北欧

フィンランドに学ぶ女性が社会で活躍するためのヒント 【現地在住の島塚絵里さんに聞く】 フィンランドに学ぶ女性が社会で活躍するためのヒント 【現地在住の島塚絵里さんに聞く】

フィンランドで結婚し、子育てをしながらデザイナー、イラストレーターとして活躍する島塚絵里さん。今年で15年経つというフィンランドでの日常を綴った著書、『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』(パイ インターナショナル)の一部を3回にわたってご紹介。さらに島塚さんにお話を伺い、フィンランドの女性の生き方について探ります。3回目の今回は、政治と女性の活躍についてお話を伺いました。

目次
フィンランドに学ぶ女性が社会で活躍するためのヒント 【現地在住の島塚絵里さんに聞く】
  1. フィンランドの女性リーダーたち
  2. 政治が身近なフィンランドの人々
  3. \島塚さんに聞きました/
    フィンランドから学ぶ、自分の意見の持ち方

フィンランドの女性リーダーたち

フィンランドの現政権のリーダーの多くが30代の女性たちです。サンナ・マリン首相は、36歳。小さな子供を育てながら、フィンランド政治の舵をとっています。マリン首相が子供だった頃、フィンランドの大統領は「フィンランドの母」と慕われていた、タルヤ・ハロネンでした。ハロネン政権では、子供が「男の人でも大統領になれるの?」という質問をしていたくらいですから、そんな環境で育った少女たちが大人になって、政治家になるのは自然な流れのような気もします。

首相にふさわしくない服装だと、女性だからこそ、つつかれるようなスキャンダルもまだありますが、世間の人々がSNSなどで、サポートする声もたくさん聞かれました。フィンランドでは男女平等が世界でも進んでいるものの、まだまだ問題もあります。問題が浮上するごとに、人々が異議を唱えながら、少しずつ意識や制度が改善されていくものだと思います。女性リーダーたちが活躍する姿を見て育つ、娘の世代の将来が今から楽しみです。

裸同士で入るサウナで、政治について語ることもあるという島塚さん

政治が身近なフィンランドの人々

「フィンランドの国籍は持っているの?」とたまに聞かれることがありますが、日本政府が二重国籍を認めていないため、私は日本国籍を持ったまま、フィンランドの永住権を所有しています。フィンランド国籍がないと、大統領選挙には投票できないものの、ヘルシンキ市議会議員の投票権は与えられています。選挙が近づくと、SNSでも選挙の話題が増えてきます。

毎回驚くのが、多くの知人が立候補していることです。デザイナー、元教員など、様々なバックグラウンドを持つ人々が、自分たちの暮らす地方自治体をより良くしようと、立ち上がるのです。友人の母も、教員をリタイアした後、政治活動を始め、何度かグリーン党から立候補しているとのことでした。それくらい政治は身近で、みなに開かれたもので、人々も高い関心を寄せています。

\島塚さんに聞きました/
フィンランドから学ぶ、自分の意見の持ち方

1. 政治の話はタブーではない

身近な人も市議会議員の選挙に出ているという島塚さん。フィンランドでは政治の話がしやすいといいます。

「身近な人が市民代表として市議会議員になっているので、政治も身近に感じます。いいなと思うのは、政治家が一般の人と同じ感覚で、偉そうにしていなくて特別な待遇もないこと。エコノミーで移動したり、その辺のテラスで乾杯していたり。もちろんリスペクトはありますが、普通の仕事をしているという感じがします。大統領は男性ですがおむつを買いに行ったという記事が出ていたことも。そんな一般の人と同じ感覚がある人でないと、支持されないかもしれないですね。

フィンランドで女性らしさは武器にならない。媚びを売らなくていいんです。今の首相は30代の女性ですが、ただ実力があるから選ばれただけで、わざわざ “女性”首相とはいわない。結婚、出産のために人材をなくすのが損失だと考えるので、仕事を辞めるという選択肢はないですね」

日常のなかで、政治について話すことも多いのだとか。

「わが家はそこまで政治に詳しくはないですが、一般常識程度には話したりします。日本では政治の話題はタブーといわれていましたが、フィンランドでは積極的に議論しようという感じです。

一度、共同サウナの日に近所のお母さんたちと話したら、みんなそれぞれの意見があって面白かったですね。意見を言うことは健全なことだと考えているようです。特にサウナは本音を語る場所。同じ意見じゃなくても、気まずくなったりしないんです」

2. 自分の権利は自分で守る

フィンランドでも昔から女性が活躍できたわけではなく、声をあげ続けたことで徐々によくなっていったのだとか。

「デモが多く、権利を主張する人も多いです。だから選挙にもちゃんと行く。自分の権利は自分で守るというのは、大切なことかもしれませんね。おかしいと思ったら、声をあげて変えていこうという動きは、いつもあるのかもしれません。デモが行われるのも普通のことで、よく人々が集まっています。環境問題についても、隣のスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリに影響を受けている人も多く、コロナ前は、フィンランドでも金曜日に子どもたちが学校を休んでデモをしたりしていました。自分の権利や地球の権利、自分がよいと思うことを主張するのは、いいことだとされています。人まかせにはしないのかもしれません」

主張された意見をきちんと聞く土壌があるのも、フィンランドのいいところ。

「意見は反映されると思うし、運動が広がって徐々に変わっていくんだと思います。政治家にまかせっきりはよくないと思うんですよね。自分の一票はあまり関係がないと思う人もいるかもしれませんが、フィンランドではデモに参加したり、こんなにたくさん考えている人がいるのだと実感する場があるのかも。

政治は一番、オープンに話し合わないといけないことなのではないかなと思います。日本では当たり前だと思っていることも、ほかの国では当たり前ではないし、変えていけると思います。他国のいいところを取り入れやすいところから取り入れて、暮らしやすい社会になるとよいですね」


島塚絵里さん 著書
『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』
どうしてフィンランドは、幸福度No.1なのか? 仕事・子育て・家族との関係、そして休みや自然の楽しみ方など、無理せず自分らしく生きるフィンランド人の暮らしの中に、そのヒントがあります。フィンランドで15年暮らしている島塚絵里さんが、日々の暮らしの中で見つけた幸せのかたちを綴ったエッセイ。SDGsの時代に必要な、本当に心地いい生き方とは何かを教えてくれる一冊です。
https://pie.co.jp/book/i/5633/

島塚絵里さんプロフィール

フィンランド在住のテキスタイルデザイナー・イラストレーター。1児の母。津田塾大学を卒業後、沖縄で英語教員として働く。2007年フィンランドに移住し、アアルト大学でテキスタイルデザインを学び、マリメッコ社でテクニカルデザイナーとして勤務。2014年より独立し、国内外の企業にデザインを提供。森のテキスタイルシリーズなどのオリジナルプロダクトもプロデュース。


text & edit:Mayumi Akagi 
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
※本記事は『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』(パイ インターナショナル刊)からの抜粋にインタビューを加筆しています

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