心と体のケア

折れない心で自分を守る。レジリエンス(心の回復力)の育み方 折れない心で自分を守る。レジリエンス(心の回復力)の育み方

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つらいことがあったときになかなか立ち直れない、そんな自分を「心が弱い」と責める必要はありません。レジリエンス(心の回復力)を育んで、ストレスから心を守りましょう。精神科医、臨床心理士の白川美也子先生にお話を伺いました。

目次
折れない心で自分を守る。レジリエンスの育み方
  1. そもそも「レジリエンス」って何?
  2. レジリエンスを育むセルフケア
  3. 子どもの心にもレジリエンスを育もう
  4. 子どもの「調節力」を育てる接し方
  5. 教えてくれた 白川美也子先生 profile

そもそも「レジリエンス」って何?

つらいことに直面したときに、
回復する力が生きる手助けに

自然災害やコロナ禍など、自分の力ではどうにもならない困難が身近になってきた現在。それをどうとらえるのか、それぞれの心が問われる時代になっています。「災害などで同じショックを受けても、そこから徐々に回復していく人と、回復できずに深く落ち込んでいく人でその後の生活が大きく分かれます。そこで問われるのがレジリエンス(心の回復力)です」と、白川先生。

つらい体験をすると、人の心は逃げたり、闘ったり、凍りついたりしてそれに反応します。多くの場合、ストレスは跳ね返されて心は元の状態に戻ります。こうした回復力を「レジリエンス」といいます。しかし、限度を超えたストレスを受けると、心の状態はひずんだままで戻らなくなり、日常生活に支障をきたしてしまうのです。そうならないためにも、レジリエンスを育てることが大切。一度傷を負っても、レジリエンスを発揮すれば、心は元に戻るのです。

バネが戻るのがストレス、
戻らないのはトラウマ。

例えば、心をバネだと考えます。バネは伸びたり縮んだりしますが、縮んだバネが元に戻らなければ、本来の役割を果たせません。ストレスがかかってバネが縮んでも、時間が経つと元に戻る力がレジリエンス。元に戻るかどうかは、よくある体験なのか、命にかかわる過酷な体験かによっても異なりますし、誰かに無視されるなど小さな体験をくり返すことも、元に戻らない原因になりえます。

また、レジリエンスは成長過程で決まると考えられていて、同じような体験をしてもレジリエンスが発揮されるかどうかは人によって違います。「レジリエンスは、成長する過程での親との関係、経済環境などの社会的要因、病弱かどうかなどの身体的な要因など、外的な要因によっても左右されます」と白川先生。あなたの心の問題だけではないので、今レジリエンスが低くても、自分を責める必要はありません。


レジリエンスを育むセルフケア

では、つらい体験で心の傷が残るとは、どういう状態でしょう。「人は、感情やものごとのとらえ方、人との付き合い方などをほどよく調節して暮らしています。けれど、トラウマの影響を受けると、それが難しくなります」と白川先生。

心の傷が残ると、嫌な記憶が不意によみがえったり、そうなりそうな状況を避けるようになります。さらに、感情が高ぶって寝つきが悪くなったり、集中力が落ちることも。結果的に、行動や考え方が制限される状態になるのです。その状態を脱するには、自分自身に何が起きているのか客観的にとらえ、気持ちと向き合ってみましょう。それによって、気分を調節することができるのです。大切なことは、ストレスを受けているときの心の状態に気づくこと。こんなふうになっていませんか?

 

●気持ちのコントロールが困難
感情は自分の状態を示すサイン。同時に思考や行動を変えることで感情を制御できます。しかし、大きなストレスがあると、そのコントロールが難しくなります。

 

●ネガティブな考え方
トラウマの状態になると、危険を避けようとして、人やものごとが以前より疑わしく見えてしまいます。自分や相手のありのままの姿をとらえられず、否定的になります。

 

●対人関係がうまくいかない
警戒心が高まると、信頼できる相手には無制限に受け入れてほしいと期待し、叶えられないと裏切られた気分に。感情を調節できないことで、対人関係にも障害が。

 

起こってしまったことは変えられないし、完全に忘れることはできませんが、思い出しても平気な状態になることはできます。そして、自分の価値を再び実感できるようになれば、それが回復です。今と「そのとき」を引き離して考える心のレッスンを。体の状態も、感情のコントロールには重要なので、リラクゼーション法も身につけておくといいでしょう。

セルフケア#01
自分自身と対話して感情を整える「YEメソッド」

YEメソッドは、エネルギーワーカー山本ユキさんによるケア方法。トラウマケアだけではなく、日常生活のトラブルで心をかき乱されたときも、このステップで自分の感情と体を切り離し、自分自身と対話しましょう。それによって考え方のくせにも気づき、回復は早まります。詳しくは「YEメソッド保存版」で検索してみてください。

●自分を客観的に見る 5STEP

①気持ちがわき上がってきたら、その出来事を「上から」見てみよう。

 

②自分のおなかや体の感覚に目を向けて、気持ちに気づく。

 

③体の感じと気持ちを分ける。その気持ちに向けて息を吸って、吐くことを3回行う。

 

