映画『男はつらいよ』の舞台として知られ、昭和レトロな街並みが色濃く残る、葛飾・柴又。
まち歩きの達人・甲斐みのりさんとともにめぐった柴又の街歩きスポットを、2回にわたってお届けします。
この前編では、柴又ならではのノスタルジーを感じる場所へ。「おいしいもの」や「かわいいもの」を探して、のんびりと街を歩きました。
柴又の街を歩いたのは…
甲斐みのりさん
柴又ってどんなところ?
東京の北東部に位置する葛飾区柴又。
国民的映画『男はつらいよ』の主人公・寅さんの故郷として一躍有名になり、今もなお、古きよき下町の温もりと情緒が息づいています。柴又駅と柴又帝釈天(たいしゃくてん)を結ぶ参道には、戦火を逃れた木造の商店や老舗が軒を連ね、2018年には東京都で初めて“風景の国宝”と言われる「重要文化的景観」に選定されました。
おさんぽルート
01
寅さん像が待つ柴又駅からスタート!

街歩きのスタートは、京成金町線の「柴又駅」から。
「父が大の寅さんファンだったので、作品はもちろん、柴又も好きなまちのひとつです」と声を弾ませる甲斐みのりさん。改札を出ると、まっすぐ「フーテンの寅像」のもとへ。


駅前広場に佇むこの銅像は、旅に出る寅さんが、妹のさくらのほうを振り返ったシーンをモチーフにしたもの。寅さんの像の足元には、山田洋次監督による“寅さんの故郷への思い”が刻まれていています。
おさんぽルート
02
帝釈天参道で
おいしい&かわいい探し
SPOT
◆高木屋老舗

柴又駅を背に進むと、すぐに見えるのが帝釈天参道の入り口。柴又帝釈天へと続く約200mの参道には、甘味処や土産物店など40店以上が軒を連ね、わくわく感が一気に高まります。
甲斐さんがまず立ち寄ったのは、1868(明治元)年創業の「髙木屋老舗(たかぎやろうほ)」。
こちらは、寅さんの実家「くるまや」のモデルとなったお店で、『男はつらいよ』シリーズのロケのたびに、出演者やスタッフの休憩所兼控室として利用されていた、映画ファンの聖地です。

参道を挟んで向かい合わせに販売店と喫茶店を構え、店内には山田洋次監督ゆかりの品々や撮影当時の写真も飾られた贅沢な空間です。
喫茶に立ち寄った甲斐さんは、刻み海苔をまぶした串団子「磯おとめ」とおでんを味わいました。


磯おとめ600円とおでん700円
「高木屋老舗といえば、柴又名物の草だんごも外せません」と甲斐さん。帰りに手土産を買いに戻る約束を交わし、店を後にしました。

草だんご折り詰12粒900円~
SPOT
◆園田神佛具店

次に訪れたのは「園田神佛具店」。
柴又の郷土玩具「はじき猿」を守り継ぐお店です。「はじき猿」とは、帝釈天の使いである白猿の伝承に由来するもので、江戸末期からこの店の女性たちによって代々作り続けられてきました。
現在は、店主・園田正信さんの姉で、90歳を超えるコトさんがその技を受け継ぎ、丁寧に手作りしています。

はじき猿1000円
「はじき猿は、“災難を弾き去る(猿)”“運を跳ね上げる”という意味を込めた縁起物なんですよ」と園田さん。

竹ひごのバネを指で弾くと、小さな布製の猿が勢いよくぴょこん!と跳ね上がり、その愛らしさに甲斐さんも思わず目を細めます。
「なにかよくないことがあったとき、猿に願いを込めて指をかければ、もやっとした気持ちも弾き出せそう」(甲斐さん)

もうひとつの郷土玩具「ごへい猿」は、彫刻師でもある店主自ら手彫りしたもの。猿がその手に掲げる神聖な御幣(ごへい)で嫌なことを祓って、開運を招くという縁起物です。素朴で味のある玩具たちを前に、甲斐さんもすっかり心をくすぐられっぱなしでした。

名木彫ごへい猿1500円

SPOT
◆柴又帝釈天

参道を突き当りまで進むと、いよいよ柴又のシンボル「柴又帝釈天」に到着です。正式名称は「経栄山題経寺(きょうえいざんだいきょうじ)」といいますが、古くから通称で親しまれてきた背景には、この地ならではの懐の深さが息づいています。
「柴又帝釈天は、1629(寛永2)年に開基した日蓮宗の寺院です。普通なら、門に寺号や宗派を刻んだ扁額(へんがく)を掲げているものですが、ここにはありません。それは、“宗派を問わずどなたでもお参りください”という無言のメッセージであり、開かれたお寺の証でもあるのです」と、寺務長の須山さんが教えてくれました。

その象徴でもある「帝釈堂」には、宗祖の日蓮が自ら刻んだと伝わる「板本尊」が安置されています。
拝殿のさらに奥へと進むと、「彫刻ギャラリー」が姿を現します。内殿の外壁を囲むのは、10人の宮彫刻師たちが技を競い、魂を込めて彫り上げた「法華経」をテーマにした10枚の胴羽目彫刻。名工・4代目波の伊八による鶴亀の彫刻など、どれも緻密で、いまにも動き出しそうなほど躍動感あふれる傑作ばかりです。


横山光一作「法師修行の図」

今関光次作「病即消滅の図」
お参りの後には、ぜひ「寅さんおみくじ」を。おみくじ機からは『男はつらいよ』のおなじみのメロディが、みくじ箋には寅さんの心に残る名ゼリフが添えられていて、和やかな心地に包まれます。



