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:堀 静香さん『夫は松田龍平じゃないけれど』インタビュー|心の闇をぽんと軽やかに差し出したエッセイ集
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歌人・エッセイストとして活動する堀さんの新著『夫は松田龍平じゃないけれど』は、日常のなかで感じた小さな違和感や可笑しさを、ユーモアたっぷりに綴った一冊。いい人に見られようとせず、普通の自分が見た世界を書く。そのまなざしの先にあるものを伺いました。
日常で感じたこと、
気づいたことを立ち止まって、
あえてつぶさに書いていく
「エッセイ書きたい人は、人に悪く思われたくなかったり、いい人に思われたかったりすることを、気にしすぎてるんじゃないかって。みんな本当は、けっこう意地悪なのに」
歌人・エッセイストとして活動する堀静香さんが、編集者と話をしていたときのこと。
「『僕から見て堀さんは、すごく意地悪だと思いますよ』みたいなことを、すごいオブラートに包んで言われて(笑)。『もっとそこ、出して大丈夫ですよ』と。自分ではまったく意地悪だと思ったことなかったんですけど、それを聞いて、納得したんですよね」
いつもは気を遣って口に出したりしないけれど、本当は思っているいけないこと。そんなひとさじのブラックユーモアが効いたエッセイ集『夫は松田龍平じゃないけれど』が上梓されました。
「確かに夫からは王様って言われてるんです。女王様だったらわかりますけど、王様って……。でもそっかと合点して、これで書いてみようかなと(笑)」
自費出版本がきっかけとなり、文壇デビューを果たす若手エッセイストが昨今あまた登場していますが、堀さんもうちのひとり。
「私がはじめてZINEを出した2019年は、今ほどではなかった気がしていて。滑り込んだ感じがしますよね。今だったら多分諦めてます」いろんなタイプの作家がいるものの、堀さんの場合、心がけているのは自分自身のおもしろさで勝負するのではなく、普通の自分が見た外の世界を書くこと。
「自分のことをいっぱい書こうとすると露悪的になっちゃったり、私小説的になっちゃったりする恐れもあって、それはあんまり健全ではないなぁと思っていて。目線を外に向けながら、そのとき自分がどう思ったのか、そこから過去の何かが掘り起こされていくような。ものすごく感情を揺さぶることはできないかもしれないけれど、そのほうがずっと地道に書いていける、持続可能性がある。風通しをよくしたいなと思っています」
意地悪なまなざしとはいえ、深く掘り下げることはなく、全体のムードはいたって軽やかで健やか。さらにちょっとしたことで涙ぐんだり、不意に踊ったり、突如怒ったりして、まじめで冷静なだんなさんを驚かせる、愛すべき感激屋さんの一面もあります。
「書くのは日常、本当に半径2・5キロくらいの生活圏内なんですけど、ちょっと感じたこととか、気づいたことを立ち止まって、あえてつぶさに書いていく。だからずっとぐるぐるぐるぐる、考えつづけている気がします」
たあいのない日常さえ、堀さんの筆にかかればエンタメになる。そして自分も書いてみたい、と思うかも?
『夫は松田龍平じゃないけれど』

堀 静香/¥2,200(百万年書房)
快哉を叫びたくなるような鋭い視点、心の闇をぽんと軽やかに差し出したエッセイ集。子どもや夫とのリアルでささいなエピソードから、縷々と深い考察につながる流れは気持ちよく、ともに思考の旅へ連れていってくれる。エッセイの後に添えられた短歌は絶妙のセレクトで、夫婦の往復書簡にもグッとくる!
堀 静香さん
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text: BOOKLUCK
リンネル2026年9月号より
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