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:柄本佑さん・坂西未郁さんインタビュー/ささやかな日々の先に、大きな物語がある
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スマートフォンに残された映像、家族の何気ない会話、そして記憶の中にだけ残る風景――。映画『メモリィズ』は、日々積み重なる「記録」と「記憶」を静かに見つめた物語です。主演の柄本佑さんと坂西未郁監督に、作品に込めた思いや撮影の舞台裏をたずねました。
“記憶と記録”。何気ない日々に宿るもの
——家族の“記憶と記録”を描いた映画『メモリィズ』。柄本佑さんは、骨折した義父の世話をするため、九州を訪れた雄太を演じています。まず、坂西監督が柄本さんにオファーした理由を教えてください。
坂西未郁さん(以下、坂西)脚本を読んだプロデューサーから、「これ、佑がええんやろ」と言われて、「はい」と答えたところがスタートでした(笑)。佑さんは本当にさまざまな役を演じていますが、いつも自由で純粋で、「このキャラクターはどこに行くんだろう、どこまでもいけそうだな」と思わせてくれる豊かさを感じるんです。今回の映画は、なにか大きな事件が起きるわけではありません。だからこそ、「この人はどんな人なんだろう」と観る人に思わせる、求心力を持った人に演じてほしかったんです。
柄本佑さん(以下、柄本)台本を読んだときに感じたのは、日々の営みやルーティンが丁寧に描かれていること。坂西さんが言ったように、大きな出来事が起こるわけではないけど、実はもっと大きいものが映ってるんじゃないか…みたいな。今は派手な映画もたくさんあるし、それはそれで面白いけど、そういう中で『メモリィズ』のような作品が生まれる必然性も感じて。脚本からは坂西監督の色気のようなものも感じ取れて、どんな映画になるんだろう? と興味が湧きました。

——ドキュメンタリーを見ているような、柄本さんの自然な佇まいが印象的でした。
坂西 「こう歩いてください」「このように喋ってください」みたいな話はほとんどしていなくて。ここは何回くらい来た場所なのか、何日目なのか…ということだけを伝えて、ほかのことはあまり緻密には決めていません。雄太も初めて大分に住むことになって、その場所を体験していくという設定なので、佑さんが街を歩きながら風景や音に反応することが、そのまま雄太の動きになるはずだと思っていました。
柄本 なにか音がしたらそちらを見たり、吹いてきた風に反応したり、そういうライブ感って大事なんだけど、やっぱり「ここまでやったらやり過ぎだな」というのはどこかにあって(笑)。やりながらもなんとなく、「これには振り向こう」「これは反応しなくていいな」と自分なりに感覚を研ぎ澄ませて取捨選択していましたね。
うちの妻ともよく話すんだけど、お芝居をしていて、たとえば目の前に湯飲みがあったとしたら、いつ湯飲みを持つか、持った後にそれをどうするか……。こういう選択って、本当にトム・クルーズが生身で飛行機に掴まったりするのと同じくらい、命がけで毎回挑んでいるんです。

——ロケ地である大分県竹田市の風景や、クライマックスの“野焼き”のシーンも、作品を象徴するシーンになっています。
柄本 土地の力は大きかったですね。義父の誠が営む写真館や近くのトンネルも非常に雰囲気のいい場所で、その空気感に日々助けられていました。何より、実際に目の前で見る野焼きはすごい迫力なんですよ。近づいてもいい範囲は決まっているんですけど、風向きや風の強さによって燃え広がるスピードも変わるらしくて。だから撮影はなかなかの緊張感でしたよね。
坂西 「用意、スタート」をどこでかけるかというのが難しかったですね。
柄本 野焼きが始まるタイミングは操作できないからね。でも、こういう機会でもないとなかなか見る機会もないだろうから。燃えた後の匂いなども含めて、初めて知る世界でした。
——本作は「記録と記憶」がテーマですが、おふたりは日常的に写真を撮っていらっしゃいますか?
坂西 スマホの登場とストレージの増大で、僕たちはいくらでも写真を撮って、残しておけるようになりましたよね。でもその全てを見返すわけではない。僕自身も、自分で撮ったのに覚えていないような写真がたくさんあります。これっていいことなのか悪いことなのか、人間はどうしてこんなに記録しているんだろう…?と感じたことも、この映画を撮るきっかけのひとつなんです。
柄本 僕もスマホでよく撮ります。ただ、「これは家族に見せたいな」と思って撮ったのに、写真にはそのきれいさが写っていなくて、結局送らないことも結構あって。反対に、何の気なしに撮った1枚が、すごくいい写真になることもある。便利なのはいいことだし、撮ることも楽しいけど、目で見て美しいものは、わざわざ撮らずに記憶するだけでいいんじゃないか…と。僕はギリギリ昭和生まれなので、そういう考えに至るんじゃないかな。やっぱり狙いどおりに写すっていうのは、すごく難しいことなんですよね。

Q 最近のマイブームを教えてください。柄本さんは以前、リンネルのインタビューで「お花をマイブームにしたい」とおっしゃっていましたが…
柄本
A お花を習い始めました!
つい先週、初回のお稽古に行ったばかり。テーマが菖蒲だったんですけど、葉にも表と裏があって、これは面白いぞと。僕はお花と映画って、通じる部分がある気がして。映画は「省略の美学」と言われていて、「見せる部分」と「見せない部分」がきっちり決まっている。そこがお花に似ている気がするんです。
坂西
ブックオフ巡りです。
学生時代はブックオフの棚を眺めて、そこから選ぶ…という行為がすごく好きだったんです。最近はあまり行かなくなっていたけど、その分、久しぶりに古本を眺めるのがめっちゃ楽しくて。たぶん、自分の想像の範囲外のものを見つけて、「こんな本があるんだ」と刺激を受けたいんだと思います。
映画情報

『メモリィズ』
監督:坂西未郁
出演:柄本 佑 穂志もえか 梅沢昌代 伊佐山ひろ子 成田裕介 占部房子 香椎由宇 イッセー尾形
全国公開中
足を骨折した義父の世話をするため、九州の田舎町へとやって来た雄太(柄本佑)。義父が営む写真館の仕事を手伝いながら、雄太は東京にいる妻子とスマホで撮った映像を交わす。日々の些細な出来事と、その記録と記憶の連なりに、家族の人生という長い時間の存在が静かに、鮮やかに浮かび上がってくる。
火曜ドラマ「時すでにおスシ!?」
出演:永作博美 松山ケンイチ ファーストサマーウイカ 中沢元紀 山時聡真 佐野史郎 ほか
TBS系・毎週火曜22:00~ 放送中
Profile
東京都出身。2003年、映画『美しい夏キリシマ』で主演デビュー。近年の出演作に、映画『シン・仮⾯ライダー』『⽊挽町のあだ討ち』『⿊牢城』、NHK⼤河ドラマ「光る君へ」など。公開待機作に映画『白鳥とコウモリ』(9月4日公開)、『このごにおよんで愛など』(11月27日公開)、『LAST DANCE 最後の遊戯』(2027年公開予定)がある。
1992年、東京都出⾝。京都造形芸術⼤学(現:京都芸術⼤学)映画学科卒業。⼤学時代より映画制作を始める。短編映画『すこしのあいだ』でISCA(INTERNATIONAL STUDENTS CREATIVE Awards)映画祭2013最優秀作品賞を受賞、『夜のこと』で京都造形芸術⼤学最優秀学科賞を受賞。本作品が⻑編映画監督デビュー作となる。
インタビュー記事に関する読みもの
photograph:Chihaya Kaminokawa styling:●●●●● hair & make-up:●●●●● text:Hanae Kudo
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