ミュージシャンとして孤高の存在感を放つだけでなく、作家や俳優など多彩な分野で才能を発揮している、志磨遼平さん。ドレスコーズとして10作めとなるオリジナル・アルバムでは、原点に戻って、ロックンロールの持つダイナミクスやロマンティックな部分を感じられるエキサイティングな内容に。アルバムの制作過程や最近の暮らしぶりについて、ご自身が意匠を手がける東京・阿佐ヶ谷にあるミュージック/レコード・バーの『バー フジヤマ』にてお話をうかがいました。
「デビュー盤のような10作めのオリジナル・アルバム」
━━昨年は自叙伝的な書籍『ぼくだけはブルー』を上梓。志磨さんの音楽人生を振り返る、とても読みごたえのある内容が話題になりました。
志磨遼平さん(以下敬称略) これまでもコラムの連載をまとめた本を出したりしたことはあったのですが、一からの書き下ろしで、それも自分の半生をまとめたものはもちろんこれが初めてです。そもそも過去のことを振り返るのは得意ではないので、書き終えたあとは妙に疲れたというか、自分が一気に歳をとったような錯覚におちいりました。でもそのおかげでさっぱりしたといいますか、これからデビューするバンドのような気持ちで10作めとなるアルバム制作に取り組むことができましたね。
━━そして完成したアルバム『†』(ヨミは不明)。ここにはどんな思いが込められているのでしょう?
志磨 はじめは英語や日本語など、いくつもタイトル候補を考えたんですけど、どれもしっくりこなくて。今言ったようにこれがデビューアルバムのつもりですから、とにかくシンプルで簡潔なタイトルがいい。散々悩んだあげく、この記号に行きつきました。通算10作めのアルバムということで、漢数字の<十>にも見えるし、ローマ数字でも<10>は<X>なので。僕は特定の信仰はないんですけど、十字架にはやはり<人生に迷った時の心の拠り所になるもの>というイメージがありますから。そう考えるとなかなか深い意味にも思えてくるっていう。そこにこのアートワークの妙ちくりんな人物が重なれば、いよいよ意味深に見えてくる(笑)。
━━(笑)。確かにビジュアルも衝撃的ですね。
志磨 (ビジュアルでは)まあ、今までも散々いろんなビジュアルを試してきましたから。今さら目新しさはないかもしれませんが(笑)。
━━アートワークからだけでも、常にストイックに新しいことを追求する姿勢が伝わってきます。
志磨 これは自分の性分なので。同じスタイルをずっと貫くことができないっていう。
━━10枚もアルバムを作られていると、どこかで聴いたことがあるフレーズも自然に出てくるものだと思うのですが、この作品ではそういう部分がないというか。とてもフレッシュで鋭角な印象がします。これまでの作品との作りかた、向きあいかたに違いがあったのでは?
志磨 現在、ドレスコーズに参加してくれている4人のメンバーとは、アルバムを2枚作って全国ツアーも3度まわっているのですが、みなさん僕の言うことを即座に違いなく理解してくれる天才集団でして。なので、今回の制作にあたっては<これからデビューするバンドのつもりで演奏してください>とだけお伝えしました。結果、僕がいち音楽リスナーとしてずっと聴き続けてきたような、荒削りで勢いのある自分好みのサウンドを録音することができたのです。こんなレコードがあったら、こんなバンドがデビューしたら、自分が絶対に一番のファンになるという、そういう作品を完成させることができて非常に満足しています。
━━いちリスナーとして、かなりエキサイトする作品だと。
志磨 こんなバンドを待ってたという感じですね。
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