おみくじに続いて甲斐さんをきゅんとさせたのは、レトロな「寅さんお守り」。お守り袋が、寅さんのトレードマークである格子柄のスーツと同じ仕立てという、遊び心あふれるデザインです。

寅さん守(箱入り)1000円
柴又帝釈天を語るうえで欠かせないのが、60日ごとに巡ってくる「庚申(こうしん)大祭日」です。その起源は江戸時代。一時行方不明になっていたご本尊が、1779(安永8)年の庚申の日に発見されたことから、特別な縁日と定められました。
この日は普段は拝むことのできない「板本尊」が特別に開帳されるとあって、境内は朝から活気に包まれます。
住所:葛飾区柴又7-10-3
TEL:03-3657-2886
開門時間:5:00~20:00(閉堂17:00、土日祝18:00)、お守り9:00~16:00、彫刻ギャラリー・邃渓園9:00~16:30(最終受付16:00)
拝観料:彫刻ギャラリー・邃渓園共通400円
おさんぽルート
03
美しい庭園と名建築が待つ「山本亭」へ

帝釈天のにぎわいを後にして、静かな時間が流れる「山本亭」へ。ここは、カメラ部品メーカーの創立者・山本栄之助の邸宅で、大正末期から昭和初期にかけての和洋折衷の美しい建築を、いまも大切に伝えています。
いちばんの見どころは、池泉・築山・滝などを設けた純和風の書院庭園。アメリカの日本庭園専門誌でも常に上位にランクインするほどの美しさです。

「山本亭では、庭園を眺めながら和室や縁側でお茶をいただけます。喫茶メニューの、抹茶に付く練り切りは、高木屋老舗のもの。大正浪漫の雰囲気の中、ラムネを味わうのも一興です」(甲斐さん)

お抹茶(練切菓子付)1000円
また、山本亭は当時には非常に珍しい二世帯住宅として建てられた点にも注目です。大正末期から昭和初期にかけて増改築を重ねた建物は、木造2階建ての伝統的な和風建築の中に、優麗な装飾が施された洋風建築が美しく融合しています。

書院造をベースに漆喰の天井や暖炉をしつらえた洋間「鳳凰の間」
「長屋門」をくぐるときは、ぜひ通路の両側にある袖部屋にも注目を。六角形のタイルが敷き詰められた床や、光を通すステンドグラスの上げ下げ窓など、当時のモダンな流行がそのまま息づいています。



おさんぽルート
04
昭和の世界に浸る
「葛飾柴又寅さん記念館」

葛飾柴又寅さん記念館/山田洋次ミュージアム©松竹(株)
最後に訪れたのは、山本亭のすぐ隣に建つ「葛飾柴又寅さん記念館」。映画『男はつらいよ』の世界を15のコーナーにわけて紹介しています。
訪問するのは今回で2度目という甲斐さん。『男はつらいよ』をまだ観たことがなくても誰でも楽しめるのが魅力と語り、「柴又の街を歩けば、”寅さんを知りたい、映画を観たい”と、心の中に自然と寅さんが入り込んでくるのですが、記念館に来るともう、すっかり寅さんの世界のトリコになってしまうんです」と目を輝かせます。

入り口には、自ら看板を取り付ける寅さんの姿が。床にはうっかり落とした雪駄も
中へ入ると、柴又帝釈天参道がジオラマで再現されたコーナーに続き、大船撮影所から移設された本物の「くるまや」のセットが現れます。
番台に近づくと、黒電話がジリリと鳴り、自然に受話器を取る甲斐さん。すると受話器の向こうから、あの懐かしい寅さんの声が聞こえてくるではありませんか。



さらに奥へと進むと、昭和30年代の帝釈天参道を再現した精巧なミニチュアや、今にも活気ある作業音が聞こえてきそうなタコ社長の印刷所、昔の駅舎や改札を細部まで再現した「故郷駅」など、懐かしくて温かな風景に出合えます。

展示の最後を飾るのは、寅さんが愛した鈍行列車のボックスシート。窓の外には映画の車窓風景が流れます。
「寅さんのトランクが置かれた網棚の下に座れば、まるで自分も寅さんと一緒に旅をしているかのよう。不思議と晴れやかな心地になれますね」(甲斐さん)

住所:葛飾区柴又6-22-19 葛飾区観光文化センター内
TEL:03-3657-3455
開館時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
定休日:第3火曜(祝日の場合は翌平日)、12月第3火・水・木曜
料金:入館料500円(山田洋次ミュージアムとの共通券)
SPOT
◆TORAsan café

優しい余韻に包まれながら、併設の「TORAsan café」で一服。ここは、映画『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』のロケ地となったオーストリア・ウィーンのカフェをモチーフにした、クラシックで落ち着いた空間です。

おすすめは、寅さんのラテアートが描かれた特製カプチーノ。愛らしいその姿に、飲むのが少しもったいなくなってしまうほど。
ふと、甲斐さんが座った席の窓をよく見ると、そこにはちょこんと佇む寅さんのアクリルスタンドが。
「これから寅さんと一緒に旅ができそうなので」とはにかむ甲斐さん。実は、この「TORAsan cafe」で、記念すべきアクスタデビューを飾りました。

TORAチーノ720円
住所:葛飾区柴又6-22-19 葛飾区観光文化センター内
TEL:03-3657-3455(葛飾柴又寅さん記念館)
営業時間:9:00~17:00(L.O.16:30)
定休日:第3火曜(祝日の場合は翌平日)、12月第3火・水・木曜
来る6月15日(月)は、柴又の街全体が活気に包まれる、柴又帝釈天の「庚申大祭日」。帝釈天参道でも縁日が開催されるので、ぜひでかけてみてくださいね。
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Model:Minori Kai photograph:Michi Murakami text & edit:Chiaki Tanabe
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