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:【私の住むまち、好きな場所。京都府京都市の西陣エリア】風情ある織物の町に、京町家を生かした新スポットも続々!
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織物産業で名を馳せた西陣は、長い歴史をもつエリア。細い通りが碁盤の目状に交差し、ただ歩くだけで懐かしい景色に出合える情緒豊かなまちです。
今回は15年前から西陣の町家に暮らすイラストレーター・ダイモンナオさんに、普段から巡るお気に入りの場所を教えていただきました。
京都市西陣エリアの暮らしを紹介してくれるのは…ダイモンナオさん

京都が誇る高級織物「西陣織」の産地として知られる西陣。その歴史は古く、平安時代にはすでに官営の織物工房が置かれていたとか。職住一体の長屋が集まる路地からは、今でも機織りの音が漏れ聞こえてきます。
そんな昔ながらの風情が残る一方で、伝統的な町並みや建物を活かした新しい動きも。歴史ある京町家を再生したレストラン、ギャラリー、書店など、店主の個性が感じられるセンスのいいお店が次々オープン。普段、界隈を自転車で走り回っている私が、お気に入りの素敵なスポットをご紹介します。
お茶関連の施設が集まる雅な小川通

私が運営する『草と本』から北へ数分の本法寺周辺は、表・裏両千家のお屋敷をはじめ、茶道総合資料館、茶道具店、和菓子店など、茶の湯関連の施設が集まるところ。それらが軒を連ねる小川通は、別名「お家元通り」とも呼ばれます。数年前に電柱の地中化工事が行われ、視界もすっきり。どこを切り取っても「絵になる」景色が広がっています。

私が「お家元通り」を通るのは、北大路(大徳寺などがある東西の通り)方面の行きつけの店へ向かうとき。凜とした和服姿の男性が風呂敷を手に歩いていたり、華やかな着物姿のお嬢さんたちがお家元の邸内に入っていったり……。『草と本』の外国人ゲストを案内すると、皆さん感激してくれます。きっとイメージしていた京都の風景そのものなんでしょうね。

お家元通りにある本法寺は、見どころの多い由緒あるお寺。長谷川等伯の描いた「釈迦大涅槃図」、本阿弥光悦が手掛けた枯山水庭園「巴の庭」など、室町時代の文化や遺構に触れることのできる場所です。私は本法寺の桜を毎年楽しみにしていて、桜のつぼみがほころび始めると、そわそわしてきます。本法寺の北側にある水火天満宮の枝垂れ桜も圧巻で、短い盛りを惜しむように何度も足を運んでしまいます。

家からふらっと本法寺の桜を見に行って、帰りに『ウッドミルブルワリー京都』の週末タップルームでできたてのクラフトビールをぐびり。これが、ご近所で完結するいつものお花見コースです。

お家元通りから徒歩すぐ。住宅街の小さな醸造所『ウッドミルブルワリー京都』の週末タップルームでは4~5種類のクラフトビールがお手頃価格で味わえる(11:00~16:30L.O.)。
本法寺
京都府京都市上京区小川通寺之内上ル本法寺前町617
075-441-7997
拝観時間:10:00~16:00
地域住民の生活に溶け込む禅宗の古刹

京都御苑の北側に佇む相国寺は、臨済宗相国寺派の大本山。640年以上の歴史を持つ、禅宗の古刹です。1984年には創建600年を記念して、敷地内に『相国寺承天閣美術館』を設立。国宝5点を含む貴重な文化財を多数収蔵し、伊藤若冲の描いた「葡萄小禽図」「月夜芭蕉図」などを常設展示しています。

相国寺の寺域は約4万坪。東京ドーム3個分もの広さです。私の住む西陣から上立売通を東へずーっ進んでいくと、いつの間にか相国寺の寺域へ入り込む形に。寺域内には信号がなく、観光客も少ないため、自転車で通り抜けるにはもってこい。お茶のお稽古や出町桝形商店街への買い出しなど、出町柳方面へ行くときの抜け道として頻繁に利用します。禅寺特有のものなのか、寺域にはいつも静謐な空気が流れていて、清々しい気持ちになれます。

豊臣秀吉の側室、淀君が父・浅井長政を弔うために創建した養源院。秘仏の毘沙門天は通常、非公開。
時間に余裕があるときは、毘沙門天を祀る相国寺塔頭「養源院」の前で自転車を降りて一礼。毘沙門天は“善にも悪にも強い”感じがするので、つい手を合わせたくなります。
京都にいると美術館や博物館をとても身近に感じます。『相国寺承天閣美術館』のような“ええもん”をたくさん見られる施設が生活圏にあるなんて、本当に贅沢なこと。今年は4月23日から6月22日まで、インド細密画を半世紀以上研究・収集し続ける画家、畠中光享(はたなかこうきょう)の日本画展が開催中。新作も多く展示されているので、ぜひ足を運んでみてください。

