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不妊治療はまず実情を知ることから。進め方、費用、体づくり…… みんなのギモンに答えます! 不妊治療はまず実情を知ることから。進め方、費用、体づくり…… みんなのギモンに答えます!

年齢を重ねると妊娠しづらいなど、不妊治療に関する断片的な知識はあるけれど、具体的な進め方や費用などを把握している人は少ないのでは? ここでは不妊治療で抱きがちな疑問を、不妊治療専門の医師・坂口健一郎先生に伺いました。

目次
不妊治療はまず実情を知ることから。進め方、費用、体づくり……みんなのギモンに答えます!
  1. 不妊治療の全体像を知っておくことが、将来につながる
  2. 妊活のギモンQ&A
  3. 教えてくれた坂口健一郎先生PROFILE

不妊治療の全体像を知っておくことが、将来につながる

「赤ちゃんはほしいけれど、不妊治療は大変そう……」と迷っている人は少なくありません。

「確かに、大変と感じる方もいるのは事実ですが、不妊治療のつらさは先の見えない不安によるものが多いのです。治療にどんなステップがあり、時間や費用がどれくらいかかるのか、どんなときに身体的な痛みがあるのか。不妊治療の全体像を知っておくことが、ご自身のライフプランと照らし合わせて検討することにつながり、実際に治療を始めた際に、そのつらさを軽減できると考えています」(坂口先生)

ほとんどのクリニックでは治療を開始する前に説明会を開いているので、子どもがほしいと思ったら、まずは専門クリニックの説明会に参加するのがおすすめです。

不妊治療の全体像の把握のほかに、もうひとつ大切なのは、検査。
「卵子の質は年齢に左右されますが、数については個人差があり、若くてもなかなか妊娠されない方も。早めにAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査で卵巣の予備能を調べることで、治療の計画も立てやすくなり、“もう少し早くスタートしていれば”という事態を防ぐことができます」

今年からは不妊治療の保険適用が始まり、費用面で諦めていた人も治療が受けやすくなりました。今いちど、不妊治療について知っておきましょう。

不妊治療の流れ

2022年4月から人工授精、
体外受精が保険適用に!

保険適用の範囲が拡大し、人工授精は年齢・回数の制限はなく、体外受精は女性の治療開始時期が40歳未満は6回まで、43歳未満の場合は3回まで保険適用で3割負担になります。これに伴い、高額療養費制度※ の適用も可能となり、費用面でのハードルがぐっと下がりました。

※同一月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分があとで払い戻される制度


【妊活のギモンQ&A】

Q1.不妊治療の流れを教えてください。
また、それにかかる目安の期間、費用なども知りたいです。

A.検査後、タイミング法を。人工授精、体外受精とステップアップしていきます

 

治療は男女双方の検査からスタート。最近では、特に年齢の高いカップルで不妊の原因がはっきりしない場合も増えています。大きな問題がなければ、タイミング法から始めますが、36歳以上の場合や卵子の数が少ない場合、人工授精から始めることも。年齢が高く卵子が少ないほど、治療ができる周期が限られてくるので、早めに体外受精にステップアップします。予算の都合や希望のスケジュールなどは、クリニックでよく相談を

 


Q2.年齢によって進め方に違いはありますか?

A.年齢もありますが、卵子の数によって
計画を立てていきます
一般的に女性の妊娠能力は20代にピークを迎え、その 後徐々に低下し、35歳を過ぎると急激に低下していき ます。ただし、卵子の数を調べるAMH検査で調べると、 若くても数が少なくなっている人もいるので、年齢だけ で判断できるわけではありません(例:AMHの値が2.0 未満の場合は、年齢が若くても40~42歳相当として治 療を計画)。卵子が少ない場合は、不妊治療のスピードをアップしたほうがよいでしょう。

AMH検査とは
採血で血液中のAMH(抗ミュラー管ホルモン)の状態を調 べることによって、卵巣内に残っている卵子の数がわかると いうもの。採取できる卵子の数と関係する重要な検査です。

Q3.不妊治療は身体的に痛い、つらいと聞きますが、具体的には?

