだと思いました。
━━対訳をされるにあたり大切にされたことは?
ノエル・ギャラガーになりきること。それは大事にしました。言葉遣いや、皮肉な視点、ノエルならではのキャラクターがあると思うので、そこはぶれないように気をつけました。訳している数日間、自分がノエルになった気分がするほど。
━━イギリスと日本、また(デビュー当時である)1990年代と現代、対訳されるにあたってさまざまなギャップがあったかと思います。いちばん苦労されたことは何ですか?
オアシスの歌詞はメロディに対するノリを重視された抽象的な言葉も多くて、ノエル本人も「深い意味はない」とよく言っていたりもするので、リリース当時は意味が掴みにくい部分は直訳のようになっていて、対訳を読んでも分かりにくい曲も多かった気がします。
今回、私が訳させてもらうにあたって、オアシスのキャリアの全てを振り返ると、当時は難解だったあの歌詞もつまりこういう意味だったんじゃないか、というような答え合わせのような、後出しジャンケンのような視点での言葉と情報の補い方で、意味の通った、読みやすい対訳を作りたいと思いました。
━━対訳をされてみて、印象的な楽曲はありますか?
「レット・ゼア・ビー・ラヴ」は、とにかく優しい曲。こんな曲もストレートな歌詞も書くんだな、と。ノエルなら照れ隠しで余計な皮肉を書きそうだけど、この曲はそれをしていない。だからこそすごく特別な響きを持った歌だなと改めて思いました。「サム・マイト・セイ」は、いい歌詞だなと思いました。「人は好き勝手に偉そうなことを言っている」というのは、当時よりもSNSが普及した現在の方が響くテーマかもしれません。「ドゥ・ユー・ノウ・ワット・アイ・ミーン?」では、確信めいたことはあえて何も言わずにとても大事なことを確実に伝えている。とてもいい歌詞だなと思いました。「オール・アラウンド・ザ・ワールド」で、世界中で大ブレイクした自分たちを冷めた目で客観的に見ながらも、狂乱の嵐の真ん中で今日も熱くロックスターであり続ける。その頃の彼らのアンビバレンツな感情が美しい歌に昇華していて、いい歌だなと思いました。
ロック(音楽)の明るい未来を感じられる展覧会

Photo:Jill Furmanovsky
━━開催される展覧会『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』にあわせて、いしわたりさんの対訳がのった「リヴ・フォーエヴァー」のミュージック・ビデオが公開、また会場内にも多数の楽曲が展示され、さらにショップで販売されるパンフレットにも掲載されています。
当時の彼らを知っている人はもちろん、新しい世代にも聞いてもらいたいと思います。今、時代はオアシスのような音楽を求めているような気がします。オアシスが今以上に世代を越えて聞かれ続ける、その少しのきっかけになれたら幸いです。
━━今回開催される展覧会で楽しみにされていることは何ですか?
展覧会であれこれ見たらシンプルに心が高校生に戻る気がします。忘れていたいろんな感情や出来事を思い出すはず。自分が何を思い出すのか、どんな気持ちになるのか、それが一番楽しみかもしれません。
━━オアシスの作った音楽は、いしわたりさんの今の暮らしにどんな影響を与えていますか? また、彼らの音楽は暮らしにどんな彩りを与えてくれると思いますか?
自分の音楽人生の前半はオアシスと一緒に進んで来たようなものです。彼らがいなければ今の自分はいないので、そう考えると、今こうして暮らしているすべては彼らの影響の延長線の上なのだと思います。
━━今回の対訳を通して、今後のいしわたりさんの活動に何か影響をもたらしそうですか?
何も変わらないんじゃないでしょうか。今までも自分の心の中にはオアシスはいましたから。今回彼らは再結成したみたい(個人的には再結成はまだ信じていません。来年のツアーが始まるまでに、また喧嘩して再結成を撤回するんじゃないか、そして、それを覆してまた再結成するんじゃないか。それくらいやってもらってこそ、オアシスなんじゃないか。という気がします)ですが、私の心の中ではずっと活動していたようなものですから。
━━2025年から16年ぶりとなるワールド・ツアーが決定しています。今後のオアシスに期待されていることは?また、これから彼らの音楽はどんな意味を持つと思いますか?
いつの時代も、音楽はどちらかというと若者の持ち物という傾向が強くて、大人になると音楽を聞かなくなる人が増えるものです。オアシスのようなバンドが格好いい新曲を出し続けてくれると、音楽から離れていた人も再び音楽を聴くきっかけになるかもしれません。また、若い世代にとっては、ロックの明るい未来というか、バンドを続けていくことの格好いい未来像を見せてあげられたら、とても素敵なことだと思います。
展覧会『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30 周年特別展』

1994年にデビュー・アルバム『オアシス (原題:Definitely Maybe) 』をリリースし、瞬く間にイギリスの音楽界を代表する存在になった、ノエル(G&Vo)とリアム(Vo)のギャラガー兄弟擁する伝説のバンド、オアシス。日本でも、チャート1位を獲得したり、フジロックやサマーソニックでヘッドライナーを務めるなど、圧倒的な人気を誇る彼らの、これまでの歩み、そして楽曲の魅力を知ることができる展覧会。会場では、今後発表される専用アプリをダウンロードして、自身のイヤホンで楽曲の数々を耳にしながら、貴重手書きの歌詞や楽器の数々を楽しめます。いしわたりさんの対訳のほか、30周年を記念して河村康輔さんが手がけた新バンド・ロゴも公開。さらに、限定Tシャツなどが並ぶ会場内ショップ内で一定金額を購入すると、25年に英ロンドン/マンチェスターで開催される再結成ライブの超プレミアム・チケットを入手できるチャンスが。
開催期間:11月1日(金)~11月23日(土)
会場:六本木ミュージアム(東京都港区六本木 5-6-20)
営業時間:10:00~18:00
※11月1日(金)、11月2日(土)、11月3日(日)のみ 10:00~20:00(最終入場は閉館時間の30分前まで)
<前売券> 一般:¥2,500(税込)
<当日券> 一般:¥2,700(税込)
関連展覧会も開催
今回のオアシス展で、メインビジュアルを撮影している写真家のJill Furmanovsky(ジル・ファーマノフスキー)さんと 、30周年を記念してリニューアルをしたバンド・ロゴを手がけているアーティスト/グラフィックデザイナーである河村康輔さんによる企画展『Oasis Origin + Reconstruction』も開催に。ジルさんが撮影したオアシスのライブ写真を、河村さんが大胆にコラージュした作品がずらり展示された内容。オアシスの新たな魅力を体感できると同時に、ここでしか手に入らないアイテムも発売されます。
オアシス 最新リリース情報

『コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX Vol.1』
¥43,000(3000セット完全生産限定盤)/10.30 on sale
『コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX Vol.2』
¥44,000(3000セット完全生産限定盤)/11.13 on sale
ソニー・ミュージックレーベルズ
これまでに発表したすべてのシングルを完全網羅した超貴重な7インチ・シングル・コレクションBOX(Vol.1 & Vol.2)が日本独自企画・完全生産限定でリリース。封入特典でギャラガー兄弟のアクリル・スタンド付き。
PROFILE
いしわたり・じゅんじ/作詞家・音楽プロデューサー。1997年にロック・バンド、SUPERCARのメンバーとしてデビュー。05年のバンド解散後は、作詞家として活躍。現在までに700曲以上の楽曲制作に携わり、数々の映画、ドラマ、アニメの主題歌も制作している。12月6日に新刊『言葉にできない想いは本当にあるのか2』(朝日新聞出版)を刊行予定。
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text:Takahisa Matsunaga
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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