相国寺、鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)などの寺宝を収蔵する『相国寺承天閣美術館』の入口。
欲しい分だけカットしてくれる、小さな日本チーズ専門店

外でも家でもお酒を飲む機会が多い私。家飲みの際はワインのアテにチーズを切ることが多いのですが、市販のチーズはポーションが大きくて、なかなか一度では食べ切れない。冷蔵庫に入れておくと風味が落ちてしまうし、いつも悩ましかったんです。そんなストレスを解消してくれたのが、こちらの『和酪まつな』さん。

『和酪まつな』はイタリアンレストラン『HANAMITSU』の入口にある日本チーズの専門店。シェフの奥様である松原正恵さんが、仕入れから販売まですべてを取り仕切っています。
ショーケースにはチーズプロフェッショナルの資格を持つ正恵さんセレクトのチーズがずらり。ラインナップは日によって変わりますが、私の好みを完璧に把握してくれているので、どれを選んでも失敗がない。なにより「〇g~」「100g単位で」などの縛りがなく、欲しい分だけ量り売りしてくれるのがありがたい。

お店を知ったきっかけは、ご近所のタップルーム「ウッドミルブルワリー京都」。そこでおつまみとして売られていたまつなさんの「ひとくちチーズ」を食べて、これはいいなと思ったんです。
私は中がとろっとしたウォッシュタイプのチーズが好きで、北海道・長坂牧場のウォッシュ「このみ」や兵庫県・日向牧場のウォッシュ「モナミ」などをリピートしています。たまに食べたことのないチーズに挑戦するときは、「お試し用に30gだけ」なんて買い方をすることも。酒飲みに寛容な使い勝手のいいお店が近所にあって、助かっています。
和酪まつな
京都府京都市上京区室町通上立売上ル室町頭町288-2
TEL:075-406-1478
営業時間:10:00~15:00
定休日:不定休
生産者の思いをお皿に載せて。大宮通の名イタリアン

安くておいしい丼や定食がそろう『西陣ゑびや』、食材への並々ならぬこだわりに頭が下がる『串揚げ万年青』など、大宮通沿いには長年通い続ける良店がたくさんあります。
イタリアンレストラン『OASI』も、そんなお店のひとつ。近所の友人をランチに誘ったり、家族とのんびり日曜限定のモーニングを楽しんだり……その時々の気分で、いろいろな使い方ができるのがうれしい。オーナーシェフの吉田香織さんはさっぱりとした性格の女性で、『草と本』の女性ゲストにも安心しておすすめできるお店です。

揚げ加減が絶妙なワカサギのフリット。
香織さんは生産者とのつながりを大切にしていて、地元産のオーガニック野菜やサステナブルな環境で飼育した肉など、食材へのこだわりがとても強い。なにを食べてもおいしいけれど、私が特に忘れられないのは、香織さんの揚げるフリット。どういうわけか食感がすごく軽くて、いくらでもするすると胃に納まってしまう。先日いただいたワカサギも安定のおいしさでしたが、もう少ししたら出てくる稚鮎のフリットも楽しみ。きりりと冷えた白ワインと味わいたい春の味です。

ボロネーゼも必ず頼んでしまうメニューのひとつ。
OASI
京都府京都市上京区大宮通寺之内上ル前之町443
TEL:075-205-2598
営業時間:12:00~15:00、18:00~22:00
日曜限定の朝食 9:00~11:00
定休日:月・火曜
選書や企画力、見せ方などにスタイルを感じる書店

新刊と古本が同じ空間に並ぶ書店『余波舎』は、『OASI』の真上にあります。昨年オープンしたばかりの新しいお店ですが、以前『西陣ほんやら洞』という名物喫茶があった場所で、古い建物のよさを生かした雰囲気も素敵。『OASI』に行くときは、必ずセットでこちらもチェックしています。

店主の涌上昌輝さんは、タイプの異なるいろいろな書店で経験を積まれた方で、彼が企画するイベントや展示は興味深いものばかり。先日たまたまのぞいたときは陶器の展示販売をやっていて、民藝っぽい絵柄の益子焼に一目ぼれ。いい買い物ができました。

『余波舎』は店内のレイアウトもユニーク。いわゆる“書店らしさ”に縛られない、ライフスタイルショップのような自由さがある。私はどうしても食やお酒など生活系の本に目が行くのですが、学生の多い京都の書店らしく、堅い人文系やビジュアルブックなども充実。「やっぱり本屋はいいな。本屋で本を選ぶって楽しいな」と、忘れていた感覚を思い出させてくれる場所です。
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photograph:Atsuko Suzuki、Nao Daimon text:Atsuko Suzuki
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