A.検査の痛み、排卵促進剤の注射、体外受精時の手術などで身体的に負担がかかることも
STEP 0で行う子宮卵管造影検査では、造影剤を卵管に流すときに 痛みが発生することがあります。どんな検査かわからないと不安 が大きくなるので、事前に動画などで調べておくといいでしょう。 また、体外受精時に卵胞を育てる薬を自己注射しますが、細い針 を使用するのでそれほど痛みはありません。ただ、排卵促進剤の使用に伴うホルモンバランスの変動で不調を感じたり、体外受精時は採卵手術を行う必要があったりと、負担がかかるのは事実です。

Q4.クリニック選びのコツは?

A.まずは説明会に参加を。医師に質問を投げかけるのがおすすめです
不妊治療を本気で始めたい人は、AMHなどの詳しい検査ができる専門クリニックへ。 多くのクリニックでは治療法の説明会を開いているので参加し、些細なことでも質問してみましょう。質問しやすいかどうかも大切なポイントなので、「治療がうまくい かないときはどうするか」など、医師やクリニックの治療方針を確かめましょう。また、月に何度も通うことになるので、通いやすさも重要。まずは自分の体がどのような状況か知るために、お近くの婦人科で相談してみるのもいいと思います。

Q5.妊娠しやすい体づくりのために避けるべきものは?

A.カフェイン、小麦製品、アルコールは控えましょう

よくあるのが、仕事などで疲れきってしまい、そもそもセックスをする気が起きないというケース。 そんな場合は、活力を与えるホルモンをつくる臓器・副腎のケアを。 副腎は、ストレスが多いとそれに対抗するホルモン(コルチゾール)をつくるのに疲れてしまい、パワー不足に。コーヒーやアルコールを控え、 野菜とたんぱく質をとることが重要です。乳製品や、小麦粉に含まれるグルテンをとりすぎると、コルチゾールの浪費を招くので、こちらも控えめに。また、葉酸は妊娠後、赤ちゃんの神経疾患の予防になるので補給を。ビタミンDは卵子の質を高めます。男性は亜鉛が不足すると精子の働きが悪くなるので、意識して取るようにしましょう。

■積極的に摂取したい栄養素
ビタミンD(しいたけ、鮭、サバ、卵黄)、 ビタミンB群(豚肉、鶏肉、サバ、カツオ、 ごま)、葉酸(枝豆、ほうれん草、ブロッコリー、芽キャベツ)、ビタミンC(アセロラ、 パプリカ、ブロッコリー)、ビタミンE(アーモンド、ほうれん草、かぼちゃ)

■毎日の摂取は控えたいもの
豆乳、プラセンタ/女性ホルモンのバランスが崩れて月経不順に
海藻類/ヨウ素によって甲状腺機能が低下することも
納豆/銅の過剰摂取により着床障害の原因にも

Q6.仕事をしながら通えるのか不安です

A.できる範囲でやっていきましょう。自分を責めないことが大切です
不妊治療は月経周期に合わせて行います。特に体外受精の場合は、日にちを決めて通院せざるを得ない状況があります。時間帯指定があるのか、その日であれば何時でもいいのかはクリニックにもよるため、治療前に調べておきましょう。日にちが決まっている検査などは、その周期にできなくても次の周期に行えれば問題ありません。女性の検査がどうしても多くなりますが、できる範囲でやること、あまり抱え込んで自分を責めないことが大切です。

Q7.体外受精を行っても生まれてくる子どもに影響はないのでしょうか?

A.体外受精・顕微授精が原因と考えられる問題は今のところありません
体外受精が始まってすでに40年がたち、日本でも年間6万人を超える赤ちゃんが誕生していますが、現在のところ不妊治療が理由で赤ちゃんに問題が起きたという報告はありません。奇形率などに差があるというデータもありません。特に心配する必要はないでしょう。

教えてくれた坂口健一郎先生PROFILE

三軒茶屋ARTレディースクリニック理事長兼院長。日本生殖医療専門医。複数の病院勤務を経て、不妊治療専門クリニックを開業。著書に『妊活パーフェクトガイド』(クロスメディア・パブリッシング)

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illustration:Naomi Mori text:Ema Tanaka web edit:Masako Serizawa
リンネル2022年10月号より
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