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深沢 仁さん「私の頭の中から出てきた人たちと、お知り合いになろうという気持ちで書く」/新刊『ふたりの窓の外』発売 深沢 仁さん「私の頭の中から出てきた人たちと、お知り合いになろうという気持ちで書く」/新刊『ふたりの窓の外』発売

リンネル編集部
深沢 仁さん新刊発売

深沢 仁さんの新刊『ふたりの窓の外』が発売。火葬場で出会った男女の一年を四章仕立てで描いた恋愛小説。物語に込めた思いや背景を深沢さんに伺いました。

目次
  1. インタビュー
  2. 新著『ふたりの窓の外』
  3. お話を伺ったのは……深沢 仁さん

物語を成立させるために現れては消えていくような人は、書きたくない

衝撃的なストーリーテリングや関係性があるわけではなく、いたって普遍、だけどあまりにも美しい。今の時代において、稀有な恋愛小説に出合いました。深沢仁さんの『ふたりの窓の外』です。
「先日も『こんなにシンプルな展開はめずらしい』と言われて。ふだん、私は恋愛小説を読まないのでわからなくて。逆に今の世の中の恋愛は、そんなにエキサイティングなことになってるの!?って」

登場人物は、火葬場で出会った見ず知らずの男女。ひょんなきっかけから、ふたりで一緒に小さな旅に出かけます。春の温泉宿から始まり、夏、秋、冬。4章仕立てで、それぞれの季節の情景とともに、旅のようすが描かれていきます。
「この仕事を始めて間もないとき、自分の文章があまりにも季節感がないことにびっくりして。シーズンって意識しないとすぐに忘れてしまうものだけど、やっぱり想起するものがちゃんとあるなと、大人になってわかってきた感じです」

季節の移り変わりと歩調を合わせるように、たがいの心の距離も、ゆっくりとしたペースで近づきます。
「少女マンガなんかで、男の人がかっこよくて、まわりにいる女の子たちが『○○さんだ!』みたいに目がハートになり、ものすごいスピーディに展開していく話を読むと『こんな人なかなかいないよなあ』と思ってしまって。劇的な一目惚れではなく、いきなり恋愛を意識してどきどきすることもない。人と人が、もっと普通に知り合うことから始まって、現実的な距離感で進む話が書きたくて」

そうしていくうち、主人公のふたりがどんどん愛おしくなるのが、この物語の真骨頂です。
「主人公にいやなことをする役とか、謎を持ちかける役みたいに、物語を成立させるために現れては消えていくような人は、私は書きたくなくて。どんなお話であっても、ひとりひとりがちゃんと人で、過去もあれば未来もあるはずで。登場人物の誰かひとりを引っ張ってきて『次はこの人を主人公にして書いてください』と言われても、ちゃんと納得できるものが書けることが、私の理想です」

しかもおもしろいのはプロットを最初から作らない、ということ。
「ただ私の頭の中から出てきた人たちと、お知り合いになろうという気持ちで書く。私もふたりの話の続きが見たいから、書きながら読んでいる、そんな感覚なんです」

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