CULTURE

原田知世さん「自分らしい歌声を描けるようになりました」/EP『アネモネ』インタビュー 原田知世さん「自分らしい歌声を描けるようになりました」/EP『アネモネ』インタビュー

「阿修羅」ではなく心おだやかに楽曲と向き合う

━━また、エレクトロといえば、川谷絵音さんがプロデュースされた「阿修羅のように」はタイトルからインパクトが強いですね。

原田 川谷さんとのコラボレーションは、これで3曲目になるのですが、毎回想像を超えて、かつ完成度が高いものを提供していただいていて、感謝しています。一度聴いただけで覚えられる、強くて太いメロディを作る方というイメージを、川谷さんがこれまで手がけられた作品からも感じていたのですが、私に対しても同じ熱量で取り組んでくださっているという姿勢を、いただいた楽曲のすべてから感じることができます。ただ、いただいたメロディは聴き心地は素晴らしいのですが、歌うのが難しくて(苦笑)。

━━確かに、この楽曲でもいろんな展開がありながらも、あえて感情をおさえたように歌う原田さんの声が印象的でした。

原田 アレンジの展開が早いので、そことは別の場所に自分がいるような。自分の軸を大事にして歌った楽曲だったように思います。

━━しかも「阿修羅」というワードが、原田さんの印象とは正反対なイメージ。

原田 これまで私に曲を作ってくださった方々のなかで「阿修羅」という言葉を使う人はいらっしゃらなかったですね。イメージ的に柔らかい雰囲気で描いてくれる方が多くって。川谷さんの楽曲は、毎回意表をつくものが多く、次はどんなものが来るんだろうって、いつもワクワクしています。私からすると全然違う役をいただくような感じもして。でも、結局どんなに個性が強い役でも、自然に自分らしさが出てしまうものなんだなって。

━━原田さんのなかにある「阿修羅」な部分を表現した部分もあるのですか?

原田 前作は、もがきながら歌っていたというか。自分の感情がうまくコントロールできなかったというか、試行錯誤をしながら歌っていました。アルバム発売後の年末に開催したライブでは、最近歌っていなかった好きな楽曲をセレクトして披露したのですが、とても心地よくて。何十年も歌っていない楽曲を通じて、新しい自分に出会えたような充実感が生まれたので、今回はとても心おだやかに取り組むことができました。

━━「阿修羅」ではなく「菩薩」のような気持ちで取り組まれたのですね。

原田 数年前からボイス・トレーニングを始めて、最近ようやく自分のイメージする発声に近づいてきた感覚があります。ここから先も試行錯誤は続くと思いますが、それも楽しみながら歌い続けていきたいです。そのうちに余計な力が抜けて、自然な呼吸で話すように歌えたらいいなと思っています。

━━その自然さは、能町みね子さんが作詞をされた「pitter patter」からも伝わってきました。原田さんの肩肘をはらない暮らしが垣間見られたような気分になりましたね。

原田 メロディやアレンジを含めてとてもかわいらしい。また、ちゃんと起承転結を考えて話すのではなく、思い浮かんだことをお喋りできる相手と過ごしている時間が愛おしく感じる楽曲ですよね。この大人のおだやかな感情を、ただ歌ってしまうとつまらないものになりそうな気がしたので、鼻歌の延長みたいな、力が抜けているんだけど、息で歌っているわけでもない。歌だけれども、歌じゃない。喋っているうちに、歌になったみたいな、そういうことができればいいなと思って制作しました。

━━シャンソンっぽい感じがしましたね。

原田 だとすると、あの雰囲気を日本語で表現できたのは能町さんとゴローさんのおかげだと思います。

━━そのほかにも、土岐麻子さん、原田郁子さんが作詞の楽曲も収録。どれもカラーの異なるキャラクターを軽やかに演じている原田さんの姿を感じることができました。

原田 今回協力してくださったみなさんの愛を感じましたね。それがとてもうれしかった。

━━11月にはこの作品を携えたツアーも決定。どんな内容になりますか?

原田 今回収録されたエレクトロな楽曲を、ゴローさんがどうアレンジしてライブに合うものにしてくださるのか。私も楽しみに待っています。また、みなさんもライブを通じて進化するというか、楽曲が育っていく様子を感じていただけたらと思います。

━━今後の音楽活動に対するビジョンはありますか?

原田 毎回そうなのですが、アルバムが完成して、いろんな方々の感想を聞いたりツアーやライブを通じて、次につながるアイデアが浮かんできます。だから、今はこのEPをできるだけ多くの人に届けることだけを考えています。世代とか関係なく、楽しめる作品だと思いますので。

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