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ドレスコーズ・志磨遼平さん「<才能>がある限り、何かを作り続ける」/アルバム『†』インタビュー ドレスコーズ・志磨遼平さん「<才能>がある限り、何かを作り続ける」/アルバム『†』インタビュー

「わき目も振らず好きなことを追求してきた」

━━「ヴィシャス」から始まって、「ミスフィッツ」で終わる構成とか、これまでのロックンロールやバンドにリスペクトを捧げている姿勢も感じました。

志磨 僕はまずメロディを作って、それに合わせて後から歌詞を書くんですけど、それとは別でただカッコいいだけのタイトルのストックが大量にありまして(笑)。そのストックの中から新曲に合うものがあれば流用するんです。今回は「ヴィシャス」というタイトルの曲でアルバムが始まったらカッコいいなということで、一番威勢のいい曲にそのタイトルを与えたという感じですね。

━━タイトルやサウンドはインパクトが強く、鋭いのですが、メロディが流麗で耳に心地よく残るものに。そのバランス感覚が面白いと思いました。

志磨 一聴しただけ、パッと見ただけではすべてを理解できないように工夫しています。さっきのアルバムタイトルもそうですけど、ダブル・ミーニングでひとつの言葉にいくつもの意味を持たせたり、何かと仕掛けのあるものを作るのが好きなんだと思います。

━━確かに、歌詞に関してもいろんな読み取りかたができますが、すぐにイメージがパッと浮かぶような描写もされている印象です。

志磨 前作の『式日散花』と前々作『戀愛大全』は2部作で、内容も共に<死と別れ><恋愛>というセンチメンタルなテーマを抽象的に描いたものだったのですが、今回のテーマはとても具体的で直接的ですね。怒りや焦燥感が根底に流れていて、その上でポジティブであろうとしている。それが堂々とはっきり描かれているはずです。

━━だからか、ボーカルもエモーショナルですよね。

志磨 元気ですね、歌い方もね。

━━バラエティに富んだ10曲が収録されていますが、今回のセッションのなかでこれができてよかったと思う部分はありますか?

志磨 どれも気に入っていますが、冒頭3曲の勢いは特に素晴らしいですね。間髪入れずに畳みかけるような。

━━ロック・バンドらしい疾走感が伝わってきました。全体的にストーリーを考えて収録曲を構成されたのでしょうか?

志磨 ストーリーというほどではないですが、冒頭の「ヴィシャス」から「リンチ」まで繋がっていく流れは最初の構想の時点でありましたね。

━━ラストの「ミスフィッツ」は、次に繋がっていくような感じというか。またアルバムの世界へリピートして入りたくなる楽曲になっていますね。

志磨 これもカッコいいタイトルリストに入っていたものです。同名のホラーパンクバンドがアメリカにいまして、まあパンクが好きな人であればなじみのある言葉ですが、つまり(社会に)フィットできない、<ミスフィット>という言葉はよくよく考えてみると僕の創作のテーマそのものじゃないか、と思い当たりまして。僕はロックンロールが大好きで、ただただそれを追い求めて、わき目も振らず、世間の評判も気にせずに今までやってきたんですけど、いつのまにか孤高の存在だとか奇才だとか言われるようになりまして、まあイヤな気はしないのですが、僕としては何も珍しいことはしていないし、ロックンロールなんてみんな好きに決まっているだろうと思ってやってきたのに世間はどうもそうではないらしいという。なんだか大きな流れ・群れから、ずいぶんはぐれて、遠くへ来たもんだという複雑な違和感がありますね。

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