④自分の最高の親友のように、その気持ちを「そうだよね。わかる、わかる」と全部丸ごと認める。

 

⑤起きた出来事にもう一度目を向け、なぜ気持ちが動いたのか?について、自分の中で整理ができて、ひっかかりがなくなっているかどうか確認。

 

⑥おなかがあったかくなる感じがするとよい。

 

自分の気持ちと対話してみる。「だってだって…(気持ちが生じた理由)」「どうしてこんなふうになったんだろう…(状況がそうなった、こうなっている理由)」「そうなるまでに自分はどうしてきたのか(その状況にいたるまでの自分の行為とその理由)」などを、もうひとりの自分になって問いかけながら、心の中の話し合いを続ける。

 

そして、その気持ちや考えを「そうだよね。わかる、わかる」と全部丸ごと認める。そうして、心の中の話し合いをくり返す。全部出尽くしたら「だったらこれからどうしようか?」と問いかけ、今後の対処について考えます。

セルフケア #02
心と体の緊張をほぐす「筋リラクゼーション法」

①両手をぎゅっと握り、両手首を曲げ、背中に力を入れて腰を少し持ち上げる。顔もぎゅっと力を入れる。
②体も顔もふわーっと力を抜く。いやなことばかりを思い浮かべたり、不安でたまらないと、寝つきが悪くなりぐるぐる考えてしまいます。そういうときは、体が緊張して力が入り、力を抜こうとしてもうまくいかないので、一度体にぎゅーっと力を入れてから抜くこと。力が抜けると、楽しいイメージも浮かびやすくなります。

子どもの心にもレジリエンスを育もう

子どもにとっても過酷なことが多い現代。親との安定したふれあい(アタッチメント)によってレジリエンスを育めば、人生の大きな助けになります。ここでは、子どもの心を安定させるアタッチメントをご紹介します。

レジリエンスを発揮するには、感情や考え方、行動をコントロールする力が大事。そして、その力が育つのは、幼少期からです。新生児が泣くのは不快だからであって、自分の感情をわかっているわけではありません。
泣いている裏にある子どもの気持ちに大人が共鳴して対応することで、赤ちゃんは自分の「気持ち」の存在に気づきます。
そして、いろんな感情を区別し、どの気持ちも自分であり、それがゆるやかにつながって「まとまりある自分」であることを実感します。それが、衝撃を受けても元の自分に戻るというレジリエンスにつながっていくのです。それには養育者との、安定したふれあい(アタッチメント)が必要なのです。

養育者と離れたときにわかる!
アタッチメントで変わる子どもの行動

●安定型
親と離れると泣き出したり抵抗を示したりします。でも、遊びに誘われたり、興味の対象に近づくと、すぐ落ち着くことができます。親が、子どもの欲求や変化に目を配り、ほどよい働きかけができている状態です。

 

●回避型
親と離れても泣いたり混乱したりせず、再会したときも、目をそらしたり避けようとしたりするのがこのタイプ。親が子どもの働きかけに対して、ほほえんだり抱きかかえたりすることが少なく、泣いてもなだめないとこの反応に。

 

●無秩序、無方向型
まわりの人に近づきつつ避けようとするため、ぎこちない行動に。ボーッとしたかと思えば、初対面の相手に親しげにふるまうことも。親が子どもを怖がらせたり、親自身が精神的に不安定な場合に、こういった反応を示します。

 

●アンビヴァレント
親と離れると強い不安や混乱を示します。親と再会すると、自分から近づいていきますが、怒って叩いたりすることも。親が子どもの示すサインにあまり気づかずに、親の都合で子どもへの対応を変えることが多いとこの反応に。

子どもの「調節力」を育てる接し方

●子どもが要求する
新生児は不快感があったときに「泣く」という行動で示します。このとき、赤ちゃんは自分の気持ちをわかってはおらず、泣いたかと思えばすぐにはしゃいだりと、行動はバラバラな状態。

 

●大人が対処する
大人が子どものサインを読み取って、要求にこたえることで、子どもは自分の「気持ち」に気づくことができます。赤ちゃんであれば、「悲しいの?」「楽しいね」などの声がけが有効。子どもの行動に問題があっても「やめなさい」と指示するのではなく、裏にある気持ちを探ります。

 

●まとまりある自分に
大人のかかわりに反応して、子どもは、自分にはいろいろな状態があり、そのすべてがゆるくつながって「まとまりある自分」になっていることを理解します。

 

●よりよい状態をわかってくる
自分がよい状態になり、まわりとよい関係を築くのにどうふるまえばいいのか、自分の気持ちをどう調節するのかを徐々に身につけていきます。これを「情動調律」といいます。

教えてくれた
白川美也子先生 profile

精神科医、臨床心理士。こころとからだ・光の花クリニック院長。被災者支援や、虐待、DV被害者の臨床支援に携わる。『トラウマのことがわかる本』(講談社)ほか著書多数。

illustration:Shinco Uematsu text:Ema Tanaka web edit:Riho Abe
※ 画像・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください

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